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成長痛

掲載日:2022/10/13


「君がいなくなったら死んでしまう」

そう言っていた君が、私の知らない女の子と

並んで歩いていた日の光景が

突然、脳裏にフラッシュバックした。

私はあの時の絶望に身を震わせる。


あの時の絶望は君の言動なんかじゃなくて

思ったより、その光景を悲しく思わなかった、

そんな自分だった。


海に行けば、ノスタルジックな小説を読めば、

何かが変わるかもしれないと思った。

何も変わらない日々は続く。

学校の授業をサボって好きなバンドのライブに行って

ロリィタに着替えて夜行列車に乗った。

そんな映画のワンシーンみたいな自分に

酔いしれた青い春、あの頃に戻れたらなと思う。


大抵、そんな主人公には素敵な恋人が

いるのだろうけれど私の周りには

恋愛と性欲をぐちゃぐちゃにしてしまって

拗らせている同級生しかいなかったし

だからと言って年上に

憧れを抱いていた訳ではなかった。

また、父性欲しさに自分を切り売りしている

女の子を見て、心底軽蔑していた。

私はそんな自分も軽蔑していた。


終点で降りた先に描いていた物語は何もなくて

世界は思ったよりつまらないことを知った。

戻りたくないけれど戻った方がマシだった。

日常に溶け込めないなんて普通の悩みを

大事に抱きしめていた。

制服とカッターと錠剤が私の全てだった。

友達なんて1人もいなくて

死にたいを適当に馴れ合った

一瞬だけの繋がりを何度も繰り返した。

ああ、この一瞬を全てにして

これを言い訳にして電車に飛び込んでみたい。

女子高生という付加価値がなくなったら

私には意味がなくなってしまう。

なるべく早く人生に絶望しておく必要があった。


他人に期待をしない自己防衛が強くなってしまって

友達ができない代償に

人間関係で傷付くことがなくなった。

あんなに積み重ねていた私たちの関係は

一瞬で壊すことができる。

最高に意味がなくて面白かった。

唐突に全てを終わりにしてしまうのが私の趣味で

そんな自分が気持ち悪かった。


ただ、人生の目的を1つに絞った人間は強い。

そして、それが壊れた瞬間に誰よりも弱くなる。

私がそうだった。

その唯一の希望が壊れた瞬間、私は死んだ。

あれからの数年、今の人生は

あの時のおまけにすぎない。

だから、いつでも終わりにできる。

全てあの時の副作用だった。

強い幻覚で守られていた私は

この世界に放り出されて困惑する。

初めて直視した世界は痛かった。

こんなに汚れていたなんて知らなかった。


だから誰かの壊れた瞬間が見たかったのだろうけれど

当然、あの時の私より

絶望してくれる訳がなかった。

そんなことで自分の価値を知ってしまって

また、誰かに消費される。

こんなに必死になって縋りついた君は

案外、素っ気なくて、もどかしい。

私は君より君のことが好きだったはずなのに

やっぱり傷付くことができないままだ。


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