4.
「悪いのは君だ。こんなことになったのは、全部君のせいだよ。僕が彼女を救うには、こうするしかないんだ!」
私は、婚約者であるメイソンに銃口を向けられていた。
……やっぱり、この地点からスタートするのね。
部屋も今までの周回と同じく、薄暗いまま。
まあ、こうなる前は私はベッドで眠っていたのだから、部屋が薄暗いのは当然なのだけれど。
そして彼のセリフも、今までの周回と変わらないままだ。
しかし、気付いたことがある。
さっきは前半の二つのセリフに、怒りを爆発させていたせいで、最後のセリフの意味をよく考えてはいなかった。
彼女を救うには、こうするしかない?
いったい、どういう意味?
それに、彼女っていうのは誰のことなの?
わからない……。
わからないけれど、考えている時間はあまりなさそうだ。
「さようなら」
彼が銃の引き金を引いた。
しかし、撃つタイミングも狙う場所もわかっているので、私はステップを踏んで半身になりながら銃弾を躱した。
うしろにあった大きな姿見が、ばらばらに割れた。
その姿見がばらばらに割れるところを見て、私は何か違和感を感じた。
あれ?
この違和感は、前の周回の時にも感じた違和感だわ。
この違和感の正体は、いったい何なの?
しかし、それを考えるのは後回しだ。
今は、生き延びることが最優先事項である。
前回は、彼の銃を奪おうと特攻した。
しかし、それは失敗に終わった。
今回同じことをしたところで、その結果は変わらないだろう。
となれば、逃げるしかない。
私は窓に向かって駆け出した。
前回はこのタイミングで、うしろから心臓を撃たれた。
なので私は、とっさに床に伏せた。
それと同時に、部屋に銃声が鳴り響く。
窓が割れる音が聞こえる。
私の体は無事だった。
どこも撃たれてはいない。
そして、また私は違和感を感じていた。
姿見が割れた時に感じた違和感と、同じ違和感だった。
その違和感を感じたタイミングは、さっき窓に向かって駆け出した時だ。
しかし、相変わらずその違和感の正体はわからないままだった。
「逃がさないよ」
うしろから聞こえた彼の声に驚き、うつぶせに伏せていた私は振り返った。
気付けば、メイソンが近くに立っていた。
私は床に仰向きに倒れたままだ。
そんな私を彼は見下ろし、銃口をこちらに向けていた。
月明かりが差し込み、部屋の中を照らした。
彼の顔がはっきりと見える。
彼の目からは、涙が流れていた。
「さようなら」
銃声が鳴り響いた。
私はまた痛みを感じる間もなく、意識を失った。