学院のミツ事。3
スーシ女学院は創立されてから100年以上経っている歴史と由緒がある教育機関だ。全寮制であり生徒達は3年間この学院で勉学とマナーを学び立派な淑女になれるよう努力する事になっている。
そんなスーシ女学院には黒い噂がベッタリとまとわりついている。
学院関係者が生徒達を利用して権力者達に媚を売って莫大な利益を受けているというものだ。
しかしあくまで噂。証拠も証言も無い。
「でもイコールは調べろってさ。」
何度ファルに怒られても気にするそぶりを見せないディヴァイディッドゥバイはスーシ女学院にやって来た理由をベータにも共有する。
「へー。そうなんだ。」
話は何とか聞いてはいるがどことなく上の空のような様子を見せるベータ。先ほど聞かされた枕営業や性行為の単語がベータにとって少々刺激的だったのかもしれない。
『あぁぁぁぁぁもう☆』
そんなベータの様子を見て頭を抱えるファル。こうなると思っていたからどう伝えようか慎重になっていた。なのにディヴァイディッドゥバイは空気を読まずにはっきりと言ってしまった。
『ディヴァイクンのバカバカバカ☆』
「えぇ? どうしたんだよファル。」
怒った表情を映したファルは何を言っても反省しないディヴァイディッドゥバイに文句を言い続けたところで時間の無駄と判断し、仕方がなく仕事の話に戻す。
『それで? どうしてディヴァイクンが派遣されたのさ☆ 教育関係はタイムスクンの担当じゃん☆ 君の管轄外だろ☆』
「タイムスは忙しいってさ。それに性病の感染元になったらやばいからギリオレの管轄って事で任された!」
『もうイコールクンってば強引なんだから☆』
「安心しろファル! 任されたからにはオレがバシッと決めてやるぞ!」
『君だから不安なんだよ☆ ね〜ベータクン☆』
「え。うん。」
話している間にどうにか持ち直したベータを見てファルは立ち上がる。
『調べる場所の目星はついたの?』
「無い! だから片っ端から探す!」
『そう☆ じゃあまずは教師のヒ』
「よぉしやるぞ! どこだ枕営ぎょぉぉぁぁぁぁ!!」
「えっ??!」
ファルの話を最後まで聞かず止める間も無く突っ走るディヴァイディッドゥバイ。姿が見えなくなってすぐにあちこちから少女達の高い悲鳴が聞こえてくる。
「…ねぇファル。」
『なぁに?』
「あのヒト、普段からあんな感じなの?」
『そだよ☆』
「本当にA9級?」
『そだよ☆』
「すっごい不安!」
『同意〜☆』
それでも仕事をしなければならない。
しばらく呆然と立っていたファルとベータは渋々と校舎内に入って行った。
「でもさ。何を調べればいいわけ?」
『う〜ん☆ やっぱり教師のヒトに事情聴、ん?』
廊下を歩いている時、ファルが止まり壁をじっと見る
「ファル? どうかしたの。」
『…ん〜ん☆ 何でもないよ☆』
ベータに声をかけられるとファルは見ていた壁から目を逸らし歩く。
『さぁディヴァイクンが騒ぎを起こしている間に色々と調べようか☆ 事情聴取はディヴァイクンのせいでまだ出来ないだろうし☆』
「あなた達! そこで何をしているの!」
「うわっ! よく分かんないけど見つかったよファル!」
『逃っげろ〜☆』
「え??!」
「待ちなさい!」
騒ぎを聞きつけて駆けつけて来た教師の1人に見つかったファルとベータは校舎の中を走って逃げ回った。その途中でディヴァイディッドゥバイと合流した。
「おっファル! 何か分かったか?」
『何も分かるわけないじゃん☆ この状況で☆』
「ねぇ! なんでおれ達逃げてるの?!」
『ノリと勢い☆』
「えぇ??!」
しばらくの間、ファル達は逃げ回った。
◆◇◆◇◆
「いいですか。ここ、スーシ女学院は由緒と歴史のある学舎であり、伝統とか弱い女性を守る為に存在しています。それなのに男性であるあなた方が不法侵入し騒ぎを起こすなど前代未聞です。」
『わぁボク達前代未聞だって☆ いぇい☆』
「? おう!」
「ふざけないでください!」
散々逃げ回った後、ディヴァイディッドゥバイは何も見つからない! と言って逃げるのを止めた。それに続いてファルとベータも逃げるのを止めた。息切れをした教師達と警備員達、そして遠巻きで見てくる大勢の女子生徒達からの視線を受ける中、3人の前に激怒している様子の学院長が現れた。
学院長に促されて外に出て門の近くまでやって来た3人。学院にいる者達を混乱させた事に対して怒る学院長に対してファルは気にせずディヴァイディッドゥバイとハイタッチを交わしている。
「2人共。おれ達今叱られてるんだよ。ふざけてるとあのヒトますます怒るよ。」
そんな2人を見て呆れた様子で注意するベータもこれっぽっちも罪悪感が無い。何故なら怒られ慣れているからだ。
「ふざけているのですかあなた達は!」
反省するふりすら見せない3人に怒鳴りつける学院長に対してファルは真剣な表情を映す。
『うん☆』
「きいぃぃぃぃぃぃいっ!!」
怒りが限界に達したのか金切り声を上げる学院長を見てファルは肩をすくめて困った表情を映す。
『あ〜あ☆ これじゃあ事情聴取出来ないね☆ しょうがないから帰ろっか☆』
そう言いながら白衣のポケットを探り何かを取り出す。
「ファル?」
ファルが取り出したのはスプレー缶だ。それを上下に振ると中身が入っている音がする。
「ファル?」
それを片手に持ちノズルの先を校門の壁に向ける。
「ファル?!」
ベータは思わずファルの腕を掴んで静止させる。
「何をしようとしたのファル。」
『アートだよ☆』
「落書きでしょ!」
止めて正解だった。
ファルは悪びれる事なく笑顔を表示する。
『やぁっぱり記念は必要でしょ☆ 前代未聞記念☆ あっベータクンもやる? ディヴァイクンもやる?』
「ん? 絵を描くのか。絵を描くのは好きだ!」
『よぉし☆ ファル参上!! って書いちゃおっと☆』
「いや駄目だって!」
3人のやりとりを見ていた学院長が怒りで全身を振るわせ、
「帰ってぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
本心を絶叫した。
◆◇◆◇◆
『追い出されちゃった☆』
舌を出してお茶目に笑う表情を映したファル。
「そりゃそうだよ。」
助手席に座って呆れた様子のベータは座席に寄りかかる。
「どうするの? あれじゃあもう入れないよ。」
「なんでだ?」
後ろの座席に窮屈そうに座っていたディヴァイディッドゥバイが首を傾げる。
「なんでってあのヒト達めちゃくちゃ怒ってたじゃん。おれ達の事嫌いになってるよ絶対。」
「それがどうしたんだ。」
「えぇ。」
何がいけないのかまるで分からない様子のディヴァイディッドゥバイの言動にベータは拒否感を覚える。どこか自分とはずれている。そう思わずにはいられなかった。
『追い出されちゃったけど調査は出来るよん☆』
「え?!」
気まずい雰囲気を察したファルは話を進展させようと声を出す。
「どうやって?」
『ふっふふ〜ん☆ このボクがただデタラメに逃げ回ってたと思ったのかなぁ☆』
「違うの?」
『違うんだっよ〜ん☆』
得意げな表情を映しヘルメットを指で何度か軽く叩くファル。
『ディヴァイクンだけに任せたら永遠に終わんないからね☆ ささっと済ませよう☆』
「ん? だったらなんで離れていくんだ? 調査するんだろ!」
どんどんスーシ女学院から離れていく車に疑問に思っているディヴァイディッドゥバイの言葉にファルは笑顔を表示する。
『仕掛けをしたから大丈夫なのだ☆ それを確認する為に一旦戻るよ☆』
そう言ってファルは迷わずセイジョウ区の支部に向けてハンドルを切った。




