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25 マイムとの再会

 次の日、午前中いっぱいをそわそわとした気分で過ごしたアレッタ。

 午後になってひょっこりマイムが顔を出すと、部屋の入り口まで駆けつけて出迎えた。


「マイム、久しぶりね! 元気だった?」

「アレッタ様! 私は元気でしたよ。あの、でもなにか私に対して怒ってらっしゃったりとか、本当にしないんですか?」


 はにかみ笑いを見せながらもおどおどとアレッタをうかがうマイムに、アレッタは首を傾げた。


「えっ、どうして?」

「あの、私はアレッタ様に嫌がられたので別の仕事に回されることになったって聞いて、今までタチアナ様のところに戻されて働いていたんです。でも先ほど殿下に聞いた話だと、どうやら私はお休みをとっていたことになっていたようでして」


 お互いに顔を見あわせて仲良く首を傾げるアレッタとマイム。そこに部屋の外からルーチェが顔を出した。


「なんかおかしな話になってるね? 気になるから私も混ぜて! ねえ、ちょっと抜けていい?」

「いいけど、後で俺にも教えてよ?」

「おっけ~」


 ルーチェはもう一人の護衛に声をかけて、部屋の中に入ってきた。


「で、どういうこと? よく聞こえなかったからもっかい頭からよろしく」


 ルーチェに水を向けられたマイムは話をしはじめた。


「あの日の朝、メイド長から今日はタチアナ様のところに行くように言われまして。その、アレッタ様が私のことを気に入らないので、メイドを替えたいと……そうおっしゃっているとのことで……」

「ええっ!? そんなわけないじゃん! アレッタはずっと、マイムはまだ帰ってこないのかな、寂しいな、お休みいつまでかなって気にしてたのに!」

「そうなんですか?」

「う、うん……」


 あまりにも赤裸々にルーチェが心境を語ってしまって気恥ずかしかったが、その通りなので小さな声で肯定した。


 マイムはホッと安堵のため息をついた。


「よかった、じゃあアレッタ様は私を嫌いになったわけじゃなかったんですね」

「そんなわけない! またマイムに会えて嬉しいよ、これからも一緒にいてくれる?」

「はい! 私のほうこそよろしくお願いします」


 仲良く手を繋ぐ主従に、ルーチェも一緒になって喜ぶ。


「そっか、誤解が解けてよかったねアレッタ、マイム! でもだとすると、なんでメイド長はそんな指示を出したんだろう?」


 真面目な顔に戻ったマイムは、居住まいを正して話を続ける。


「そう思われた殿下は、私との面談中にメイド長を呼びだしたんです。するとメイド長は、その時はマイムを移動させるように指示を受けて、それを疑問にも思わずに指示通りにしてしまったって言うんです」

「え? メイド長に指示できるのって、殿下とかロイス様とか偉い人だけじゃんね?」


 ルーチェが疑問に思ったことを尋ねる。マイムはうーんと悩むそぶりを見せた。


「それが殿下でもロイス様でも上司でもない、上背のある茶髪の妖精に指示を受けたらしいんです」


  マイムはそっと声を潜める。


「どうやらメイド長は幻惑の粉を使われたらしく、その時の記憶が曖昧で顔もよく思い出せないそうなのですが……しかも殿下に問われるまで、その出来事を疑問にも思わなかったそうです」


 上背のある茶髪の妖精? プリーケの言っていた背の高い茶色い髪の男妖精と一緒だわ。

 だとすると同じ人物がメイド長と私の両方に毒を盛ったということなのかな。


「マ? メイド長もなんか盛られてたの? ヤバくない?」


 マイムはゴクリと唾を飲みこみ深く頷いた。


「ヤバいですよ。ヤバヤバです。妖精界きっての大事件ですこれは」

「だよね? ひゃーっこんなヤバい話、人間界の噂話でしか聞いたことないよ! どういうことなの!?」


 ルーチェが興奮して手足をバタバタさせている。そんなルーチェを気にしながらもマイムは話を続ける。


「今、茶色髪の背の高い妖精は順番に呼びだされて事情聴取を受けているそうです。あの、ルーチェさん……これ、ソルさんも呼ばれますよね?」


 ピタリとルーチェの動きが止まる。ぐりんとマイムに振り向いたルーチェは、先ほどと同じ言葉をより深刻な響きで繰り返した。


「どういうことなの!? なんでソルまで!?」

「だってソルさんもメイド長の言っていた犯人像に当てはまっちゃうじゃないですか。茶色髪の背の高い妖精さんってあんまり花と水の国の王都に住んでないですし。王宮に出入りできる人だとほんの数人しかいないです」

「だからってソルがそんなことするわけないじゃない!」


 ムキになるルーチェにマイムはたじろぐ。


「わ、私はわかってますよ、ソルさんがそんなことしない人だって!」


 アレッタも胸元でギュッと手を握りしめながらソルを弁護する。


「そうね。ソルが私になにか仕掛けたいなら、ほかにできるタイミングはたくさんあったはずだもの。ユースだって元護衛だったソルの人柄を知っているはずだから、そんなに心配することはないはずだよ」


 アレッタもなだめると、ルーチェはやっと落ち着いたようで肩の力を抜いた。


「そ、そうだよね。心配することないよね。ソルがそんなことするわけないし。もー、マイムってば驚かさないでよ」

「ルーチェさんが勝手に驚いたんじゃないですか。どちらかというと私の方が驚かされちゃいましたよ?」


 二人ともびっくりしたせいか毛が逆立ったネコみたいな状態になっているところを、アレッタが仲裁する。


「まあまあ、ルーチェもマイムも落ち着いて。そうだマイム、せっかく帰ってきてくれたんだしまた美味しいお茶をお願いしてもいいかな?」

「はい、アレッタ様。喜んで」


 マイムはアレッタの申し出が嬉しかったようで花が咲くような笑顔をみせた。ルーチェはパッと扉の方を振り向く。


「あ、いっけない。そろそろ持ち場に戻らなきゃ。じゃーね、アレッタ、マイム。もしなんかあったら呼んでね!」

「わかりました」


 マイムの返事と共にパタリと扉が閉められる。お茶を淹れてくれたマイムといろいろ積もる話をしながらその日は過ごした。


「それにしてもマイムがタチアナ様のところにいたなんて、全然気づかなかったよ」

「タチアナ様の住むところは宮殿の裏の方ですしね。宮殿内も広いので内向きの仕事をしていたら全然会わなかったですね」

「そっか。確かにあのダリアの花畑もちょっと遠かったしね。ところでマイムはプリーケを知ってた?」

「いいえ、私王宮に勤めて長いですけど、聞いたことのない名前なんです。その方はすごくうっかりさんで、それでアレッタ様にうっかり毒入りクッキー持っていったって聞いたのですが大丈夫でしたか?」

「私は平気だよ、ジェレミーが止めてくれたの」


 話をしているうちにすぐにディナーの時間になったので、ルーチェと共に晩餐室まで移動した。

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