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 さて、どうしたものでしょうか。





 まるで、ゴミのように他人(ヒト)を吐き出す、首都の門。

 

 あそこに入るという事は、汚すぎる排水溝に指を突っ込むくらいの勇気がいる。


 少なくとも、ローリエ――いや、(すめらぎ)愛海(なるみ)には。


 

 しかし、行かねば目的の達成はない。

 

 やっぱり帰ろうかな、でも行かなくちゃ。


 そんな葛藤のループと共に、街の入り口。

 そこに繋がる街道の草むらで。


 ローリエは小一時間立ち往生している。

 実際には草の中に伏せているが。



 首都には入りたいけど、ヒトの往来の中には行きたくない。


 他人の往来という河にハマったとたん、ローリエの意識は亡くなるかもしれない。


 何か他の手を考えるべきだ。


 ローリエは、首都の様子。

 その外壁や、聳えたつ城を観察する。



 そして、そっと移動を始めた。

 街道に繋がる門から遠ざかる。



 ぐるりと高い外壁を迂回し、壁の近くまで来た。

 入口からは遠く、ヒトの姿もあまりない場所だ。


 そこから、外壁の上を見上げる。

 

 ローリエの能力(ステータス)なら、一足、二足で登れる気がした。 

 なんなら、ローリエは空中を短時間走ることもできるし、跳躍力を強化するスキルもある。



 よし、やってみよう。



 そう心に決め――。



 ――た時。



 外壁の上の兵士と目が合った。

 弓を手にしている、衛兵だった。

 城……つまりこの首都を所有しているギルドが雇っているNPCだが。

 変なことをすると、ギルドに通知が行く上に、指名手配されかねない。


 たぶん、NPC自体は倒すことができるだろう。

 しかし、その後の面倒くささを考えると、強行は出来ない。

 

 ――公衆の面前でさらし首にされ、死刑執行。


 そんな目に合うのは嫌だ。

 

 悪い妄想を消し飛ばし。


 ローリエは外壁の傍を立ち去った。



 



 さて、どうしたものでしょうか。


 状況はふりだしに戻った。


 いろいろと考えた結果。


 「そうだ……」


 あることを思い出した。


 ローリエは風のスキルを極めている。

 その上で、重力スキルもある程度育てている。

 

 特定の風スキルと重力スキルの習得で覚えるスキル。

 その中に、飛行できるスキルがあるのを思い出した。



 【飛行(フライト)



 ローリエはその魔法を使って、兵士の隙を狙って外壁の中に侵入する。

 そうして、民家の屋根に降り立った。



 さすがに、高空から急降下で侵入されては、兵士も気づかないようだった。



 「やった、入れた……」


 まるで、泥棒か怪盗みたいな入り方だが気にするまい。

 この世界では、かなりの自由が許されている。

 こんな変化球な街への入り方も、出来るならばやっていいのだ。

 その結果どうなるかは、自己責任だけども。



 さて。


 

 ローリエが降り立った屋根から見下ろすと、たくさんの人が、大通りを行き来している。

 路地にも、民家の下の道にも。


 あの中に入るのは御免だ。




 ローリエは身軽だ。

 

 STR――Strength

 VIT――Vitality

 DEX――Dexterity

 AGI――Agility

 FAI――Faith

 MEN――Mentality 


 の基本ステータスのうち、AGIとDEXに多くを振っている。

 細かく言えば、AGI極、DEX多め、VIT1、MENとSTRとFAIは中程度。

 といった具合だ。



 つまり、とても身軽で軽快な構成だといえる。


 なので、屋根を伝って、移動するくらいは簡単だ。




 さて、当初の目的通り、とりあえずパーティの募集を探さなければ……。 

 冒険者が集まる場所に行けば、たぶん募集があると思う。 


 それを真剣に考えた時。

 

「……うっ」


 あまりに困難すぎる想像がよぎって、頭を抱えてしまった。

 そもそも、冒険者があつまる場所が良く解らない。



 ――どこかに都合よくパーティーメンバーを募集している人が、人の少ない場所に居ない物だろうか。


 そんなことを考えながら、ローリエは首都グランタリスをうろつくのだった。

 正確には、首都の屋根の上を。

 


 

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