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 予定も違えば、覚悟していたこととも違う。

 

 全然知らない人が、もう一人参加するなんて聞いてない。


「あッ、おッ、アッ……えっ、とォ……」


 


 挨拶?

 抗議?

 帰る?

 ログアウト?


 ど、どしよう?



 挨拶 ⇒ 無理!

 抗議 ⇒ 絶対無理!!

 帰る ⇒ 人生オワル

 ログアウト ⇒ 現実逃避しに現実に帰ってどうする!  




 どどどど、どうしたら!



 ローリエが、どうしたらいいのか、解らないでいると。

 

 フェルマータが言う。


「こっちは、私のパーティメンバーの自称魔法使いの『マナ』よ」


 ぱーてぃめんばー!?

 『じゃあ私は、二人目ではなく三人目?』とローリエは思う。

 

 確かに、他にメンバーが居ないとは聞いていなかった。居るとも聞いていないけど。


「こ、こんに、ちわ」

 

 ローリエが挨拶を絞り出す。


 ――けど。


「……」

 

 自称魔法使いの少女は、挨拶をするでもなく、席から立ち上がるでもなく。

 ただ、ジットリとした視線で、ローリエのことを見つめた。

 

 まるで、品定めするような凝視に。 


 うっ。

 と、ローリエは、小さい声を漏らす。


 見られることにはなれていない。

 しかも知らない人だ。

 ローリエは、そっと、視線を外した。


 そのまま流し目で、自称魔法使いを見る。

 


 魔法使いというだけあって、その姿はいかにもそれっぽい。

  

 ケープが付いた真っ黒なローブの隙間からは、下に着こんでいるゴシックでフリルが多めの服が見えているし。

 サイハイソックスも、編み上げブーツも、裾の広がるドレスの袖も、全てが黒い。

 しかしながら、頭にかぶった帽子は良くある魔法使いの帽子では無くて、先端に★のアクセサリーのついた、二股のピエロのような帽子だ。ジェスターキャップとでも言おうか。二股のヤツだ。

 勿論それも真っ黒で、帽子の額の所に宝石が埋まっている。


 そんな『黒』の中に、浮かび上がるのは雪のように『白』い肌と、流水のように滑らかに輝くゆるふわくるくるロングの『銀』髪だ。

 

 それほど高くない背丈や、華奢な見た目からの推察では、ホムンクルス系の種族だろうか。

 マナ、という魔法の源たる元素、魔素(マナ)と同じ名前を付けていることから、魔法に特化したビルドかもしれない。


 ローリエが、視線を戻すと再びマナと目が合う。

 宵闇から黄金の太陽が覗くような、特徴的な黄昏色の瞳が、今なお、ローリエを捉え続けている。


 そうしてようやく、その口が開く。


「こんにちは。私はマナ」


 簡潔な挨拶。

 と思いきや、マナは「さっきぶりね」と付け加えた。


 さっき……?


 ローリエは、お店に来るまで誰とも会っていない。

 知り合いと呼べるのはフェルマータだけだし、他の誰とも話をした覚えは……――。


 はっ!

 間違い電話のヒト!?

 ローリエの、はっとした表情は、気づいたと判断するには十分だったろう。 

 

 マナは、薄く微笑むと、「よろしく」と言った。

 

「あっ、は、ッ、はい!」


 

「じゃあ、ロリちゃんもこっちに座って。私たちが、あなたをメンバーに加えて『やりたいこと』をお話するわね」



「は、はいッ」


 そうして、ローリエのフレンドリストに、新しいフレ登録要請が飛んできたのだった。



 一人かと思ったら、二人もパーティメンバーというフレンドが増えた。

 相変わらず他人は苦手だけれど、なんだか、少しづつ、『前進』を感じるローリエだった。



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