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『リビングアームズ』というこの魔物。
こいつは、『リビングソード』や『リビングスピア』と言う感じの、武器系魔法生物の全てが合体したような、そういう上位種に当たる魔物で、全部乗せっていうロマンの塊みたいなやつだ。
そしてローリエが天敵とする『金属性』の敵でもある。
しかし、武器だから金属性という訳ではない。
素材が金属の武器は全部『金属性』を帯びているのかと言えば違う。
キャラクターが普段使っている金属武器は『無属性』であり。
金属と『金属性』は別々のものだ。
つまり、『金』という現象性――『金』の魔力を帯びているかどうか、という話だ。
そして、この魔物は、わかりやすいくらい、がっちり、帯びている。
ローリエが当たればただでは済まない。
だからという訳ではないが――。
「ほいぃ!」
ローリエはぶん回される大斧を、ワザとらしく大袈裟に躱し、大きく距離を取る。
伸身ムーンサルトとという、アクロバティックな方法で。
それは時間稼ぎだ――。
『リビングアームズ』は、総SP適正的には、当然SP99Kのローリエより格下なのだが。
油断していると、あっというまにHPを削り取られることになる。
というのも。
いかんせん、『木』と『風』マスタリを最大の10まで取っているローリエは、『金』と『雷』から受ける被害が200%になる上に、弱点になる属性の防御系パッシブやアクティブは問答無用で貫通される。
例えば、木属性の魔法と、金属性の魔法が衝突すれば、木属性の魔法は当たった瞬間にかき消される。
だから、ローリエが頼りに出来る物は『土属性』と『重属性』。
ただし、バフだけは、かき消されないため。
大袈裟に距離を取って、作った時間で、順に強化を施していく。
「『身軽さ上昇』、『生命力上昇』、『自己治癒力上昇』、『物理防御力上昇』――」
さらに。
『リビングアームズ』を中心にした円をなぞる様に、ダッシュで間合いを図りながら。
「『花弁の舞踊』、『自動紅玉盾』、『|ノックバック耐性付与/壁張付可』、『無音移動』――」
スピアを突き出して突進してくるのを、【超高度跳躍】で、高空へ逃げつつ。
「『空中機動追加』、『空中自立、歩行可』、『|転倒耐性付与/回避力減少防御』、『重力領域展開』」
順番に強化を施し終え。
上空から、落下する。そのままに。
「『空圧弾』!!」
風属性の初級魔法を、『リビングアームズ』の頭上から雨あられと連射で浴びせかける。
『金属性』の魔物が、風にまで耐性を得ているかというと、そんなことも無いのが普通で。
量産型の『リビングアームズ』ならば、ローリエが知る限り、風は効く。
しかし、ここはインスタントダンジョンだ。量産型ではない、カスタム種の可能性もあって。
地面に降り立つローリエは、悔しそうにつぶやく。
「やっぱり、特別製でしたか……」
危惧通り、風も無効化された。
ならば仕方がない。
連射する物の属性を変更するだけだ。
「『石片の散弾』!!」