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影踏み一族は舞う!  作者: 市川甲斐
3 薬袋の影
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(2)

 陸上部での筋トレや走り込みの練習を終えて、自転車で帰る途中だった。薬袋という生徒の様子がやや気になって、スポーツドリンクを買ったスーパー『セルナ』の駐車場で、珠洲にメッセージを送った。御影神社での修行をするようになってから、彼女とは連絡先を交換しているが、普段からやり取りが多い訳ではない。スポーツドリンクをそこで飲み始めてしばらくして、ポケットに入れていたスマホが振動したので、手に取ると珠洲からの電話だった。


『どうして優馬は薬袋さんの事を知りたいのよ?』


 開口一番、彼女はややイラついた感じでそう尋ねてきた。神社で修業するようになってから、学校にいる時とは違って、彼女はよく話すし、かなりストレートにモノを言う。


「あの……今日、葵と一緒に歩いてたら、僕達の前を陰気な感じで歩いていたから、何かちょっと心配になって。他の生徒にも無視されているようだったし、あのお人良しの葵さえも、同じ音楽部の子だっていうのに軽く挨拶しただけで、避けてるみたいだったから」


『ふうん、そういうこと。……まあ、それは仕方ないかもね』


 珠洲はすぐにそう答えた。さっきまでのややイラっとした感じが無くなった気がして安心する。


『優馬は知らないと思うけど、原因はあの子じゃなくて、あの子の父親』


「父親?」


 そう、と答えた彼女は、自分が知っている限りの情報を教えてくれた。



 薬袋由芽の父は、小さな建設会社を経営していた。雇っている人も多くは無かったようで、自ら工事現場にも出ていたらしい。


 しかし、今年の夏休みが始まる頃に、彼女の父が運転するトラックが道路を歩いていたお爺さんをはねてしまった。その老人は最近痴呆が進んでいたらしく、赤信号だったのにフラフラと渡っていたところを、彼女の父がよけきれずに事故になってしまったようだ。


 彼女の父はすぐに警察に連絡し、お爺さんは救急車で病院に運ばれたが間もなく死んでしまった。それで彼は逮捕され、テレビや新聞にもその名前が出てしまい、誰からともなく、高校の生徒達にもその事実がかなり知れ渡ってしまった。


『2学期からは学校も休みがちみたいでね。元々、口数が少なくて、友達も少なかったようだけど、登校してもいつも一人でいるらしいわ。まあ、何となく近づきがたい雰囲気は分かるけど』


「そうなんだ……それで、葵も避けてるのかな」


『それはそうよ。悪い事に、その亡くなったお爺さんの孫が、音楽部の2年生にいたの。秋山っていう先輩だったかな? だから音楽部の子はなおさら近づきにくいんじゃない?』


 珠洲の話を聞いている限り、彼女自身が悪い訳では無い。しかし、あのお人良しそうな葵まであのように避けているのでは、校内で誰も彼女の味方にはならないだろう。


「それって、何とかならないの?」


『ハア? どういうことよ』


「僕だって転校して馴染めるかかなり緊張して来たんだけど、みんなに上手く仲間に入れてもらったから助かったんだ。だから、何となく彼女の気持ちが分かる気がしてさ。誰か声を掛けてあげるとかできないのかな」


『あんた偽善者? 何でそんなことまでしないといけないのよ。優馬みたいな転校生の対応とは違うわ。転校生ならみんなに最初から興味を持ってもらってるけど、彼女の場合は最初からハブられてるんだから。これってたぶん、時間が解決してくれるのを待つしかないんじゃないの』


 珠洲は仕方ないというような感じで答えた。しかし、あの彼女の俯いて歩く様子を思い出すと、僕はやはり気になってしまう。それにしても、面識のない僕がいきなり彼女に話しかけるのも不自然だし、むしろ不審に思われるだろう。そうすると、やはり、面識のある葵を頼るのが良さそうだと思い、明日、彼に相談してみようと思った。

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