16.
どうやら私は、何度も死ぬ運命らしい。
何度やり直しても、メイソンに殺されるか、ローラに殺される未来が待っている。
でも、メイソンと話して、一つだけ嬉しいことがあった。
彼は、私のことを殺したくて殺したわけではないのだ。
私のことをローラだと勘違いしていた。
私のことは、変わらず愛してくれていた。
そのことがわかっただけでも、何度も人生をやり直した価値はあった。
「クリスタ……、さっきから俯いたままだけれど、大丈夫かい? 確かに、この事実は受け入れがたい。君は何度も何度も、殺された。時を繰り返すなんて、もううんざりだろう。それは、同じく時を繰り返した僕も、少しはわかるつもりだよ。それでも……」
「やってやろうじゃない!」
私は顔を上げた。
「ク、クリスタ!?」
「安心して、メイソン! 私は落ち込んでなんかいないわ。むしろ、スッキリした。これで、やることが明確になったわ!」
「よかった……、落ち込んでいたのかと思ったよ」
「ええ、確かに、少しは気落ちしたけれど、まず、あなたが私のことを殺そうとしているのではないと分かっただけで、絶望する必要なんてないと分かったわ。それに、あなたが私を殺そうとしたのは、そもそもローラが仕組んだ策略でしょう? つまり、何もかも、ローラが悪い! 実に、単純明快だわ!」
それが、今の私の正直な気持ちだった。
少しは気落ちしたけれど、いつまでも自分の運命を嘆いていても仕方がない。
「まあ、確かにそうだね」
「それに、さすがに私も頭にきたわ! 何度も何度も殺されて黙っているほど、私はお人よしじゃないのよ! ローラには、しかるべき報いを受けてもらわないといけないわね!」
「ああ、そうだね。彼女をこのまま野放しにしておくわけにはいかない」
「となれば、何か彼女の愚行を止める策が必要だわ」
「ああ、それなんだけれどね、一つ腑に落ちないことがあるんだ。僕はさっき言ったように、君がローラに殺されるたびに、何度もやり直した。だから、次の周回では、うまく立ち回ったつもりだよ。君を殺されないように守ったり、彼女をしかるべき機関に捕らえてもらうように動いたり。でも、それを何度繰り返しても、いつもローラが一枚上手だった。最後の最後には、彼女に君を殺されてしまった……。でも、僕たち二人で協力すれば、きっと何かうまくいく方法を見つけられるはずだ」
「そうね。そのためには、二人の情報を共有する必要があるわね。私はさっき話したわ。次は、あなたが私に話して。何度もやり直しをして、そのたびに何があったのか、私に聞かせて」
「ああ、そうだね。まずは、僕が初めてループを経験した時のことから話そうか」
メイソンが、同じ時を何度もやり直した、長い旅の話を始めた……。