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 全身に傷を負い、満身創痍の魔物達。

 

 ローリエの魔法と落下ダメージに耐えたタフな連中が。


 ターゲットを変え、フェルマータに殺到する。

 そんな何種類もの魔物達に混じり、7体のオーグジェリーは健在で、エルダートレントと言う超大物も混じっている。


 そのすべてが、一人のドワーフを殴りつけ、魔法を浴びせ、デバフを仕掛けてくる。



「ご、ごめんなさい、私……」

 

 今にも、もう辞めろと。

 もうパーティに必要ないと、言われるのではないかと。

 戦々恐々であり。

 自分のしでかしたことを悔い、謝罪するローリエだが。


 それよりも。

 目に映るのは、魔物たちにもみくちゃにされているフェルマータの小さな背中だ。


 


 自分の心配よりも。

 今は、フェルマータを助けなければいけない。

 特に、強酸攻撃をしてくるオーグジェリーは、武器や防具を溶かし、防御力に凄まじいデバフをかけてくる難敵だ。防御力が命のフェルマータにとっては天敵の筈だった。

 

 風の魔法使いの真似事をしている場合ではない。

 全力で、魔物を叩きのめさねば――。


 今にも、敵陣に飛び込もうかと思ったローリエ。


 けれど、よく見るとフェルマータのHPにはまだ余裕が感じられる。

 数多の魔物に殺到され、様々な攻撃を浴びているというのに。

 オーグジェリーのアシッドブレスを何度も浴びているのに。 


 フェルマータに慌てる様子はない。


 それというのも。

 ここを普段の狩場にしていると言っていたフェルマータの対策が、完璧だからだ。

 

 武具破壊不可の効果を持つ魔銀(ミスリル)は、酸で溶けたりせず、甲冑もハンマーも健在だし、

 自動回復のパッシブスキルを積んでいるからか、ダメージと回復が拮抗して結果的にHPも減っていかない。

 

 さらにフェルマータは「『武具効力保護(メンテナンス)』」のスキルを使って、防御力減少のデバフも即座に無効化する。



 そうして、ローリエの背後から。


「『炸裂魔弾(マジックボム)』!!」

 

 

 純粋な魔力のみで編まれた、炸裂弾が、弧を描いて飛来する。

 無属性の中級攻撃魔法だ。


 それが、敵陣の中央に着弾すると、ずどん、と大音量の重低音が響き。

 魔力の塊が爆散して、周囲一帯に破壊力を振りまいた。


 その威力は、サイクロンの比ではなく。

 生き残っていた魔物の大半を消し飛ばした。


 


「すごい……」


 なんて威力なんだ、と、今度は、ローリエが驚く。

 パーティプレイは初で、純魔法使いの魔法を間近で見るのも、初めてだ。

 しかし、今しがた『炸裂魔弾(マジックボム)』を行使した自称魔法使いは、FAI極だという。

 そのことを思い出せば、合点はいく。


 目算では、おそらくローリエの3倍ほどの魔法攻撃力を有しているだろう。

 

 

 さらに、打ち漏らした残党を、マナは初級無属性魔法の『魔弾(エナジーボルト)』で、順番に殲滅しはじめる。DEXが低いからか、一発を準備するのに時間を要する分、間隔には開きがあるが、その大威力は、戦車の砲弾のように強力無比だった。


 ローリエは、それに倣い。

 失態のリカバリーも兼ねて、残党狩りに参加する。 


「『空圧弾インビジブル・ブリット』!!」

 

 風属性の初級魔法――。

 音速で撃ち出された超圧縮空気の弾丸が、近くの魔物に命中して、ドォン、と周囲に小規模な衝撃波を発生させ、その威力で、撃滅する。


 当然、一発の威力は、マナに遠く及ばない。  

 だから、ローリエは装填速度の速さを活かして、連射する。


 

 そうして、ついに、魔物の群れは、居なくなった。 


 今更に、フェルマータが応える。


「ロリちゃんなんで謝ってるの?」


「え……?」


「すごいのはそっちよ? こんなに広範囲の魔法持ってるなんて。先生じゃ、せいぜいさっきヤツが一番広い魔法なのに」


「あと、詠唱(キャスティング)も早くて羨ましいわね。――あと、フェルは私の事、先生って言わないで!」



 失望されたかと思っていたら、思いのほか高評価だったことに、ローリエは驚く。



 しかしながら――。




 マナは言う。


「さて、あとは、あのでか物ね」


 そう。

 群れは居なくなったのだが。

 

 実は、大物が1匹健在なのだ。


 遠くから魔法でフェルマータを狙い続けている魔物。



 巨大な樹木型モンスターの、エルダートレントだ。

 しかも植物系だけあって、木属性の魔物であり、風耐性も持っているので、木属性魔法も風属性魔法も被害が半減してしまう、ローリエにとっては、めんどくさい相手だ。

 

 ソロで森にこもっていた時は、こういう植物系は大人しく物理攻撃で対応していたが。

 風の魔法使いを名乗っている今、その選択肢は躊躇われる。



 ローリエが木属性の敵と相性が良くないことは、ベテランであるフェルマータもマナも理解しているようで。


「ロリちゃん、こいつは私たちに任せて」



 ……ちょっと悔しいけれど。

 

 ローリエは、素直に頷いた。 

 

 本当は、『私も一緒に戦います』と言いたいところなのだが。




 ローリエには一つ、やらなければならないことが出来たから。

 仕方が無かったのだ――。





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