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今日から商人を始めますわ!  作者: 翠狐
第一章
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嬉しい悲鳴

それぞれの製品の製造と販売が開始され、知り合いの貴族や豪商を通じて広く『リバーサイド鉱業商会』の名前は知れ渡り、飛ぶように売れていた。


コークスは製造された7割を燃料として販売し、3割を自社の製鉄所で燃料として消費し、精錬された鉄は不純物が少なく強度があるため、鉄を加工する商会等が購入している。

軽油ランプに関しても、今まで職人が一つ一つ作っていたのを工場でベルトコンベア方式にして、大量生産し、販売価格を下げたことや、燃料の軽油が従来のランプ用の油より安く扱いやすかった為、飛ぶように売れ、政府までもが、今まで裏通りに予算上、ランプを置けなかったが、価格が下がったことにより、王都のあちこちにランプを設置することになったりととんでもない勢いで王都での勢力を強めていった。

その影響は、老舗と新興の商会に関係なく及び、王都に第三勢力が誕生する結果となった。


「お嬢様。大丈夫ですか?」


「だ、大丈夫...な訳ないです!」


代わりに、その繁盛ぶりにたいして人手不足に陥り、不眠不休の状態となり、工場も24時間稼働。オフィスも多くの事務員が残業し、フィナに至ってはもはや何日寝ていないのか分からなくなってきていた。


「駄目です!これは急ぎ対策をしないと!」


応急処置として工場には労働者以外に奴隷を買って、7~8時間労働で交代制で回しているが、それでも人手不足が深刻になっていた。そして、商談や接待のお誘いも多く、事務スペースは地獄と化しており、事務員には多めに残業代を支払ったり、社内食堂で栄養がつく料理を出したりと明らかに人手不足になっていた。


「こうなったら、事務員にも奴隷を採用しようかしら...」


「お嬢様、それは流石に.....」


事務職は今のところ、貴族や豪商の三男や五男が中心で、十分な教育を受けているため、最初から問題はあまりなかったが、奴隷は肉体労働が主な為、教育を受けることが無く、事務職に採用することそのものが無茶で、さらに、貴族や豪商の子息と同じ場所で奴隷を働かせるのは不味い。


「はぁ...どうしましょう。また、人伝に人材を紹介して貰いましょうか。後、王都以外の農村部にも応募を出して、なんとかなりそうでしょうか。」


「では、そのように手配しておきます。」


「ありがとう。」


その後、両替商で有名な商会から、以前にその商会の面接で落ちた者のリストを貰って、うちで働かないかと勧誘をかけたり、農村部や地方都市に応募をしたりと人材不足が徐々に落ち着いていき、社員は順番に休暇を取って、体を休めていった。


「そう言えばお嬢様。工場の奴隷ですが、何故、7~8時間ほどしか働かさないのですか?奴隷でしたら、それこそ限界まで働かせても文句は言われないのですよ?」


「確かにそうなのですが...私がそう言うやり方が嫌いなのと、疲労が原因で効率が落ちないようにするのと、工場内で事故を起こしてほしく無いというのが理由でしょうか?」


「はあ、お嬢様は奴隷にまでお優しいのですね。少し打算も入っておられましたが。」


「私はマリアが奴隷を使い潰せと言って来たことが以外でした。」


「そうですか?一般的な考えだと思いますよ?」


この世界での奴隷の扱いが酷いですね.....やはり前世が日本人なだけあって、私の感覚がずれているのでしょうね。


「さて、今のところ、社内の業務は落ち着き始めましたが、コークスや鉄の需要を満たしてるとは言えません。新たに工場を作る必要がありますが、私は王都より北に位置するビルツハイム伯爵領に作ろうと思います。」


ビルツハイム伯爵とは以前から、人材紹介や石炭の仕入れ先としてお世話になっている伯爵家で、『是非、新たに工場を作るときは我が領に!』と何度か強く要望されており、石炭の質も良く、ビルツハイム伯爵の三男が商会で働いているため、土地の事にも詳しいと思い、設立先として有力候補にしている。


「ですが、ワックナー公爵様も『是非、うちの領に!』と言われていましたね。」


ワックナー公爵はタンデヴィシュ皇国の先代皇帝の妹が嫁いだ家柄で、領地に流れる運河には国内最大の港や大きな工業地区もあり、コークスを蒸気船の燃料として利用するため、こちらもまた工場を誘致しようとしている。


「今のところ、ビルツハイム伯爵領に工場が建てばワックナー公爵領へ運びやすくなるので、問題ないと思っているのですが。それに、将来的にはワックナー公爵領には軽油エンジンの工場を作ろうと思ってるので、今回はビルツハイム伯爵領で良いでしょう。」


その後、ビルツハイム伯爵とワックナー公爵それぞれに今後の計画を纏めた計画書を送ったのだが、それが発端となり後に大きな事件へと発展するとは思いもしなかった。

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