表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/18

9.

「悪いのは君だ。こんなことになったのは、全部君のせいだよ。僕が彼女を救うには、こうするしかないんだ!」


 薄暗い部屋の中、婚約者であるメイソンが私に銃口を向けていた。

 いつもと同じやり直し地点で、いつもと同じセリフをメイソンが言った。

 しかし、今回の私は、いつもと同じように銃弾を避けるつもりはない。


 私は、メイソンに背を向けた。

 そして、うしろにあった大きな姿見を見た。

 今まで感じていた違和感の正体を掴むためだ。

 違和感を感じたのは、姿見を見た時と窓を見た時だった。

 しかし、どちらもじっくりとは見ていない。

 ほとんど一瞬しか見ていなかった。

 

 私は今回、銃弾を避けるのをあきらめて、割られる前の姿見をじっくりと見ることに決めていたのだ。

 そして、その結果は……。


「さようなら」


 私のうしろから、銃声が鳴り響く音が聞こえた。

 

 私はまた痛みを感じる間もなく、意識を失った。


     *


 何も見えない。

 何も聞こえない。


 私はまた、メイソンに心臓を撃たれて死んでしまった。

 しかし、私は満足していた。

 いや、もちろん、死んでしまったことには大いに不満を感じているけれど、それと引き換えに得られた情報には満足している。


 あぁ、なんてことなの……。

 私が思っているよりも、事態は複雑だった。

 まさかこんな状況に置かれているなんて、思ってもみなかった。

 こんなことになっているなんて、いったい誰が想像できるだろうか。


 ついに、違和感の正体がわかったのだ。


 どうしてメイソンは私の命を奪うのだろうと、ずっと考えていた。

 死ぬたびに、いろいろと考えていた。

 彼はローラを救うために私の命を奪ったのではないだろうか。

 いや、それはありえない。

 他にも何か、私の命を奪う理由があるのではないだろうか。

 そんなことばかり考えていた。


 しかし、私は何もかも勘違いしていた。

 そのことに、ようやく気付いた。

 姿見をじっくりと見て違和感の正体がわかった時、私はやっと理解した。


 今ならわかる。

 メイソンが言っていた「悪いのは君だ。こんなことになったのは、全部君のせいだよ。僕が彼女を救うには、こうするしかないんだ!」というセリフの、本当の意味が。


 彼女というのは、誰のことなのか。

 そして、()()()()()()()()()()()()()


 そう、私は勘違いしていたのだ。

 どうしてメイソンは私の命を奪うのだろうと、ずっと考えていたけれど、まず前提が間違っていた。

 メイソンが殺そうとしているのは、ある意味では()()()()()()()


 姿見をじっくりと見た時、そこに映るのは当然だけれど私、クリスタ・ランドールだと思っていた。

 でも、()()()()()()()()


 私がうしろからメイソンに撃たれた時、姿見に映っていたのは、ローラ・ペンドリーの姿だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ