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「あら……。キミ、ネームドオプション何個もあるんですね、すごい。この中で宝具に悪さをしてるのはこれかな?」


 そんな係員が公開したのが、『世界樹の加護』という装備オプションだった。

 

 それにより消費SPが削減されているため。

 取得した総SP量より、本来使用しているべきSP合計量が上回っているのだ。

 

 早い話。

 ローリエの総SP量は、感覚としては12万ちかいということになる。 

 

「ごめんなさい、レギュレーションに関わりますので、ちょっと本部に確認を取ります。少々お待ちくださいね」


 そうして、スタッフが【風の囁き《ウィスパー》】のスクロールを使って連絡を取る間。

 ローリエとその後ろに並ぶ者達は待たされることになった。

 

 不意に暇な時間が出来あがる。


 人々は自然と会話でその暇をつぶし始め。

 周囲は、一つをテーマとする話題で騒めき出す。


 ドラゴンゾンビの件。

 着ぐるみのクマの件。

 さらに、ジルシスというどこかの領地のマスターとして聞いたことのある名前。


 

 99Kという、高レベルキャラクターの存在。

 そいつが身に着けているオプションの凄まじさ。


 その全てが、同じ一つのパーティーに所属していること。


 なんて名前のパーティだっけ?

 

 ミミズクと、猫……?


 そんな声も聞こえてくる。




 ざわ、ざわ、と見物客や参加者が口々に、今傍にある興味を言葉にする中。



「まさかの99K……!? すごいわ!!」

「能力的にはそれ以上、ということかしら?」

 フェルマータとマナも、ローリエが予想以上だったことに驚いていて。 


「さすが先輩! 出会った時から只者じゃないと思ってました」


「見た目は全然たよりなさそうなのに……?」

 

 ユナとウィスタリアもそれぞれ称賛を口にし。

 それを期に、二人はローリエというキャラクターの話題を暇つぶしの種にし始める。


「他ニモ、ネェムドオプションツイトルテ、今、ユウテナカッタ?」

 もちろん、ジルシスも、興味津々だ。




 そして。

 当の本人。



 スタッフの傍で佇んで待つ、小柄エルフ。

 ローリエは、胸元で、服を抓むようにこぶしを握り締め。

 不安で仕方が無かった。


 レギュレーションがどうとか言っていたし。

 参加できない可能性もあるかもしれない。

 そうなると、フェルマータ達に迷惑がかかるかもしれない。


 それに、たくさんの他人に注目されているような雰囲気もあるし。


 すごい、とか褒められるのは嫌いじゃないけれど。

 

 持てはやされる、という状態は好きではない。

 

 ただの被害妄想かもしれないけど。

 馬鹿にされているように思うことがあるから。


 ローリエの心は、ざわついていた。


 この場から逃げ出したい衝動に駆られてくる。



 それに、装備にしても。

 すごいと、他人は思うかもしれないが――。


「……そんなに、良いものじゃないのに」


 ローリエ自身はそう思わない。



 そんなローリエが身に着けている装備は、頭防具も身体防具も、ゲームを始めて間もないころに作成したモノだ。


 むしろ、初めて作った防具であり。

 森で採取したモノや、魔物のドロップ品など。

 植物系の素材を組み合わせて作った、自作の防具になる。

  


 総SP7,000あるかどうかという、初期の頃である故。

 決して、高級な素材で出来ているわけではない。

 めいいっぱい強化はされているが。

 それでも、元々の性能が良くないため、物理防御力も魔法防御力も心もとないままだ。


 単に等級が伝説級(レジェンダリィ)であるというだけが特徴の。

 ただの低レベル用の防具なのだ。 



 その身体防具の名は、


 『千年妖精のおめかしドレス』 


 という。



 見た目も、生きた巨大な葉っぱなど。

 様々な植物を元にして作られたドレスで。

 スカートは大きな白色の花弁で構成され、座ると本当の花のように広がる仕組みになっている。

 

 名の通り。

 妖精が森を散歩する時用のドレス。

 そんな感じの。


 どちらかといえば、見た目重視の装備なのだ。



 それなのに。

 色々な意味で、ちょっと大変な能力のオプションがついてしまった。

  

 しかも。

 閃いたネームドオプションは。

 それだけじゃない。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 


『お助けアルラウネ』レベル1:

 道具、武器、防具、消耗品、素材、調度品アイテムを製造する時。

 5%の確率で1~3個追加で同じものを生成する。

 魔法で作成する武具はこれに含まれない。

 効果発生時に、可愛いアルラウネがこっそりお手伝いに現れる。


『緑の精霊』レベル5:

 周辺の草木の量に比例して、移動速度と発見されにくさ(視覚/聴覚/嗅覚/魔法感知)が大きく上昇。

 


『世界樹の加護』レベル5:

 スキル習得に必要なSPを20%削減する。

 ただし、モンスター討伐時に獲得するSPの量が40%減少する。

 この装備は自動的に【破壊不可】【耐久無限】【着脱不能】を得る。


『封印の紋章』--------:

 SP量が最大値(100,000)に達した時。

 このオプションと、『世界樹の加護』オプションは、別のオプションに変化する。

 また、この装備は自動的に【看破阻害】レベル10を得る。 



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 



 



「……まだ、かな」


 ローリエが待っていると。

 スタッフのやり取りが終わったようで。


「ローリエ様。本部の判断をお伝えいたします」


 ごくり、とローリエは生唾を飲む。


「イベントへの参加は可能ですが、同時に組むキャラクターのSP量は50,000が上限とし、人数はひとりに限定する、とのことです」


 つまり、ローリエ一人で110,000という裁定になったわけだ。


 でもひとまず、参加はできるようだ。


「よかった……」


 

 ローリエはほっとする。

 そして、もう、今日やることは終わったよね?


 もう、今すぐ宿に帰っていいかな……?


  



「よし、ロリちゃんでチェックは最後ね。それじゃ、折角だから他の参加者がどんな感じか、偵察していきましょ? 組み合わせも考えないといけないしね」



 うっ。


「……は、はい」


 帰りたい。

 この人混みはもう嫌だ。

 そう思っても、ローリエはやはり言い出せないのでした。

 



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