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【書籍化】第二王子の側室になりたくないと思っていたら、側室ではなく正室になってしまいました  作者: 倉本縞
本編

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22/55

22.短剣

「レオン様、兄をよろしくお願いいたします」

わたしがレオンに頭を下げると、

「逆だ! 私がレオンの面倒を見なきゃならないんだ!」

兄が怒って言った。


まあ確かに。

今日もナーシル、わたし、レオン、兄という面子で森に出かける予定だったのが、レオンが急きょ、手続き関係で騎士団に呼び出しをくらったため、念のため兄もついて行くことになったのだ。

バルタ家の屋敷につくと、レオンがわたし達を出迎えてくれた。


「アド、いつもすまんな」

レオンは爽やかに言ったが、ちょっと残念そうだ。

「今日は初めて、シシ以外の森に行けると楽しみにしていたのだが、団長じきじきに呼び出されては、無視するわけにもいかんしな……」

いや、なんであなたが楽しみにしてるんですか。これはわたしとナーシルのデートなんですけど。

……とは言えない。しょんぼりした大型犬を苛めるような、鬼畜な真似はできない。


「今回は、なんの手続きで差し戻しをくらったんだ? 婚約関係か?」

「うむ、わからん!」

レオンが元気よく答えた。

わからんのか、そうか……。兄もがっくりと肩を落としている。


「しかし、団長自らの呼び出しというのは、珍しい。通常は副団長から通達があるのだが」

レオンが首を傾げて言った。


なんでも騎士団では、書類などの手続き関係は、副団長にほとんど丸投げされているらしい。書類仕事大嫌いな団長とレオンは、たいそう馬が合うそうだ。


「その団長が呼び出さざるを得ないくらいの、大ポカをおまえがやらかしたんだろ!」

兄が怒って言ったが、レオンは考え込む様子を見せた。

「うむ、まあ、そうなのだろうが。……しかし、どうもな……、うまく言えんが、何かおかしい」

「おかしいのはおまえだ!」

兄がバシバシとレオンの肩を叩いているが、レオンは気にした風もない。

レオンはじっとわたしを見た。


「今日は、エリナ殿とナルシー殿は、テーベの森に行かれるのだったか?」

「はい、その予定です!」

わたしはウキウキで答えた。

レオンと兄には悪いが、騎士団からの呼び出しのおかげで、わたしとナーシル二人きりのお出かけが実現したのである。


婚約者となって、初めて! ナーシルと二人きりのデートだよー!

まあ、デートってか、森で獲物を狩るだけだけど、二人きりだしね! 立派なデートだよね!

第二王子の件も伝えなきゃだけど、でも、ナーシルに会えるのはそれだけで楽しみだ。幸せ。


ニヤニヤするわたしに、レオンが、

「アド、エリナ殿、ちょっと待っていてくれ。武器庫に行ってくる」

いきなりそう告げるや、レオンは部屋を出ていってしまった。


「……なんで武器庫?」

「私に聞くな」

残されたわたし達は、呆気にとられてその場に立ち尽くした。レオン、相変わらず自由すぎる。


ほどなくして戻ってきたレオンは、使い込まれた短剣を二振り、手にしていた。

「エリナ殿、これを」

短剣を差し出され、わたしは戸惑いながらもそれを手にした。

普段使っているダガーより、さらに小振りで軽く、手によくなじむ。


「レオン様、これは?」

「うむ、エリナ殿が使われているダガー、あれは物は良さそうだが、エリナ殿には少し重そうだと思ったのだ。こちらのほうが、エリナ殿には合うであろう」

まあ、うん、確かに。

わたしは両手に短剣を持ち、軽く動いてみた。腕を振りやすく、動きやすい。


「おお、やはり、こちらの短剣のほうがずっといい」

レオンは喜び、ニコニコして言った。

「それはエリナ殿に差し上げよう」

「え」

わたしと兄は顔を見合わせた。


「レオン、どうした。なぜ短剣をエリカに?」

「いや、気になってな。先日から、エリナ殿にあのダガーは、どうにも重そうだと思っていたのだ」

レオンはきっぱりと言った。

「武器は、己の筋力に見合ったものを使うのが、一番効率がよいのだ」


武器や筋肉に関して、レオンと言い争う気は毛頭ない。

「そうなんですか。ありがたく頂戴いたします」

わたしは素直に礼を言い、頭を下げた。


「礼はいい。次は、俺とアドも一緒に、テーベの森に連れていってくれ」

「いい加減にしろ!」

兄はプリプリ怒りながらも、レオンを連れて騎士団へと向かった。


わたしはにこやかに二人に手を振り、心の中で気合を入れた。

さあ、いよいよ、初めての! ナーシルと二人っきりのデートだー!


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― 新着の感想 ―
[一言] おバカなレオンくんが良い味出してますね!アホなゴールデンレトリバー的な、ほっこり。でもこういう本能で生きてる人は強い。実際にキューピッドなわけですし。
[良い点] 筋肉とか武器についてのエキスパートなレオンの動物っぽい勘、すごい!! その道のマニアはやはり強いですね…
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