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超克の反逆者 =次元龍=  作者: 金の生える田んぼ
4/6

神の存在、彼の本望

起きよ……






起きよ……






起きよ



「ハッ!!」



目を覚ました。






「えっ、ここどこ!?」


思わず独り言を発した。

目を開くとそこは何の地形も地面も物も人もなく、ただ真っ白な景色が続いていた。

その場所にオレは浮かんでいた。




{目を覚ましたか、トリシューラ・ヴィルバルアヌスよ}


な、何だ!?


急に声が聞こえビクッ!となった。

老人のような声の誰かがオレに話しかけているようだけど、その人の姿が見えない。


「あの、見えないのですけど…どこにいますか?」


{すまない、今は我の姿は見えぬ。だが我と少し話をしてもらいたい。それでもよいか?}



…別にそれは良いのだけど、今はどういう状況か全く分からない。それ故に、知らないおじさんに会話を要求されるから余計に困惑してしまう。


{…わ、わかりました。せめてあなたの名前とここはどこかだけでも教えてくれませんか?}


{うむ、しかし今はどうしてもやらなければならぬことがある。それは後で言うとしよう}


えー…今教えたっていいんじゃん…


「今やらなければならないこと?」


{そうじゃ。今から行うのは、御主の記憶の旅の鑑賞だ。そして振り返って欲しい}


え、何て言った…?オレの記憶を観るだって?そんなことできるのか?

そもそも普通に変だ。辺りは真っ白、天の声、浮いているオレ、それに誰もいない。みんなどこ…



あれ?みんなって誰だ?それにオレの知ってる場所ってどこだ?

有るのは有るんだろうけど、妙に忘れてしまっている。



「あの…、あなたはどうやってオレの記憶を観るのかわかりませんし、観るなら観るでいいんですけど……オレ自身、自分のこと思い出せないのですけど…」


{ああ分かっておる。そのための鑑賞だ。そして徐々に思い出してゆけばよい。御主よ、その青い球に触れてみよ}


疑ってはいるけど、言われるがままに傍にあった青い球に触った。


ピカッ



真っ白だった辺りが一変。街の景色が広がった。



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「………刻まれていません…」





「親を呼べ」





「そ、そ、それは……」





「親に迷惑を掛けるのは怖いか?なら選べ、親に迷惑を掛けるのか、それとも、名は伏せるがイスタリア大帝国にバルチカ人が無許可で入ったのが知れ渡るのか」





「うっうっ…う……ううぅ………親を……選びます…」




「ア、アリエス……」



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{これはアリエスと名乗る少女がイスタリア領に入っているのを、警備官とやらの2人組に目撃された時のことだ。思い出したか?}


「…うん。アリエスはその警備官に暴行を食らって、改めてオレたちと会った頃にはもうボロボロの姿だった」


あの時をきっかけにアレクとカレンの仲がこじれ始め、アリエスは怯えてずっと家に籠った。





{一つ言っておく。警備官とやらの2人の内1人、あの老人ではない方の男、その者はイスタリア人ではなくバルチカ人だ}


「えっ?」


{人間というのはそういう者だ。自分の利益のためにこれまでの経歴、関わってきた者の関係を、いざとなれば全て捨てたり隠したりする。自分が生き抜くために}


オレはまだ10歳の子供だからよくわからないけど、…けど何だろう、この人はこの人で結構上から目線だなあ…。



{次へと行こう。その黄色い球に触れてもらおうか}


黄色の球に触れると、また周りの景色が一変した。



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「良かった良かった!またみんな揃って集まれて」


「アレクくんとカレンは仲直りした?」


「おぅよ!もう大丈夫だ!それに改めてアリエス、ごめんなさい。もう気分は大丈夫か?」


「うん大丈夫!やっぱ外で遊ばないとね!それと私、全然気にしてないよっ」


「お、おう、そうか。なら良かった」



「よし、再結集の証として今回はサッカーしよう!」


「いいね!いいね!」




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「おい…みんな見ろ…」


「なんだシューラ? え?」


「え…何あれ…」



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「思い出した……。これはアリエスの事件の1ヶ月後、突然イスタリア大帝国がオレたちの国に攻め込んで……そして…平和が一瞬で消えた日」


{そう、しかし御主らはまだ希望を感じていた。それがこれだ}


オレの家が映し出された。



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「どうしてアナタが行くの!?」


「どうしてだって?そんなの決まっているだろ。家族、いや、この国の人たち全員を守るためだよ」


「でもアナタが行くことないでしょ!!」


「そうだよお父さん、どうして…」





「力を手に入れたから」





「えっ?」


「信じられないよな、でも信じてくれ。俺は神様と会話して、そして力を授かった」


「何それ…今こんな状況なのに、冗談なんて信じられない…」


「違う、冗談なんかじゃない。何かを守る意志が神様に伝わったんだ!だから何もしないなんてカッコ悪いし、神様が許してくれない!」



本当に嘘を付いている様子ではなかった。



「ぅぅ……嫌よ……どうしてそんな嘘までついてまで戦いたいの……」


泣き崩れる母さん


そして2人の会話に、何も言えないオレ


「違う!信じてくれ!俺は戦いたいなんて全く思っちゃいない。クレハとシューラと一緒に居たい。でも行かないと俺たち、そして友好関係を作ってきた仲間たちがみんな死んでしまう。夢も希望も無くなってしまう。だから行くんだ。分かってくれたかい?クレハ」



「信じない、信じたくない。でも、例え私が止めようとしてもアナタは必ず飛び出してしまう。そういう性格だから…」


母さんは泣き止もうと目を擦る。


「聞くよ…… 帰ってくるよね……」



「当たり前だよクレハ。約束しただろ、これからも一緒に思い出作るって。シューラと3人で、最後まで幸せに」



「アルバート……! アルバートぉぉぉぉ…!」





「お父さん、帰ってきてね」


「うん!シューラは立派な男の子だから、母さんを守ってくれよ」



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ズガザザガズザズガズガガザガザザザ





ブォォオオオオオアアアアオォォォォ!!!!





<オマエタチ二オシエテヤル、コノイタミヲ>



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「お父さんが、骨だけの巨大は龍になった日……」


{肉体が付いていないあれは言わば失敗作。そしてその骨が御主の国を護り、イスタリア大帝国王都に侵攻。しかし最後までは敵わず……命を落とした}


帰ってこなかった。オレはその時悲しくて泣き叫んでいた。

でもオレ以上に母さんは泣いていた。自殺さえしようとしていた。もちろん止めた。説得した。これ以上オレに悲しみを与えないでくれ、と。



{赤色の球、これで最後だ}


景色は変わったが、いまいちその場所がわからない。見たことあるようで無いような…


{これはイスタリア大帝国の処刑所。バルチカ国全ての人間がここで、周りのイスタリア人の観衆の前で公開処刑に遭った}



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______________________



「イヤだよ!!!イヤ!!イヤ!!イヤ!!イヤァァァ!!!!!」

「ぁ…ぁぁ…ぁぁあああ!!! どうしてボクたちは、こんなことに…!!!」

「おしまいだ……何もかも……」




「この悪魔め!!!絶対に殺してやる!!殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる!!!!」


「やめてアレク!!!!怒らせちゃダメ!!」


「はあ!!?何言ってるカレン……!どうせ俺たちここで終わるんだろ?ならもう言いたいこと全部言えよ!!!!お前の本音全部、言えよ!!」



「ア、アレク…………………。おい、イスタリアのクソ共…!お前たちなんて死ねばいい!!いっぱい苦しんで、苦しんで苦しんで苦しんで苦しんで苦しんで苦しんで死ね!!!私が死んでも、霊になってお前たちを、ギッタンギッタンして、バラバラにして、殺してやる!!!!」



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「!! ……全部思い出した、ここでオレの友達みんな殺された。それを見て吐き気がした。実際に吐いたし、脱力で視界も真っ白になった。そしてオレもじっくり苦しめられ……死んだ」



{思い出したくなかったか?}


「…思い出したくなかった。痛みも苦しみも辛かったけど、それよりも思い出して辛かったのは、自分が死んでしまったこと。まだみんなと、これから出会う人と、いっぱいの経験が欲しかった……」


{そうか、それが望みか。ならばよかろう、我が御主を生き返らそう。我にはそれができる}




…は?どうやって?


「結局あなたは何者だ?さっきから不思議なことばかり。周りが一瞬で変化するし、オレの経験してきたこと全て知っているようだし、あなたの声しか聞こえないし。現実的にあり得ないことが目の前で起きている。さっきの質問に答えてくれ、あなたは誰?ここはどこ?」




{我が名はテオ・ゼウス}




テオ・ゼウス…?ゼウス…?ゼウス… は!?


「ゼウスって、神話の!??」


{ほほう、やはり人間界では我らはその神話という物語の中だけの存在とされているのか。しかし御主よ、我は生身をちゃんと持っているぞ}


「え?」


{その通り、我は人間ではなく神だ。そしてここは、御主の意識が失ってから脳機能が完全に停止するまでの間に発動させた、我の術式の中だ}


「そ、そうですか神様…」


信じがたいけど、不可解なことが今起きているし多分そうなんだろう。


{まだ間に合う。今は都合が良くてな、御主を過去に戻すことができる}


過去に戻る…!?


はは…


「神様にも都合があるんですね…」


{そうである。人間界によると神、特に我は全知全能とされているが実際はそうではない。神々の協力を経て、神の中の王へと登りつめただけだ}


「やっぱ神は他にもいるんですか!?」


{ああいるとも。時の神・海の神・冥界の神・太陽の神など、そして今は亡き大地の神・空の神・戦の神。我ら神は、人間によって作られた空想上の存在ではない}


す、すごい…!!

神は実在していて、しかもこうやって神と話していられることに感動だ…!





{その神の王、テオ・ゼウスが御主に問う}


「な、何でしょうか…!」



{お前の本望は何だ?}


お、『お前』!? 『御主』じゃなくて…?



本望…? つまり一番の望みか…


オレの本望…



「オレの本望は……みんなを守ること」


{そうじゃな、しかしそれよりも望んでいることがあるじゃろ?}




「つ、強くなること…」


{それもある。でももっと強い望みがあるのでないか?}




「支配から解放され、世界を冒険すること…」


{それも分かっておる。だが違う!我は本望を聞きたいと言っておる!お前の本音を語ってくれ!!!}



ビックリするくらいの罵声を浴びた。


「オレの、本音…」


{そうじゃ。我に本音を語ってくれないか?}




____________________________

この世界に生まれてからずっとモヤモヤしていた。オレの国は小さくて隔離されていたが、楽しいこといっぱいで平和で普通に暮らしていた。

けれどこのモヤモヤを隠しきれなかった。忘れようとしても、離れない。

思い出が、記憶が、オレを悩ませる。グチャグチャでバラバラでクシャクシャで。

特別何かあったわけじゃないのにずっと強く想ってきた。経験したことも見たことも何もないのに。ずっと、願ってきた。

____________________________




=それが今この瞬間、初めて口に出た=



「みんなを守りたい、そのために強くなりたい、そうして解放されて自由になりたい!!!けれどゴールはそんなことじゃない!オレの一番の願い、それは_______________


オレ自身が世界の支配者、世界の王になることだ!!!」






{うむ、よくぞ言った。御主が戻れば、前も記憶も今こうやって我と話した記憶も忘れる。そして前世と事象はほぼ変わらない。奇跡が起こらない限り、御主が気づかない限り、結果は同じだ。また仲間を失う光景を見る結末だ!それでも行くのか!!}


「ああ、もちろんさ!」


{なら行け、トリシューラ・ヴィルバルアヌスよ。光の道の先で待っているぞ}


ゼウス様がそう言うと、オレも周りも形が崩壊していき、グルグルと回り始めた。

そして1つの焦点へと飲み込まれた。



もう意識も段々と薄くなってゆく…






{頭痛は痛かったか?}


え…頭痛………?


{あれは御主を勝利へと導く、前段階だ}

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