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【書籍化】第二王子の側室になりたくないと思っていたら、側室ではなく正室になってしまいました  作者: 倉本縞
本編

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34/55

34.家族三態

「それは……」

ナーシルが語り終わると、兄は青ざめた表情で呻くように言った

「それでは、ジグモンド王子が、前神官長の殺害に関与していたと言うのか。王族が、神官長を……」


屋敷に戻ってすぐ、兄はわたしとナーシルを父ルドルフの私室へ連れて行き、父に簡単に事情を説明した。

父はすでにある程度状況を把握していたようで、すぐに部屋から人払いをした。


ナーシルと向かい合わせのソファに座った父は、ナーシルの人間離れした美貌にも動じる様子はなかったが、何か思うところがあったのか、しげしげとナーシルの顔を見ていた。


そして簡単に挨拶を済ませた後、くだんの前神官長の殺害について、ナーシルが語ったわけなのだが。


……正直、ナーシルが還俗した理由が、これほど大がかりな犯罪と結びついているとは、思ってもいなかった。

ナーシルが神殿を離れようとした本当の理由は何なのか、わたしなりに色々推理していたのだが、まさかこんな、国家的犯罪を明らかにするためだったとは。

せいぜいが、母親側の縁者を探したいとか、禁欲生活から解放されてラブラブハッピーな生活を送りたいとか、そういう理由かと思っていた。……いや、後者は単にわたしの希望だが。


「ナーシル殿、それは、大変な告発になる。下手をすれば、王家が瓦解しかねんほどの……」

「わかっております」

ナーシルは静かに言った。


「ですから、事を公にする前に、現国王に話を通そうと考えました」

ナーシルの言葉に、兄が目を剥いた。

父は、どこか面白がるような表情でナーシルを見ている。

やだなあ、わたしはともかく、ナーシルまで父上に利用されたくないんだけど。


「こ……、国王陛下に、どうやってお会いすると」

「この魔道具を」

ナーシルは、あの華奢な金鎖を取り出した。


「ほう、これはまた」

父は、感心したような目でナーシルの手にある魔道具を見た。

「なかなか良くできた魔道具のようですな。拝見させていただいても?」

「どうぞ」

ナーシルに手渡された金鎖を、父はためつすがめつ眺めてから、ふむ、と頷いた。


「この魔道具には、見覚えがあります。王家の宝物殿に収められていたものですな。たしか所有者は、現国王エドアール様であったかと」

「ええ。陛下が、母に下賜された品です」

「それは、いつ頃?」

「母が宮廷からお暇をいただいた時に」

物は言いよう。

お暇ってか、命からがら逃げ出されたんだよね、エレノア様は。


父は頷き、言った。

「さようでしたな……、覚えております。ナーシル様のご生母は、ロストーツィ侯爵家のご令嬢、エレノア様でしたか」

わたしはぎょっとして父を見た。

なんでそれを。


「エレノア様の美貌は、当時、宮廷で知らぬ者はおらぬほどでしたからな。ナーシル様は、まことエレノア様に生き写しでいらっしゃる。……陛下がお知りになれば、どれほど喜ばれることか」

言うなり、父はソファから体を起こし、ナーシルの前にひざまずいた。


うわあ、父上までレオンと同じようなことしてる。

ちらっと横を見ると、兄もわたしと同じくドン引きしているのがわかった。兄妹の絆を感じる。


「ナーシル殿下、改めてご挨拶申し上げます」

父はわたし達のドン引き視線にも怯むことなく、ナーシルを見上げて言った。


「尊い御身に拝顔の栄を賜り、恐悦の至りでございます。また殿下におかれましては、愚女、エリカとの婚儀を望まれているとのこと、我がルカーチ家にとりましても、この上なき栄誉と存じます」


あー?

平民と結婚するなら絶縁とか言ってたくせに、ナーシルが王族とわかるなり、この清々しいほどの手の平返しっぷり。

さすが父上。貴族の鑑。


父がさりげなく視線をずらし、兄を見やった。

父からの圧を感じたのか、兄アドリアンも重い腰を上げ、ナーシルの前にひざまずいた。

ぷぷ、兄上、きまり悪そう~。おもしろ~い。


ニヤニヤするわたしを、兄が横目で睨みつけた。思いっきり顔に「覚えてろ」と書いてある……。

やだなー、兄上、わたし達、仲良し兄妹じゃないですか! ちょっと面白がったくらいでそんな……、うぷぷ、ふはは、やっぱ面白い~、腹筋痛い~!


わたしと兄を、何故かナーシルがほのぼのとした眼差しで見つめていた。

慈愛に満ちたナーシル、ちょっと女神っぽい。

拝んだらご利益ありそう。わたしもちょっと、ひざまずいて祈ってみようかな。



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― 新着の感想 ―
[良い点] この兄と妹の関係がとってもリアルでいいですね!! ありがち!とってもありがち!! 男と女のきょうだいだと、どちらが上でも男が振り回される事になりがちですよね~(笑)
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