柚子いっこ【冬の詩企画】
お風呂の中に 柚子一個
海に映った月みたい
ふわりぷかぷか ぷかふわり
可愛くない 黄色いクラゲ
でこぼこごつごつ でこごつごつ
彼氏が どこからか貰ってきたの?
つんつんすると くるりと回る
はあ 一個じゃなんにもならない
彩り少なく 香りもしない
まるで私たちの同棲生活
興奮も トキメキもない
味気ない ただの惰性で ぷかふわり
この柚子みたいに 世間に浮いて
あっちへふわふわ こっちにぷかり
しばらく 眺めていたけれど
彼氏を見てるみたいに もう飽きた
風呂から上がると 飽き顔がある
なんか知らんが 興奮気味
「どうだった?」
はぁ? 一個じゃ満足出来ないよ
そんなに興奮することかよ
「なんだ、気付かなかったのかよ。柚子の中」
慌てて戻って柚子を剥く
皮の薫りがその場に広がる
果肉の中に ダイヤのリング
なんだよお前は手品師かよ
普通この時期ならクリスマスだろ
どうして冬至にするんだよ
世間から浮いて ぷかふわり
思わずその場でクスリと笑う
「お前の涙の方が石より大きいな」
じゃねーよ 大きなお世話だ
いつからロマンチストになったんだ
まだまだ分からないことが多いなぁ
浮かれてんじゃねーよ
幸せにしてくれるんだろうな?
はめてくれたリングから ふわりと柚子の香り
きらきらふわり ふわきらり
本作は「冬の詩企画」参加作品です。
企画の概要については下記URLをご覧ください。
https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/1423845/blogkey/2157614/(志茂塚ゆり活動報告)
なお、本作は下記サイトに転載します。
http://huyunosi.seesaa.net/(冬の詩企画@小説家になろう:seesaablog)