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 「ご、ごめんなさ……。急に声出ちゃって」


 湧き上がるのは、羞恥心。

 ローリエは急に大きな声を出したことを詫びる。

 

 「ううん、それより、あなたパーティに興味あるの?」


 「え、いや……。ちがっ。いやじゃな……くて、その」


 「じゃあ、もしかして、もう他のパーティに入ってたり?」


 そんなことは無い。絶対にない。

 一度だって無い。


 うつむいたまま。

 ぶんぶん、とものすごい勢いで、ローリエは首を振る。否、と。


 「そっか。私、さっきも言ったけど、今、どうしても倒したいボスが居てね。何度か試したんだけど、どうやっても今の戦力じゃ無理みたいで。だから、手伝ってくれるメンバーを探してるの」


 ドワーフの少女は、地面を見つめたままのローリエを見る。

 テンションが低く、乗り気でなさそうにも見える仕草。

 

 ちょっと強く推し過ぎたかな、と。

 もしかしたら、迷惑だったかな、と。


 本当は、どこかへ行けと思っているのかな、と。

 世の中には、一人の方が好きって人もいるし。


 ドワーフはそう思ったから。



「――もしよかったら頼めないかなって、思ったけど……」


 少女の言葉尻に、諦めが混じる。


 ローリエの伏せっていた目が、前を向く。

 改めて。そして確かに。

 目の前のドワーフ少女を、その眼が見た。


 しかし、それと同時に。



「でも、あんまり無理に誘うわけにはいかないわね。そっちにメリットがあるかどうかも分からないし」


 その姿が踵を返す。

 ロングマントが翻る。



 ローリエの視界には、ドワーフの少女の小さな背中。

 マントの上から背負った大きな盾と、頭に装着したウサ耳。

 そのシルエットが、青空が見え始めた空を向く。


 土砂降りだった雨は。


 霧雨に代わっていた。


 

 完全に止んでしまったら、少女がここに留まる理由はもうない。



 いや、もう軒下から出ても問題ない程の雨の強さだ。

 今にも出て行くかもしれない。



 だから。

 言わなければ。

 パーティに入ると。 

 今すぐに。


 

 これは千載一遇のチャンス。

 この3年間、1度も無かったチャンスだ。


 ローリエのSPは99K。

 全く役に立たないということは無い。


 いや、絶対役に立って魅せる。


 だから、パーティに入ると。


 言わなければ!

 言わなければ!!

 言わなければ!!!


 ぐっと、握った拳に力が籠る。

 

 



 「悪かったわ。それじゃ」






 「待って!」




   ――ください。







 超絶な、デクレシェンド。

 

 去ろうとしたドワーフ少女が立ち止まり。


 振り返る。

  


 「あっ! アノッ、パ…………()ッ――」


 不揃いなアクセントに、波うつボリューム。

 

 言葉としては、全く用を成していない。

 が、しかし。

 記号の羅列のような、それだったが。

 



「え? 入ってくれる……んですか? 私のパーティに?」


 はい、です。

 そう、です。

 いえす、です。

 OK、です。

 肯定、です。

 

 こくこく、とローリエは全力で、頷いた。

 

 ドワーフが立ち去るのをやめて、再び、ローリエの隣に戻ってくる。


 

「ありがとう」

「い、いえ。でも、お役に、立て、るか、は……」

 

「大丈夫よ。もしも、強さが足りなければ、一緒に修行しましょう?」

「は、はいっ」


 『一緒に』!?

 なんてすばらしい響きなのだろう。



「私は、ドワーフで、見ての通り防御型でパラディンぽいことをしてる、フェルマータです、よろしく」


 あなたは?


「わ、わた、私はッ……名、前、ローリエ……ですっ」


「そう。ローリエちゃん? じゃあ、略して『ロリちゃん』ね」


「ろ、ろり!?」



「だって、背ちっちゃいし。全体的にロリってしてるじゃない?」


 そっちドワーフじゃない。

 おまえが言うなァ!








 ……って言いたいです、すごく。

  





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