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第七話

           第七話【Side.D】


ここ数日間、夢の世界では特に何の変化は見られなかった。

ただ、現実世界での白鳥由紀(しらとりゆき)のあの一件もあり、ハヤトにどう接したらいいのかわからなくなっていた。

こっちのハヤトには関係ないにせよ、僕にとってはそれだけ衝撃的な事だったのだ。


しかし、僕の気も知らずにハヤトはいつも通りであった。

あるクエストで地下迷宮の探索に行った際、大量の魔物の群勢に僕達は遭遇してしまった。

するとハヤトは挑発スキルで魔物達の攻撃を自分に向けさせ、僕とジュンを先に逃したのだ。


魔物達の総攻撃を一手に引き受け、仲間を守るために自らを犠牲にするなんて、おそらく僕には出来ないだろう。

運が悪ければ冗談抜きで死んでいたかもしれないんだ。

こっちの世界でも――現実の世界でも。


僕の知っているハヤトという男は、こういうやつなんだ。

そう改めて認識させられた。


クエストの帰り、偶然スノウに会った。

以前初めて会った時から一切顔を合わせておらず、とても久しぶりのように感じた。

だが、どうも様子が変だった。まるで何かに怯えているようだ。


「スノウ。どうしたんだ」

僕は心配して声をかけた。

「あぁ、アキラくん。ごめんね。大丈夫だよ」

スノウはそう言うと、僕に笑ってみせた。それは見ていてどこか悲しくなる笑顔だった。


そして僕の隣にいるハヤトに気づくと、青ざめた顔をして逃げるような早足でこの場を去った。

「おいおい、お前あの子に嫌われるような事でもしたのかよ」

ジュンがからかうように言った。

「……いや、知らんな」


僕もなんだかよくわからずにいたが、一つだけ言えることは、以前初めてスノウに会った時、僕のことを『アキラくん』だなんて

親しげな呼び方はしていなかったという事だ。



           第七話【Side.R】


文化祭の準備も、ここ数日の間でだいぶ進んだ。

ただ、あれ以来、白鳥由紀とは会っていない。


「おい(あきら)、ちゃんと鞄のファスナー閉めてないと危ないぞ。先生が朝言ってただろ。

最近、財布の盗難事件が頻繁に起こってるって」

「あぁ、ありがとう、純平」


「水無月も一緒に帰ろうぜ」

水無月は机の上を素早く片付け、作業を辞めた。

「そのつもりよ」

気のせいか、少し微笑んでいるように見えた。


教室を出た時、栗山先生に会った。

「お、和泉。ちょうど良かった。宮崎隼人と小林大河の件についてなんだが」

それを聞いて、純平と水無月も僕の顔を見る。

そういえば先生に話している事、二人には言ってなかったっけ。


「あれから、宮崎に問い詰め続けてみたんだがな、ずっとシラを切ってるんだよ。

それで小林の方にも聞いてみたんだが、先生には関係ないです、と言われてな」

先生は唇を噛み、顔をしかめた。


「それで今日、二人が一緒にいるところを偶然目撃したんだよ。またシラを切られたが、どうも小林の様子が明らかに不自然だった。だから、これから家に行って宮崎の親と直接話す必要があるなと言ってみたんだ」


「……宮崎は、それで何と答えたんですか?」

「明日まで待ってほしい。そう言われたよ。僕も少し悩んだが、本人が絶対に約束は守る、と力強く言ってきたもんでな、

明日宮崎の家に行く事にしたよ」

「そうですか。なんか色々ありがとうございます、先生」


「これは、少し厄介な事になりそうね」

栗山先生が立ち去った後、水無月がそう呟いた。

「厄介な事?」


「もしかするとまた一人、死人が出るかもしれないわ」



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