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 ローリエが、おっかなびっくり。

 ドラゴンゾンビの頭を撫でようか、とチャレンジしている。

 それを背景に。

 

 フェルマータは、赤のメガネを装着したままで、感心して。


「へぇ、すごいわ。この子、SP0なのにすでにめっちゃ強いわよ? HP257もあるわ」

 と、ウサミミのドワーフは、看破で得た情報を言葉にする。

 

 

「えぇ!?」


 ユナが驚き。

 さらにユナは、ちょっと自信を無くしたような顔で。 


「すでにHP、私の10倍以上ありますね……」


 


 

「他のステータスは?」と冷静にマナ。


「えっと……、MP80、スタミナ55、攻撃力18、防御力16……っていうか、敵1匹も倒してない状態で、筋力と耐久力14もあるわよ? それに種族も、ドラゴン種とアンデッド種のハイブリット種族になってるわ。なにこれ」



「でしょうね。『ドラゴン』『ゾンビ』だもの。ハイブリットなのは当然ね。吸血鬼とかと一緒よ、たぶん――。その分デメリットも何か抱えていると思うわ」


「うん……太陽が出ている状態だと、能力値が減少するみたいね」


「やっぱりね」


「まぁ、減ったところで、普通のプレイヤーのSP0よりだいぶ強いんじゃない?」


「単純に強いわね。……さすが、子供とはいえ、腐ってもドラゴンだわ」


「……」  


 そこで、マナとフェルマータの会話が一時、凍結した。

 耐えきれずに、フェルマータが口を開く。


「……ナニソレ、ダブルミーニング?」


 そして、フェルマータが突然のハイテンションで、続けて早口る。

「『ええ、もう最初から腐ってるけどね、ドラゴンゾンビだけに……!』……とか言ったほうが良かったの、私?」


 でもマナはあっさりしている。

「何言ってるの。フェルに突っ込みなんか期待してないわ。もともとそんなつもりもないし」


「もう、紛らわしいのよ、先生。ボケるならちゃんとボケて」


「私別に、ボケてないわ」



 そこで、ため息混じりに、フェルマータは眼鏡を外す。


「とにかく、強いのは解ったけど……どうやって育てるのかしら? 先生わかる?」


 マナは、首を振る。知らない、と。

「私もペット関係は詳しくないのよ。だけど……たぶん、騎乗スキルで乗ることはできる筈よ」


 

「騎乗スキル、ですか? 私ちょっと攻略サイト見てきますね。ついでにペットのことも調べてきます」


 そう言って、ユナがログアウトした。


 そこで、ローリエが、不思議がる。

 普通、キャラクターに帰属される召喚生物等は、術者が居なくなれば一緒に居なくなる筈だ。

 なのに、ドラゴンゾンビはまだ居る。

 

「アレ、このドラゴン消えないんですね。ユナさん、居なくなったのに……」


「ほんとね。でも――」

 フェルマータが、いち早くドラゴンの動きに気づく。

 

 そぉ~っと、頭を撫でようとするローリエから、ドラゴンの頭が離れ。

 なにか、警戒するように、何かを探すように。

 

 寝かせていた頭をもたげ、眼窩に潜む輝く瞳が、近くを見たり、遠くをみたり。

 

 ローリエは、その子竜の様子を心配し。

 フェルマータは、注意深く見つめて。

「ユナさんを探してるんでしょうか?」


「そうかもね……。もし、どこかに行こうとしたら、私がスキルで抑え込むわ」


「その方が良いわね」

 そんなマナは、「ところで」とローリエを見る。


「はい?」


「ロリは、『風』以外に、『土』と『木』も使えるのね」



「へっ!?」


 ローリエは、一歩、後ろに下がり、仰け反るほど驚いた。

 声も、素っ頓狂な声、という形容に近い、大音量気味だった。


 そこに、フェルマータも参戦してくる。

「あ、それ私も気になってた」と。


 ローリエは、どぎまぎしつつ、訊き返す。

「なぜそれを……?」


「だって、さっき、強化(バフ)かけていたでしょ?」


「あ……」

 そういえばかけていた。

 この前の遺跡でユナにかけたから。

 そのクセのようなもので、かけてしまった。 


 だから。そう。

 用意していた言い訳を――。


「えっと、あれはマスタリレベル1で取れますし……基本バフですから」


「でも、全体化してたじゃない?」


 うっ。

 基本バフの広域化、およびパーティ全体化は、マスタリレベル5から可能なのだ。

 それはもう、中級レベルと言ってもいいくらいで、齧ったとは言えない。

 用意していた言い訳が、即座に破綻してしまい。

 ローリエは言葉に詰まりまくる。


 えっと、あの、その……。

 嘘つきはパーティ追放、とか言われないか、気が気ではなくなる。


 冷や汗すら出そうなローリエ。

 だが、流石にゲームなので冷や汗は出ない。中の人は出てるけど。


 しかし、マナは一人で納得したかのように言う。

「――範囲化できるスキル付の装備か何か?」


 ローリエは全力で乗っかった。

「あ、はい……そうです!」

  

「そう、なるほど、ね」


 それきり、マナは追及をしなかった。



 暫くして、ユナが、再びログインして。

 落ち着きのなかったドラゴンゾンビが、ユナにすり寄る。

 やはり、寂しかった、ということだろう。

 ローリエは再び、ドラゴンゾンビ、なでなで作戦を始めた。


 ユナは、調べてきたことを説明する。


「――お待たせしました。騎乗スキルは色々あるんですけど、ちょっと、そっちを取り始める前に、自分の両手武器スキルとかを揃えないといけないと思いますので、今は置いといてですね。ペットの方は、ドラゴン種のペットというのは、まだどこも情報が無いみたいでした。馬とか、騎乗用リザードとか、騎乗用でない普通の鳥や猫などの情報はあるんですが……」


 基本的に、騎乗用ペットもキャラクタ―と同じようにSPを獲得し、1000毎に種族強化が行われる。

 ペットの武器や防具は、騎乗用の物しか装備できず、キャラクターのものほど効果が高くない。

 代わりに、爪や尻尾などが、武器と言う扱いで設定されているようだ。

 またペット自身のスキルは自動で取得するものと、プレイヤーの任意の物があるらしい。

 加えて、ペットのステータスの振り分けも、プレイヤーの任意となっている。


 ユナの見てきた情報では、こんなところだった。


 マナが問う。


「竜種についてだけど。このまえの遺跡イベントのところはどう? あの石碑……っていうかたぶん、あれがドラゴンの卵だったんでしょうけど。それについて載ってない? 他に拾った人が居るとか……」


 ユナは首を横に振る。

「いくつかの攻略サイトを見ましたけど、どこにも無かったですね。石碑に注目してる人もいないようでした」


 そこに、フェルマータが口を挟む。


「ユナちゃん、あれ、どうやってゲットしたの?」

「普通に、取れましたけどね?」

「普通に……?」

「はい、隣のかとぶれぱす? の卵と同じ感じで」

「ナニソレ、そんなのアリなの?」


「……何か特殊な条件でもあったのかしら?」


 マナは腕を組んで悩みだした。

 


「えっと、とりあえず。後回しにしようかと思いましたが、ペットに騎乗する、というだけのスキルが、SP5で取れるみたいなので、それだけ今、取ってみましたけど……」


「おっ! じゃあ乗ってみたら?」


 それを聞いて。

 ローリエも、話に混ざる。 


「ユナさん、そのまえに、この子に、名前、つけませんか?」

 

 あ、ホントだ、名前!


 全員、それを思い出した。


 そんなインファントドラゴンゾンビちゃんは、今、ローリエに、そっと撫でられていて。

 やっと、作戦が成功したことをローリエは喜び。 


「やっぱり意外とかわいいかも……?」


 なんて微笑んでいた。

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