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35 想いを告げる

 夜になり、アレッタの体調が戻ったことをユースに喜ばれながら楽しくディナーを共にした後、ユースを夜の散歩に誘った。


「どこに行きたいんだ?」

「アルストロメリアの花畑でもいい?」

「ああ、もちろん」


 白に紫のスポットが入ったアルストロメリアは、今日も夜風に吹かれてそよそよと健気に揺れている。

 改めて花畑を見渡すと、光苔がところどころに飾られていて幻想的に淡い光を放っていた。


「あれ、こんな風に光ってたかな?」

「アレッタが寝込んでいる間にジェレミーが光苔を設置していた。彼は最近ますます庭師が天職のように感じているらしい、なんでも人間を芸術的に飾ったことで仕事のやる気に火がついたのだとか」

「えっ、そうなんだ……その、飾られた人間はどうなったか知ってる?」


 テオドールとカロリーナはあの冷たい地下でびしょ濡れのまま、お花まみれにされて放置されたのかな? 妖精さんにやった仕打ちを考えると自業自得なような気もするけれど。


「ああ、あの後家臣らしき人間が迎えにきていたな。花で編まれた姿を目撃して妖精の祟りだなんだと騒がれていたが、無事に保護されたようだ」


 あのまま風邪をこじらせて誰にも発見されずに……なんてことにはならなかったらしい。それはさすがに可哀想すぎる気がしたので、アレッタはホッと息をついた。

 ユースは腕を組みながら話を続ける。


「彼らがしたことは人間界にいる妖精達に情報共有した。彼らの危険性とやったことをマリー達に通達したら、その日のうちに王都にいる全妖精に広まっていたな。それで今、妖精達は君の敵討ちと称して彼らに地味な嫌がらせを行なっているらしい……」


 ユースは笑えばいいのか注意するべきなのか、と苦笑している。


「お茶を飲もうとすれば水がひとりでに溢れ、土の上を歩くと落とし穴につまずき、視界に光がチラつくためよく目を覆っているらしい。あと風に煽られて物が飛んできたり、指先が時々痺れたりと生活に支障が出ているな」

「わあ、それ誰がやったんだろう……」


 マリー、リリー、ポピーをはじめ、仲良くしていた妖精達の顔が次々に頭の中に過ぎる。


「人間達は妖精達の行いを見て、妖精に手を出すと大変なことになると震えている。これで妖精を捕まえて利用しようとする輩が減るといいんだが」

「あんまりやりすぎたら退治しようとか言われちゃうかもしれないし、私止めにいくわ」


 ユースもその意見には賛成らしく頷き返した。


「ある程度のところで止めた方がいいと俺も思う。君のされたことや同胞であるプリーケに行った仕打ちを考えると温いとも思うが、憎しみは新たな争いの芽を産むだけだからな」


 どうやら人間界に行くべき理由がもう一つできたらしい。アレッタは一度深呼吸をすると、改めてユースに向き直った。


「ユース、私ね。前に進むためにも一度人間界に行きたいの。家族のこととか妖精さんのこととか、一度ちゃんと話をしないといけないと思ってる」

「ああ、そうだな」

「それでね、その用事が終わったら、の話になるんだけれど……」

「……どうした?」


 軽く首を傾げるユース。アレッタは覚悟を決めてスッと息を吸いこんだ。


「私、あなたのことが好き……ユースと一緒に妖精界で生きていきたい。私をユースのお嫁さんにしてください!」


 ユースは突然の申し出に一瞬固まった。そしてギクシャクと手を動かすと、アレッタの両肩に手を置く。


「ほ、本当かアレッタ。つまりそれは、俺の求婚を受けてくれるということでいいんだな?」

「ええ」


 返事をするやいなや、ユースはアレッタの背をかき抱いた。勢いよく抱擁されてアレッタの背がしなる。

 こんなに強引なユースははじめてで、アレッタはドキドキと鼓動が早くなる。


 けれどユースの胸元に手を当ててみると、アレッタ以上に彼はドキドキしているらしい。早い鼓動を聞いているとアレッタの頬もカッカと火照ってきた。


「アレッタ……!」


 ユースはそれ以上言葉にならないらしく、アレッタを強く抱きしめた。アレッタも彼の背に手を回して、見た目より筋肉があって固い体にうっとりと身を寄せた。

 数分してやっと体を離したユースは、紅潮した頬のままアレッタに問いかける。


「すまない、感極まってしまった。結婚する前にやりたいことがあるといっていたな、それが終わってからの話だというのに」

「ううん、いいの。その‥‥…妖精さん達の暴走も止めなければいけないけれど、まずは家族に対しての心残りを先にどうにかしないと、踏ん切りがつかなくて」


 アレッタが躊躇いがちにそう口にすると、ユースも真面目な顔で首肯した。


「ああ、そうだろうな。しかしアレッタが一人で人間界に戻ることは危険だ。俺も行っていいか?」


 ユース、着いてきてくれるんだね。心強いな。


「もちろん、私からもお願いするわ。たとえ反対されたって私の気持ちは変わらないけれど、なにも言わないままいなくなるよりはちゃんと話をしておきたいの」

「そうだな。幸いアレッタのために開発した新魔法で、父上に直接話をすることができる。アレッタを妖精にすることは反対されるかもしれないが、君の父上には俺からも話をさせてくれ」


 新魔法……ああ、あのユースが人間サイズに大きくなる魔法のことね! あれはびっくりしたなあ、ちゃんとテオドール殿下とカロリーナ様にもユースの姿が見えていたもの。


「あ、ひょっとしてあの魔法って、私がユースの求婚をユースが大きくなったら受けるねって言ったから使ったの?」


 妖精界では妖精さんが大きくなるなんて思ってもみなかったから、最初に会った頃にそんな約束をしたんだったね。

 あの後いろいろと衝撃的な出来事がありすぎてすっかり頭の隅に追いやられていたんだけれど、ユースはちゃんと覚えていてくれたんだ。


「ああ、今回人間の王子の前で使ったのは妖精をあの様に利用するなと伝える牽制のためだが、もともとはアレッタとの約束を叶えるために練習していた魔法だ」

「やっぱりそうなんだ、ちゃんと約束を覚えていて叶えてくれるなんて嬉しいな」


 感動するアレッタをチラリと横目で確認するユース。なに? どうしたの?


「……あの魔法は残念ながら俺一人の力ではなくルーチェ達の力を借りている状態だが、君の望んでいた大きくなったらはあれで叶えられただろうか? まだ触覚は再現できていないのだが」


 どこか不安そうに口にするユースの生真面目な返答に、アレッタの胸はきゅんと締めつけられる。


 どうしよう、かっこいいのに可愛い……! アレッタはユースの背にもう一度腕を回して抱きついた。


「ありがとうユース! あの魔法があればお父様にユースのことを紹介できるし、きっとわかってもらえるわ! 本当にありがとう」


 ユースはホッと肩の力を緩めるとアレッタを優しく抱き返した。


「それならよかった。では明日の昼食後にルーチェ達を招集して君の屋敷に向かうということでいいか?」

「うん、私はそれでいいけれどユース達の仕事は大丈夫なの?」

「問題ない、アレッタの家族との顔合わせが優先事項だからな」


 こうして明日の昼には人間界に行くことが決まった。その日のディナーではアレッタの家族がどのような人かが話題の中心となった。


 主にお父様がどんな人で、お仕事や普段の生活、食の好みはどういうもので、私が普段どんな感じで接しているかを聞かれたのだけど。

 ユースも私のお父様に会うのは緊張しているのかな?


 ユースはお父様の母親の姉が妖精界に行って帰ってこなかった話を聞いて少しだけ思考を巡らせていたけれど、それ以外は穏やかに私の話を聞いていた。

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