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「まいど」
ローリエの掌に、数枚の紙幣と硬貨が渡される。
お金だ。
NPCのおじさんが、買い取った素材分のお金を渡してくる。
NPCなので、その笑顔もプログラムで、言葉も規定通り。
ローリエは何の気づかいをする必要もなく、無言、無表情でそのお金を受け取った。
実際には、プレイヤーに売ったほうが、良いおかねになる。
しかし、他のゲームと違い、このゲームにはなぜか遠隔で取引する手段がない。
取引所に品物を登録して、別の場所に居るプレイヤーがそれを購入する。
そういうシステムが無い。
かなり前のゲームのように、自分か、雇ったNPCに露天販売してもらうか方法しかない。
そして、露天販売のメッカは、首都だ。
人、ヒト、他人。
どこもかしこも。
ものすごい人混みでひしめく街だ。
そんな場所に、ローリエは行きたくない。
露店以外にも、直接会って取引する方法があるが、それは問題外。
だから、狩場近くの辺境の村でNPCに売っている。
素材を売った後は、倉庫の整理。
倉庫管理NPCに倉庫を開いてもらう。
VRなので、倉庫はちゃんと扉があり、中に入ることができる。
そこには、アイテムが並べて置かれている。
ローリエの倉庫には、ローリエが製造した高級な宝石や、薬草がいっぱい入っている。
しかしもう倉庫からあふれそうになっている。
特に、万能霊草。
これは、加工すれば量が激減するので、さっさと加工しないといけない。
これも加工できるプレイヤーに頼めば安く、加工の成功率も高く、品質も高いのだが――。
ローリエはいつもNPCにお願いしている。
「お、お願いします」
水系魔術師NPCに、加工をお願いして。
どこをとっても至って普通のエリクシルが沢山出来上がった。
ついでに、製造失敗時に出来上がる高級なゴミもいっぱいできた。
そしてまた、倉庫に高級薬品が並べられる。
エリクシルは大変高価な高級回復薬――のはずなのだが、NPCには価値が解らないらしく、1グランでしか買い取ってくれない。
これをちゃんと売るには、首都に行くしかない。
だからずっと、倉庫に眠っている。大量のエリクシルが。
まぁでも、薬品と宝石であふれそうな倉庫を見るのは、けっこう楽しいのだ。
コレクター精神というべきだろうか。
金塊のたくさん入った金庫をみて、へらへら笑うかのように。
ローリエは一瞬、にへら、といやらしい笑みを浮かべる。
――ちなみに、この倉庫は5番目であり。
残りの4つもパンパンに詰まっている。
なにせ製造できるようになってからのほぼ1年分だから。
しかし、ローリエはもうすぐ成長の限界を迎える。
まぁ、突き詰めればもっと強さを求めることもできるだろう。
でも、どちらにせよこのままでは無理だ。
一人でやっていくには、既に限界が見えている。
――周囲を見る。何気なく。
この村は、森林系の最高難易度の魔物が出る地帯に接続している。
パーティプレイ推奨地域だ。
だから、ぽつりぽつりと、見えるプレイヤーは皆、誰かと連れ立っている。
「パーティ……かぁ……」
仲間、友達、パーティメンバー。
MMORPGなのに、一人で遊ぶなんて、オフゲーしているのと変わらない。
最初から求めていた物を、そろそろ探しに行かなくては。
たぶん首都には、パーティの募集が沢山あるだろう。
ローリエは、かなり強い筈だ。きっと役に立つ。
あんまり強くないパーティに入ることが出来たら、ちやほやして貰えるかもしれない。
強大なボスに、立ち向かうパーティメンバー。
しかし歯が立たない状況の中。
颯爽と、無双プレイで、ぶったおし。
感謝感激の大喝采。
「ふへへ……」
何の根拠もない妄想が膨らんで。
開け放たれたままの倉庫の扉。
目の前には大量のエリクシルの在庫。
「よし、売りに、行こう……かな。首都、まで……!」
やや調子に乗ったローリエは、そうして首都を目指すことにしたのだった。