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影踏み一族は舞う!  作者: 市川甲斐
5 一瀬の影
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(3)

 再び竜弥の「部屋」に戻ると、それぞれ夕飯の弁当を食べてダラダラとしていた。エアコンとヒーターもあるので、部屋の中は十分に暖かい。年末の特番の歌番組やコント番組を見ながら笑ったり話をしたりしていると、あっという間に時間が過ぎていく。途中、竜弥の母が帰宅した時に一度様子を見に来て、父の方も酔ったご機嫌な様子で「女子はいないのか」と言って笑って出て行った。


 夜も10時を過ぎて、部屋に布団を敷いた。3つ並んでは敷けないので、2つを並べて、その頭の方にもう一つを横に敷く。2つ並べた布団に僕と葵が、残りに竜弥が寝ることになった。


 それから歯磨きのために3人で庭に出た。冬の夜空はよく晴れていて、気温も相当下がっているようだ。歯磨きをして庭にある水道で口をすすぐと、目が覚めるような冷たさだ。急いで部屋に戻り、ヒーターのついた部屋で体を温め直す。


 3人がそれぞれの布団の上に座り、そろそろ寝ようとしていた時だった。


「あのさ、葵。聞きたい事があるんだけど」


 竜弥が急に尋ねる。


「葵って、薬袋と付き合ってるのか?」


 急に振られた葵が、ビクッとしたのが分かった。


「な……何を言ってるの? そんな訳、ないじゃん」


「この前、セルナの店の近くで、楽しそうに2人で歩いているのを見かけたけど」


「えっ……そ、そうだったかな」


「それって本当?」


 僕も驚いて葵の方を見た。確かに、薬袋は葵のおかげで音楽部に戻ることができたし、あの時も何となく彼らは良い感じに見えた。あれ以降、藤川のこともあってほとんど薬袋の事を気にしていなかったが、その間に葵が彼女と付き合い始めていてもおかしくない。


「正直に言えよな」


「あの……まあ、付き合ってる……のかも」


 何だよそれ、と竜弥が笑った。


「でも……彼女の事を好きなのは確かだと思う。それに、彼女も僕を好きだといってくれた」


「何だよ。それって、しっかり付き合ってるじゃねえか」


「すごいね。何か、羨ましい」


 そう言った僕に、竜弥は顔を向けてきた。


「あれれ? そう言えば、優馬こそ、どうなんだっけ?」


 彼はニヤッと笑って言った。その顔にドキッとする。


「お前、何かあったんじゃないのか?」


「え……な、何のこと?」


「彼女のこと」


 それを聞いて急に胸がドキドキしてきた。


「そ、そんな事……ある訳ないじゃん」


「いいや。前に、お前に図書館で会った時に、お前は何か隠しているようだった。それで怪しいと思って、お前を追いかけたら、見失った辺りにあの人がいた」


「あの人って?」


 葵が尋ねると、竜弥ははっきりと言った。


「御影寧々さん」


「ええっ!」


 葵が叫んだ。


「いや、俺もまさかとは思ったけど、あの時、お前に図書館で会った時も、寧々さんのことをチラチラと見てたよな。向こうも何かお前の方を見ているようだったし」


「いやいや! それは誤解で……」


 必死に否定しようとしたが、直接「影踏み」のことを話す事ができないので、説明するのに困った。結局、僕の父が彼女の母が同級生で、昔からよく知っていたので、御影神社に挨拶に行った時に知り合いになっただけ、ということで許してもらった。寧々の事を好きか嫌いかと問われれば、もちろん「好き」ということになるが、「付き合っている」というのは絶対に違うので、それだけは強く否定しておいた。

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