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訓練場所のど真ん中に、でかい石碑を置いたまま。
カウントダウンを待つパーティメンバー達。
ローリエは、日傘を杖代わりに、ベンチに座り。
ユナはその右隣に、マナは左隣に、ローリエを挟み合う。
そしてフェルマータは、お店に飲み物を取りに行っている。
そんな折。
おもむろに、マナが気付く。
ユナが、大剣を携えていないことに。
「ユナ。そういえば武器は? フェルにもらってない?」
「あ、あれは……」
ユナはバツが悪そうだ。
なので、ローリエが代弁する。
「……遺跡での大決戦で、折れてしまったみたい、です」
「もう? 早いわね」
「ごめんなさい、せっかくフェルさんに頂いたのに」
マナは、ううん、大丈夫、と首を振る。
「たぶん気にしないわよ、フェルは。どうせ、お古の武器だったんでしょ? またフェルに言えば、新しい武器くれると思うわ」
「いえ、武器ならローリエ先輩に新しいのは頂いたんですけど。ちょっと携帯するには長いので、街中では仕舞ってあるんです」
そう言って、ユナはベンチから立ち上がり。
インベントリから、ハルバードを装備する。
2メートル近いそのポールウェポンは、三日月状のアックス部と、大鎌状のピック部、そして鋭くとがったスピア部で構成されたヘッドを持ち、黄金色の宝石が埋め込まれた、業物だ。
マナは、レア物であることを一目で見抜き。
「良い武器ね。それ、もしかしたら、何か条件付きのスキルかオプションを閃くかもしれないわ」
「スキルですか?」
「ええ。武器は、使い込んでいくと、使い手に合わせたスキルを幾つか『武器自体が』覚えることがあるのよ」
ちなみに。
これはNPCや低ランク鍛冶師が販売している量産武器でも、閃く。
それが魔物産やボス産の方が、閃くスキル数が多かったり、強かったりするという話だ。ただし、ローリエの作り出す魔法武器ではこの機能はない。代わりに、使い込んだ魔法には個別にオプションを付けることはできる。
マナは続けて、言う。
「つまり、キャラクター個人のステータスなんかを条件にして、使えるスキルね。たとえば、私の魔導書だと、信仰力80、精神力20、器用度20、【魔石研究】レベル5――、これらをクリアしないと、使用できないし効果もない。代わりに、【無属性魔法/消費MP50%】【魔法攻撃力アップⅡ】のオプションがついているわ」
「完全に個人の専用武器みたいになるんですね」
「そういうことね。ユナ――そのハルバード、耐久値は?」
「えっと、120/120です」
「とても頑丈ね。申し分なしだわ。耐久値が減ってきたら、出来れば修理スキルを持ってるドワーフ種族に、手入れをお願いすると良いわ」
「フェルマータさんとかですか?」
マナはぷっ、と噴きだした。
半笑い声で答える。
「ううん。フェルはダメよ。あの子は、戦闘バカだから」
「誰が戦闘バカですって?」
裏手の扉を、お行儀悪く鉄靴で、押さえつけながら通過し。
飲み物を手にしたフェルマータが戻ってきた。
「って、私が座る場所ないじゃないの」
ベンチは、ユナ、ローリエ、マナで一杯だ。余地はない。
「立ち飲みでよろしく」
「駅の居酒屋かァ!? ――まぁいいけど……」
結局、フェルマータはローリエの後ろで立ってコーヒーを飲むことになった。
「今の、そのハルバードの話? カッコいいわね。レア物?」
「はい、ローリエ先輩が拾ったそうです」
「へぇ、珍しい。レア武器の完成品ドロップなんて……。レベル高いアンデッドか、武器系の魔物が落とした感じ?」
するどい。
「その通りです。さすがフェルマータさん」とローリエ。
「すいません、フェルさん、せっかくフランベルジュ頂いたのに」
「気にしないで。アレは私が今のビルドに行きつくまでに、迷走してた時の名残だからもう要らないものだし。それより、その武器は大事に使った方が良いわ。きっと、良いオプションかスキル持ってるわよ」
「はい。大事にします」
フェルマータは、飲み終えたカップを、その辺の石段に置いて。
「さて、残り時間いくつ? もうそろそろじゃない?」
「はい、あと、5分くらいです」
「そっか、じゃ、そろそろ準備しないとね」
フェルマータは、石碑の前に立ち。
武器と盾を構え、戦闘準備を始めるのだった。




