『開花』 7.結実
結実
王城、東方帝の執務室には朝の光が差し込んでいる。
リィザガロスの二人の貴公子は日課である朝の会話…内容は仕事から、プライベートに至るまで様々であるが、今日は専ら、新しく就任する第七騎士団の団長達の人事について。
団長は、リアスとアレスが踊ったティア・サマー。
副長は先の人身売買事件の解決の中心人物となったシオン・ギレスとアリア・ノース。
予想はしていたのか、リアスは驚くこともなくそれを承認した。
「彼女が新しい第七騎士団団長だったわけだ。だから『知っている』と言ったんだね。」
「申し訳ありません、規定故にお話出来ませんでした。」
「いや、知らされる前に彼女の為人が分かって逆に良かったよ。素晴らしい淑女だ、彼女は。」
「私もそう思います。…今回の事件で、前の第七騎士団の幹部は勿論、古参の騎士は懲戒免職にしています。仕事の引き継ぎはほとんど出来ていない状況ですから、第三騎士団と第四騎士団から応援を出します。人選はレギノ候とオールドワイズ候に一任しています。ティア、シオン、アリアの指導は、団長各位が交代で行います。」
「それはいい。三人は、これから国を支えていく人材だ。大事に育ててくれよ。優秀とはいえ、今はまだ蕾、いずれ大輪の花を咲かせるだろうからな。」
「花…そうかも、知れませんね。」
花、と言われてアレスの頭の中には青いドレスの少女が浮かぶ。
気高く、凛々しく、美しい少女。
今まで出会ったどんな女性よりも、焦がれて、心惹かれた。
ああ、これはきっと。
アレスは、己の気持ちを理解する。
それは感じたことのない焦燥感、そして高揚。
彼女に自分を見てほしい、触れてほしい。
まるで少年のような恋心。
生まれて初めて感じたそれに、アレスは驚くが、迷いは生じなかった。
End.
ティアとアレス、リアスの出会い編でした。
ティアに心眼が効きにくいのは、彼女が大地母神の生まれ変わりで精神防護能力が、かなり高いからです。
もう一つ理由がありますが、それはまた別のお話…。




