表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】第二王子の側室になりたくないと思っていたら、側室ではなく正室になってしまいました  作者: 倉本縞
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/55

36.謁見を終えて

父の手回しにより、極秘に行われた王とナーシルの謁見は、成功裡に終わった。

かつて愛した女性の忘れ形見との邂逅、というロマンチックな成り行きに、国王陛下はたいそう心動かされたらしい。


兄によれば、陛下はナーシルの手を握り、涙ながらに己の不甲斐なさを詫びたそうだ。

泣くくらいなら、最初からきちんとエレノア様を守ってあげてればいいのに……という感想は、心の中にしまっておく。


「良かったですわね、ナーシル様」

ナーシルの滞在している貴賓室でお茶を飲みながら、ナーシル、兄、私の三人でまったり歓談中だ。

どうでもいいが、この茶器、ウチで一番上等なヤツじゃないですか。父上、ほんとに気合入れてナーシルを接待してるなあ。


「ええ。おかげで私の訴えも、予想以上にすんなり通していただけました」

ナーシルは、常と変わらぬ穏やかな表情で言った。


うーむ。

生まれて初めて父親(それも国王というこの国一番の権力者)に会えたというのに、だいぶ落ち着いてますね。

わたしの物言いたげな視線に気づいたのか、ナーシルは苦笑して言った。


「私は薄情なのかもしれませんね。陛下が涙を流されるのを見ても、特別どうとも感じなかったのです。……もちろん、ありがたいと感謝いたしましたが」

「いや、まあ、それは仕方のないことではないか」

兄が気まずそうにフォローした。


「親子と言っても、今まで一度もお会いしたこともなく、お言葉をいただいたこともない、いわば想像上の人物とお会いしたわけなのだから。いきなり親子の情があふれ出てくるような、そんなことになったら、そちらのほうがおかしいと思うが」

「え、でも陛下は号泣されてたんでしょ?」

わたしのツッコミに、兄はうっと言葉に詰まった。


「陛下はその……、あれだ、ずっとエレノア様を想いつづけていらしたのだろう。だからエレノア様に生き写しのナーシル殿をご覧になって、思わず涙を流されたのでは」

そんなに想いつづけていたのなら、なぜ最初から(以下略。


「……これで、やっと神官長の無念を晴らせます」

テーブルにお茶を置き、ナーシルが静かに言った。

な、なんかナーシルから、めらめら炎が立ち上って見えるぞ。


「ジグモンド王子は王籍を剥奪され、王子と通じ、違法に戦地へ神官や奴隷を送り込んでいた者も、相応の処罰を受けるでしょう」

「……だが、その罪は公にはされない。王子もそうだが、王子の手の者も、貴族は表立って裁かれることにはならないが……」

兄は渋い表情で言った。


ジグモンド王子をはじめ、犯罪に関わった貴族は、その身分を考慮して公に裁かれることはなく、王により身分剥奪や財産没収などの処罰を下されるだけだそうだ。まあ、貴族の恐るべき情報収集力を思えば、処罰理由なんてあっという間に広まってしまうだろうが。


「かまいません」

ナーシルは薄く笑った。

「身分と財産を失った貴族は、もう何もできないでしょう。元々、貴族の特権を利用した犯罪ですから。それを取り上げられた彼らに、己の才覚のみで何事か成せるとは思えません」


ナーシル、こんな顔もできるんだなあ、とわたしはちょっと新鮮な気持ちになった。

酷薄そうで、冷ややかな笑み。……ちょっとだけジグモンド王子に似てる。まあ、兄弟だしね。


「エリカ様」

ナーシルがわたしに向き直った。

とたんに表情が変わり、いつもの優しいナーシルになる。


「明日、ジグモンド王子は拘束され、罪人の塔へ収監されます。念のため、明日は学園をお休みされたほうがよろしいかと思うのですが」

「ああ、そういうことなら、もちろん」

ララに心配しないよう、言伝してもらっとけば、後は問題ないだろう。もう卒業間近だし、大して重要な授業もないしね。


「そういうことなら、明日は狩りに……」

「絶対ダメだ!」

言い終えぬうちに、兄が断固たる口調で言った。


「おまえは自覚が足りん! ジグモンド王子は、神官長暗殺の首謀者である上、兄であるナーシル殿の命まで奪おうとしたのだぞ! おまえが無事なのは、ただ運が良かっただけだ! 少しは身を慎め!」

「わかってますよ」


でもさあ、自分には何の非もないのに身を慎めとか、なんか理不尽じゃないですかあ。

……まあ、隣で心配そうな顔してるナーシルのためにも、大人しくしますけど。


「じゃ、ナーシル様、明日は二人で、ダンスの練習でもしませんか?」

わたしの提案に、は? とナーシルは目を丸くした。


「え、かまいませんが……、なぜダンスを?」

「それはですね!」

わたしは胸をそらし、力強く言った。


「じき、卒業祝賀会が学園主催で行われます。その際、出席者は、家族もしくは婚約者を同伴する決まりがあるのです!」

わたしはナーシルを見つめ、はっきりきっぱり宣言した。


「わたしの婚約者は、ナーシル様である、とその場で知らしめたいのです! わたしをエスコートしていただき、一緒にダンスを踊っていただきたいのですが……、よろしいでしょうか、ナーシル様?」

ナーシルは立ち上がり、テーブルを回ってわたしの傍に来ると、そのままひざまずき、わたしの手を取った。


「喜んで、エリカ様。……私のほうからお願いすべきでした。どうか私に、エリカ様のエスコートをお許し下さい」

よしっ!


ナーシルの言葉に、わたしはにっこり微笑んだ。

欲を言えば、このまま手の甲に口づけくらいしてくれないかなー、とは思うけど。

まあ、ナーシルだしね。そこはおいおい、頑張ってもらうということで!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ