7.
「悪いのは君だ。こんなことになったのは、全部君のせいだよ。僕が彼女を救うには、こうするしかないんだ!」
薄暗い部屋の中で、私は婚約者であるメイソンに銃口を向けられていた。
今までの周回と同じように、やはりこの地点からスタートのようだ。
改めて見ても、メイソンの顔は、真剣そのものだった。
さっき考えていた通り、彼は気が狂ったわけではないようである。
なら、どうして私を殺そうとするの?
何度考えても、この疑問に行きついてしまう。
しかし、今は考えている暇はない。
「さようなら」
メイソンは、銃の引き金を引いた。
しかし、銃を撃つタイミングも、弾が飛んでくる場所もわかっている私は、ステップを踏んで体をひねり、半身になりながら、何とか銃弾を躱すことができた。
そして、外れた銃弾は、私のうしろにあった大きな姿見に当たった。
当然、姿見はばらばらに割れた。
その割れる瞬間を見て、私はまた違和感を感じた。
そう、まただ。
何度も感じている。
決して気のせいではない。
しかし、相変わらず違和感の正体はわからないままだ。
私は窓に向かって走った。
そして、すぐに床に伏せた。
それと同時に、銃声が鳴り響く。
私が向かっていた窓が割れた。
そして、また私は違和感を感じていた。
感じたのは前の周回と同じく、窓に向かっている時だった。
しかし、今はそのことについてゆっくり考えている場合ではない。
前回は、ここでメイソンに声を掛けられ、振り向いた時には近くに迫られていた。
だから私は、すぐに起き上がり、振り返ることなく窓から外に出ようとした。
しかし、できなかった。
その前にメイソンに撃たれたから、ではない。
ここが、地上何メートルもの地点にある部屋だったからだ。
ここから外に飛び降りれば、間違いなく死ぬ。
それに、おかしい。
私の部屋は、一階にある。
それに、私の屋敷から見える風景は、こんな景色ではない。
月明かりが、部屋の中に差し込んできた。
その時、ようやく私は気付いた。
ここは、私の部屋でも、私の屋敷でもないわ!
今までは、気付かなかった。
部屋は薄暗かったし、何より銃口を向けられている極限状態だったから、気付く余裕もなかった。
今まで感じていた違和感の正体は、これなの?
いや、それは違う。
何か証拠があるわけではないけれど、違うというのは感覚的にわかった。
しかし、今いるこの部屋が私の屋敷ではないとわかっただけでも、大きな収穫だ。
窓から外に出ることは諦め、私は振り返った。
目の前には、銃口をこちら向けているメイソンが立っていた。
月明かりのおかげで、彼の顔がはっきりと見える。
対照的に私の顔は、逆光になってはっきりとは見えないだろう。
「さようなら」
涙を流しているメイソンが、銃の引き金を引いた。