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 パーティはしたい。

 でも、やっぱり一人は落ち着くなぁ、とローリエは思いながら。

 なんなら、この真っ暗な闇も、おあつらえ向きで、嫌いじゃなくて。 


 ひとりが板につきすぎちゃったかな。なんて。


 良い事なのか悪い事なのか。


 

 そんなちょっとした解放感を覚えながら。


 ダンジョンを行くローリエは。



 ついに、その感覚の中に動く物を発見する。



 大きさや動きから考えれば、確実にモンスターだ。

 進むためには排除が必要だろう。


 もしかしたら、めっちゃ強いやつかもしれない。

 索敵能力だけでは、相手の強さは判断できないから。

 ローリエは、日傘を倉庫に仕舞い、『本気』の戦闘態勢に切り替える。



 ローリエは、3年の間、ずっとソロで戦ってきた。

 どこかのパーティに誘われないかなと思いつつも。

 不人気なスキルの満漢全席である自分に、自信が持てず。

 

 結局、そのままSPは、99012まで溜まってしまった。

 他のゲームでいうところのLV99(最大100)って感じだ。


  その中で、勝手に出来上がった戦術がある。



 まず、ローリエは、武器を何種類か齧っているのだが。

 魔物を発見した時に、最初に使う武器やスキルは定まっている。


 ローリエは、エルフ種族だから、遠距離攻撃の威力、射程、精度に補正が加わる上、風と重力の各種パッシブスキルの効果で、風の影響も重力の影響も受けない矢を撃つことができる。

 それらを最大限活かしつつ、ファーストアタック大正義の遠距離攻撃を仕掛ける。

 

 始めるのは、そのための準備だ。


 ローリエはまず、

 【大自然の弓(フォレストアーク)】で長弓を作り、【木製矢製造(クリエイトアローズ)】で矢を作り、【猛毒付与(ポイゾナスウェポン)】で毒を塗る。

 それに、さらに。

 今回は、遠距離武器マスタリから。

 【狙撃姿勢(スナイパースタンス)】を使用して、射程距離と精度を向上させた。

 

 木属性魔法で作り出した長弓は、木を組み合わせてできた競技(アーチェリー)の弓のような形で、弦も蔓で形成される。

 矢に、塗られる毒は別の【毒草生成(グロウ・ポイズン)】のスキルで生成されるモノであり。

 他のRPGよりもその種類は多岐にわたる。

 

 その内訳は――。


『血液毒』

 ――ダメージオンタイム(DOT)。つまりよくある時間でHPが減るやつ。ローリエの毒はMPとSP(スタミナ)も減る。


『腐食毒』

 ――『負傷』の状態異常+即時の追加ダメージ。


『神経毒』

 ――状態異常マヒの効果。ただし使い手の毒レベルと相手の耐性によっては、即死。


『実質毒』

 ――各種基礎ステータスダウンのデバフ


 以上の4種類。


 ちなみに毒での攻撃は、全て『木属性』の『物理でも魔法でもない』扱いになっていて、防御力では減らせず、特殊な耐性スキルや、アイテムを使って防御する設計だ。



 ローリエの筋力値(STR)は補正込みで35しかなく、ユナよりも低いため、正直物理攻撃の一発だけでいうなら、火力は無い。


 そこを、これらの毒スキルで補っている。

 

 だが、今は、暗殺者の落とした指輪の効果で筋力値(STR)+25されて60になっている。この基本ステータスが25もアップするアクセサリーは珍く、とても高価なアイテムで間違いない。


 ローリエは、真っ暗な暗闇の中。

 各種の索敵情報を頼りに、作り出した弓の射程ぎりぎりから、発見したモンスターに狙いをつける。

 付与する毒は、効果時間が短くなるが、瞬間的な効果が高くなることを考えて。

 

 4種全部乗せだ。


 

 ローリエが。


 弓を引き絞り。

 まだ見ぬ敵に狙いを定め。

 矢を解き放つ。



 ヤジリも軸も木で、矢羽根は木の葉。


 それは瞬く間に暗闇の中に吸い込まれる。

 かなりの長射程から発射された矢は、減速も、減衰も、重力で落下することもなく。

 一直線に魔物に向かい、突き刺さり、その身体にめり込んだ。


 静かなダンジョンの空洞に。

 ごく小さな歎きが、遠くから反響して。


 ローリエに、魔物の苦しむ様子は伝わらない。

 真っ暗だし、超音波と振動での感知だから。


 ただ、魔物がこちらに向かってくる、という情報は伝わってくる――。

 そうして、ほんの少しだけ、こちらに動きをみせた魔物のシグナルが、やがて消失する。


 矢のダメージ、腐食毒による追加ダメージ。

 そこに、麻痺か、あるいはDOTで死んだのだろう。

 SPの獲得が0であることから、弱い部類だったと推察できる。



 まずは1匹。



 しかしながら、ここから先、たくさんの魔物が感知されている。


 

 だが、問題はない。

 この程度の強さであれば、ローリエは苦戦しない。

 そんな感じで、ローリエは殆どの敵を弓で抹殺しながら、破竹の勢いでダンジョンを進んでいった。



 しかし、ある時。


 「……?」 


 ローリエは、違和感を覚えた。



 矢は確かに当たったはずなのに。

 ローリエの元にやってくるシグナルが速い。


 移動速度が変わらないから、『実質毒』によるステータスダウンも受けておらず。

 麻痺も全く効果を受けていないであろうことが解る。


 麻痺の状態異常の極地は、最悪即死だが、通常は痺れによって動けなくなる。

 それよりもさらに効果が微弱な場合には、動作が遅くなる、という効果に変わるのだ。


 だが、そんな素振りは無い。

 ローリエは、いやな予感がしつつも。


 もう1発。


 もう1発。


 何発撃っても、そいつの動きは止められず。


 目視可能な間近までやってきたそいつをみて、ローリエは理解した。

 

 そりゃそうだ。

 木属性で作った矢は、『木属性攻撃』になるのだから。



 『(ごん)属性』の敵に効果が出るはずもない。



 故に。


 HP満タンのまま、無傷の魔物が、ローリエに襲い掛かる。



「ちょ、ちょちょ、ちょい、ちょい、ちょい、ちょっとぉ! 『リビングアームズ』さん!?」


 なんでこんなところに!?



 そう、そいつは全6種類の様々な近接武器、両手剣、両手槍、両手斧、両手槌、大鎌、大盾、で構成された、浮遊する武器の魔物。


 ローリエの『天敵』だ。

 


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