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 山岳での戦いの後。

 そして。

 ローリエが、ログアウトした後の『ミミズクと猫・亭』



 マナとフェルマータは、まだ少し残って話を始めた。


 真っ黒なローブと、ジェスターキャップのような魔法帽子の魔法使い――。

 マナの席には、何もなく。

 

 対して。


 甲冑を着こみ、ロングマント姿のいかにも騎士然とした、小柄――。

 うさみみドワーフのフェルマータの席には、マスターに入れてもらったミルクティーが湯気を燻らせている。


 その白いカップに入った液体を指さし、常時ジト目の魔法使いは、胡乱げに問いかける。


「ほんとに味するの、それ」


「え? するよ? 普通に。ここの味は、その辺の食べ物屋さんより、凄いんだから」


 一口飲む?

 と進めるフェルマータに。

 手で、いらねえ、と合図するマナ。



 そう?美味しいのに、と言って。

 フェルマータが、熱々のミルクティーをふーふーしていると。

 マナが口を開く。


「それにしても、良く見つけてきたわね、あんな子」


「ローリエちゃんの事?」


「ええ」


「うん、何かこの前の夕立の時にさ、たまたま駆け込んだ軒下でね。一緒に雨宿りしてたんだ。そこでね……」


「ふ~ん。カナデには似合わなさすぎるドラマチックね」


「うるさぁい。中のヒトのことは良いでしょ、今は!」


「いつも、私の事、先生っていうからよ」

 




「それは置いといて。――で、マナ先生は、どう思う? ローリエちゃんの事」



 マナは少し思案する。

 少し前の、ローリエというキャラクタ―の戦いぶりを、思い出すかのように。



「そうね……。おそらく、構成は、ボス向けとは言い難い感じかしら。どちらかというと、殲滅戦向けね。あと、プレイヤーが、パーティ慣れしていないように感じたわ」


「うんうん、そうだね。私もおおむね同感。今後はなるべく一緒に狩りに出て、慣れていってもらいましょ」


「それが良いわね。――ああ、そういえば、ロリの総SP幾つ?」


「さぁ?」


「さぁ、って。あなた、看破できるアイテム持っていたじゃない」


「『赤のメガネ』でしょ? このまえ試したけど、看破阻害の装備着てるみたいで、何も見えなかったのよ」


「看破阻害? ……PK対策用のOP(オプション)ね」


 看破阻害は、相手の強さが解らなくなる事で、PKが警戒して襲いづらくなるという効果が確認されている。

 それで襲ってくる輩は、相当高SPの自信家野郎か、慢心イキリPKくらいだ。

 

「看破阻害って、珍しいわよね?」


「まぁ、ね。モブ用とは言い難い。――ということは、ロリはPK対策(そっち)がメインの構成かしら?」


「かなぁ? 今日、凄かったもんね。『いきなり、先生に蹴りかましたww!』って思ったら、まさか先生がPKにからまれそうになってたなんて。ロリちゃん、良く気付いたわ」


「うん、今日は助かった。――ところで、あのときフェル笑ってたでしょ」


「あ、気づいてた? そうそう。まさかの裏切り、と思ったら、PKがアホ面で吹き飛んで行ったのが見えて、思わず中の人が笑っちゃってて、助けに入るのが遅れちゃった」


 フェルマータは口に手を当てて意地悪くくすくすと笑う。


「だろうと思ったわ。何にせよ、フェルは、今度から狩場では念のためにクレボヤ使っておいて」

 クレボヤとは、【視覚強化/千里眼付与クレヤボヤンス・オブ・ライト】という光属性の強化魔法で、より遠くが見えるようになったり、視覚的に隠蔽されている物、NPC、プレイヤーを見つけやすくなるという効果がある。

 

「言われなくてもそうするつもりよ。余ってるSPで【視界強化(サイト)】のパッシブを上げるかも、検討するわ」

 


 そして、フェルマータは続けて先生に聞く。 


「で、ロリちゃんは、合格?」

「当然でしょ。あの感じだと少なくとも60Kはあるはずよ。構成的にも、『紫系』の大精霊サートゥルニーへのアドバンテージもあることだし」


「よかった。ダメって言われたらどうしようかと思ったわ。……ロリちゃんがログアウトする時に、『またね』って言っちゃったし」


「言わないわよ」

 

「でも、もう一人くらい欲しいわね、ボス向きの子が」


「そうね……」


 マナは、以前大精霊にフェルマータと挑んだ時のことを考える。

 正直、二人では太刀打ちできなかった。

 防御タイプのフェルマータは生き残れるのだが。

 耐えれても、倒せないのでは意味が無い。

 今、必要なのは、火力なのだ。

 

 そのことを考え、マナは言う。 


「今のままだと、ボスの討伐に必要な単体火力がちょっと足りないわ。だからフェルは引き続き、メンバー探しをお願い」

「りょーかい。先生は、今後のプラン考えておいてよ。新しい、狩場とかね」


「解ったわ。でも当面は、SP稼ぎついでに、ロリとの連携を考えましょ」



 そんな感じで。

 フェルマータとマナは、1時間ほど雑談して、ログアウトしていたのだった。

 

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