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コンビ結成。2

装甲車から降りたファルに保安部職員が恐る恐るといった様子で近づき話しかける。


「あのーどうしてここに。」

『どうしてって銀行に寄ったら銀行強盗が来て人質にされたんだよ☆ むかついたから銀行のシステムを乗っ取って逆に立て籠ってやったんだ☆』

「そう、ですか。」

『そして立て籠もり犯らしくあいつらに色々と要求したのに犯人達ってば何も持って来てくれないの☆ ひどいよ☆』

「要求、とは?」

『飲み物買ってこいとか歌えとか色々☆』

「何故そんな事を。」

『犯人ばっかりズルいもん☆ ボク達人質にだって立て籠って要求する権利があるはずだもん☆ なのに他のヒト達何も言わなかったんだよ☆ せっかくのチャンスだったのに☆ もったいない事をしたと思わない?』

「いやーその。ははは。」


ファルの言い分に保安部職員は作り笑いを浮かべる


『まぁいいや☆ あの車は後でボクが修理するから持って行くね☆ ちゃんと返すからさ☆』

「分かりました。」


そう言って早足で立ち去って行く保安部職員から興味を無くしたファルが次に目をつけたのはじっとファルの姿を凝視していたベータだ。


『やっほ〜☆』

「え?!」


一気にベータとの距離を詰めたファルは矢継ぎ早に喋り始める。


『君誰? 機動部に所属してないよね☆ 新人さんが入るなんてボク知らないし☆ 迷子? 保護者の方はいるの?』


圧倒されかけたが迷子という単語にむっとしたベータは負けじと口を開く。


「迷子じゃない! おれは犯人を捕まえに来たんだ。」

『え〜! そんなの危ないよ☆ やめてほしいな☆ 一般人にそんな事されたら保安部の立場が揺らいじゃう☆』

「おれも保安部!」

『どこ所属?』

「…治安維持部。」

『いやなおさらダメじゃん☆ マジで今回のは危ね〜ぞ☆』

「そっちこそ危ないじゃん! 犯人に車で突っ込んで、そう言うあんたは何なのさ!」

『ボクはね装備開発部兼特殊治療部兼整備点検部兼娯楽発展部兼異例案件部に所属だよ☆』

「多っ!」


ファルが身につけているヘルメットの液晶画面には表情のマークが表示されてる。ベータと話しをしている間にウォッチを操作して何回も表情のマークが笑顔や困り顔など様々な形に変える。

改めて変なヒトだなと思うベータ。しかし会話を切り上げてその場から立ち去ろうとはしない。言われっぱなしは嫌だとムキになっているからだ。


「ベータ!」


そんな時、ベータを追いかけてやって来たサブローはやっとベータを見つけ声をかけて駆け寄る。走って疲れて注意力が散漫していたのかベータに近づいてようやくファルに気がつき仰天する。


「ファ!? ファルさん!」

「え?! こいつがファル!」

「指さすな!」


ヘルメットを被ったヒトがファルと知ったベータは驚き思わずファルに向かって指をさした為サブローは慌ててその指を突きつけた手を両手で包み下げさせる。


「すみませんこいつが粗相を。」

『それはい〜のい〜の☆』


そこまで言ってファルはヘルメットの液晶画面の表情の顔マークを笑顔から怒り顔へと切り替える。


『だけど、治安維持部の子を突撃させるのはどうかと思うな☆』


それを聞いて自分が突撃しろと命令したと勘違いされていると思ったサブローは勢いよく首を横に振る。


「違います違います! こいつが勝手に!」

『ありら☆ そうなの?』

「うん!」


ベータは堂々と頷く。

それを見てサブローは額に手を当てて呆れる。


『いいお返事☆ だけど、どうしてそんな事したの? あいつ機動部のヒト達でも危ない相手だったんだよ☆』


困り顔の顔マークに切り替えてファルはベータの行動を咎め、行動の理由を聞く。


「だってその方がカッコイイから!」

『は?』


またしてもベータは堂々と言い放つ。

自信満々に言ったベータにファルはウォッチを操作して驚きの顔に切り替える。


『どゆこと?』

「すみません本当にすみません! こいついつもこんな事を言ってるんです。悪気がある訳じゃないんです本当に!」


サブローは慌てて弁解の言葉を並べていく。


『いつも?』

「どうもこいつ、アニメとか漫画の主人公みたいな活躍をしたいらしくて。」

『マジ?』

「マジ! おれはいつか必ずカッコイイヒーローになるんだ! だからバンバン活躍してA級に上がるんだ。」


ベータはキラキラとした純粋な目で語る。


「だったらまず勝手な行動をするな物を壊すな! そのせいでお前全然階級上がらないだろ。」

「うっ。」


サブローの指摘にベータは苦々しい表情になり、目を逸らす。


『この子今どの級?』

「C級です。」


保安部は階級制だ。上の階級ほど回される仕事は重大なものになる。

C級は1番下の階級だ。


『問題児でC級か〜☆』

「なんだよ。あんたまで無理だって言うのか。今に見てろよ。おれは絶対にA級になる!」

『ほっほ〜う☆ 威勢だけはいいね☆』

「なんだと!」

「止めろベータ!」


ファルを睨みつけるベータを見て2人の間に入ったサブローはベータの耳元あたりで小声で忠告をしようとする。


「本当に止めろ! あの人に突っかかるな。」

「なんで? ただの変なヒトなんだろ。」

「ただのじゃない! あのヒトはな」


サブローが言いかけた時


『通告。』


機械音声がサブローの話を遮る。

その声を聞いてサブローは勢いよくファルの方へと首を向ける。


『治安維持部所属、ベータに辞令を言い渡す。』


声はファルのヘルメットから聞こえてくるが発している機械音声は先ほどまでファルが喋っていたものとは全く違うもの。ヘルメットの液晶画面に映っているものは保安部の公式マーク。

サブローは緊張で顔をこわばらせる。何故ならサブローは声の正体を知っているからだ。


『配属先は装備開発部兼特殊治療部兼整備点検部兼娯楽発展部兼異例案件部に所属のファルの護衛。』

「え?!」

『期間は無期限。』

「待ってくだ」

『S.C.Sの名の下にこの辞令は絶対のものとする。以上。』


サブローの話を聞く事をせずそこで機械音声は止まり、液晶画面の表示が消える。

それとほぼ同時にサブローは頭を抱える。


「…最悪だ。」


絶望をした様子のサブローに対して唐突な辞令を言い渡されベータは状況を理解できず呆然としていた。


「…え? どういう」

『そっかそっか☆』


そんなベータに即座に近づいたファルは白衣の下で隠れていた腰あたりに携帯している内の1挺のテーザー銃を取り出して安全装置を外しベータの腹部に銃口を突きつける。


『これからよろしくね☆ ベータクン☆』


ベータが反応する前にファルは引き金を引いた。



◆◇◆◇◆



ベータが次に目を覚ましたのはあれから数時間後の事だ。


「…あれ?」


最初に見たのは見た事の無い天井。ベータは頑丈そうな手術台の上で横になっていた。

ゆっくりと起き上がったベータは周囲を見回す。


「どこ?」


ベータが見える範囲にあるのはベータには使い方が分からない数多くの機械と作業台らしき場所にある大量の器具。

それを見て何故か恐怖を感じたベータは出口が無いか探そうと手術台から降りる。


『あっやっべ起きてる☆』


横からの声にベータは咄嗟に振り向く。声がした方にはファルがいた。

ベータに見られる前にファルは咄嗟に持っていた物を白衣のポケットにしまう


『早いなぁ☆ どうしよ☆』

「ファルだっけ。ここどこ?」


ベータはファルに問い詰めようと近づく。


『ここはボクの作業場だよ☆ 今後のお話をする為に連れて来たんだよ☆ 運んだのはアンドロイドだけどね☆』

「え。」


急な事だった為ベータはどうやってここに連れてこられたのかまだ気がついていない。

それを察したファルはベータに悟られないよう畳み掛けていく。


『急な話でびっくりしたでしょ☆ S.C.S様ってば強引だもんね☆ 詳しい話をするから座って座って☆』

「えっちょ」


ファルはベータの背中を押していく。

ベータはされるがままに進み近くにあった椅子に座らされる。


『さてと☆ まずは明日からのお仕事なんだけど最初は見回り程度で済ませるね☆ 』


ベータの背後に立っている為ファルが何をしているのかベータには見えない。

ファルは予め外しておいたベータのウォッチを操作してあるヒトに連絡を入れる。ただしワンコールのみ。その後すぐに切った。


「見回りって何をするんだよ。」


ファルが何をしているのか知らないベータは首だけファルの方へ向ける。


『色んな所だよ☆ ボクって色んな所で働いてるからね☆』


そこまで言った所でファルの狙い通りベータのウォッチから連絡が入る。ファルはすぐにウォッチを持ち主に返した。


『あ☆ 何やら君に連絡が来たよ☆』

「え。あっサブローからだ。」


何の疑いも無くウォッチを返してもらったベータは前は向き直りそのまま通話状態にしてサブローとウォッチ越しで話し始める。


「サブロー。どうしたの?」

『どうしたってお前の方から連絡して来たんだろ。それよりも大丈夫なのか?!』

「大丈夫って何が?」


話をしながらウォッチを装着し直した所でベータは気づく。いつの間に外していたのか。何故ファルが自分のウォッチを持っていたのか。


『手足はちゃんとくっついてるか? 変な改造とかされてないよな? 無事なのか?!』

「さっきから何の話をしてるの?」


慌てるサブローの声を聞いてベータはますます不安な気持ちが増していく。

その背後でファルは白衣のポケットに隠していた物を取り出す。


『お前、あのファルだぞ! …いやそうだ知らないんだったお前! いいかよく聞け! ファルと』


がちゃん。

小さな金属音と共にベータの首元が少し重たく締め付けられる感触がした。触れると先ほどまで無かった金属で出来た何かが首元を覆っている。


『組まされた相手は全員何らかの形で再起不能にされている。』

『正確には殉職1名と退職1名と懲戒3名と処刑5名だぞ☆』


ウォッチの向こうでサブローは息を呑む。


『いつ、いつから』

『最初から〜☆』


液晶画面を笑顔の顔マークに変えてファルは機械音声で明るく振る舞う。


『ベータクンはボクの記念すべき11人目の相棒に選ばれました〜☆ なのでこれはプレゼント☆』


そう言ってファルは作業台の上に予め置いてあった手鏡を手に取りベータの前に立ち鏡面をベータに向ける。

映ったのは星の飾りが着いた頑強な首輪を付けられて狼狽しているベータ。


「何これ!」

『首輪☆』


ベータは両手で首輪を掴み無理やり外そうした


「がっ!?」


途端ベータは悲鳴を上げて椅子から転げ落ちる。


「え? え?」

『ベータ?! おい大丈夫なのかベータ?!』


突如首から全身に伝わった激痛と不愉快さに困惑と恐怖を感じたベータ。起きあがろうとしたが体に力が入らず床の上に転がったまま。

ウォッチから聞こえるサブローの声が室内に虚しく響く。


『凄いでしょそれ☆ 元々はヒューマロイドに乱暴するのが好きな変態が作ったプログラムで操作次第でヒューマロイドに色んな形の苦痛を与えられるんだって☆』


ベータが座っていた椅子に座ったファルは倒れているベータを見下ろす。


『それをボクが使いやすいように弄ったんだ☆ 首輪を無理やり外そうとすれば激痛と脱力☆ 外そうとしなくてもオシオキで色んな苦痛を与えられちゃうぞ☆』


首輪からのショックでベータはここに連れて来られる前、ファルが撃ったテーザー銃のせいで意識を失った事を思い出した。怒りが込み上げても起き上がれないベータは何とかファルを睨みつけるがファルは大して気にもせずに話し続ける。


『首輪を通して発動する奴だから悪趣味だよね☆ だからせめてカワイイデザインにしたんだ☆ ボクの見立て通り君にとっても似合うね☆』


笑顔の顔マークのままファルは椅子から立ち上がりベータのそばでしゃがみ込む。


『そんなに睨まないでよ☆ これからお付き合いするんだからさ☆ 改めて☆ これからよろしくね☆ ベータクン☆』


ファルとベータ。

こうして2人はお互いの意思関係なくコンビを組む事になった。

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