18.
(※メイソン視点)
僕はローラの住む屋敷に到着した。
今日という今日こそ、彼女を何としてでも説得してやる。
玄関のチャイムを鳴らした。
門前払いや居留守をされるかと思っていたが、あっさりとローラの部屋まで案内された。
「メイソン、会いに来てくれて嬉しいわ。私に話があるのでしょう? 何の話かしら? もしかして、クリスタとの婚約を破棄して、私と婚約してくれるのかしら?」
「そんなわけがないだろう。僕が愛しているのは、クリスタだけだ。婚約破棄なんて、するわけがない」
ローラの態度に苛立ちながらも、僕は答えた。
「あら、そう。それは残念だわ。でも、気が変わったらいつでも言ってね。私はずっと待ってるわ。幼いころから、そうしてきたように。それで、話というのは何?」
「そんなこと、言わなくてもわかっているだろう? 君が今日、クリスタにしたことについてだ。もう、あんなことは二度としないでほしい」
「私が今日、クリスタにしたこと? いったい、なんのことかしら?」
「とぼけないでくれ。クリスタのすぐ目の前に花瓶が落ちてきた時、すぐそばに君がいたのを、彼女が見たんだ」
「そんなの、クリスタが嘘をついているだけかもしれないでしょう? あなたは婚約者と私のこと、どっちを信じるの?」
「当然、クリスタに決まっているだろう。彼女が僕の婚約者だから、というだけではない。君はこれまで、何度も愚行を繰り返してきた。そんな君を信じるなんて、無理な話だ」
「でも、私があそこにいたという証拠も、花瓶を落としたという証拠もない。ただ、不運にもあなたたちの目の前に花瓶が落ちた。そして、クリスタが私を見たのだって、見間違いかもしれないでしょう?」
「あなたたちの目の前に花瓶が落ちた? 僕がクリスタと一緒だったなんて、一言も言っていないのに、どうしてわかったんだ? 僕がクリスタから話を聞いて、ここへやってきたと考えるのが、普通だと思うけれど。実際に君があそこにいて、僕たちを上から見ていたんじゃないのか? だから、今日僕とクリスタが一緒にいたことを知っていたんだろう?」
「……今日は天気もいいし、仲の良い婚約者同士のあなたたちのことだから、デートをしていると思っただけよ。そして、そのデートの最中に不運に見舞われたと思っただけよ。違ったかしら?」
「……口だけなら、なんとでも言える。今までだってそうだった。物的な証拠がないせいで、君は運よく逃れてきた。でも、君もわかっていると思うけれど、こんな無茶をしていれば、いずれ君は捕まる。べつに、クリスタに恨みを晴らせば、あとはどうなってもいいと君は考えているのだろうけれど、僕がそうはさせないよ。今日は君を説得できるまで諦めない。クリスタに手を出さないと誓ってくれるなら、僕はある程度、君の言うことを何でも聞くつもりだ」
クリスタに手を出させないためなら、僕は何だってやるつもりだった。
もちろん、限度はあるけれど。
しかし、彼女は信じられないことを言い出した。