自動車!
大型船用軽油エンジンの実地試験失敗から数日後、今日はワックナー公爵領の工業地区の一角に確保された巨大な建設予定地にやって来ていた。
メンバーはワックナー公爵を始め、ヒルツハイム伯爵、皇国騎士団長トルス・オルグスなど多くの貴族や商人が集まっていた。
そして、空き地に用意されていたのは軽油エンジンを使って作った、この世界で初となる自動車だ。今回は乗用車ではなくトレーラーやトラック、バスなどの大型車が並んでいる。
「フィナ嬢、これはなんなのですか?」
「これは、自動車と言う馬車にエンジンが着いた物と考えて頂ければ、分かりやすいかと思います。勿論、馬は必要ありませんし、馬車の何倍もの速度を出せます。人員やコストの削減、そして、盗賊に襲撃されても追い付かれませんから、護衛も必要なくなるでしょう。」
「「「おおー!!!」」」
真っ先に反応したのは商人達で、既に頭のなかでは自動車を使うことによる商売の効率化によって発生する莫大な利益を計算しはじめていた。
「そして、今は大きな自動車にしか軽油エンジンは積めませんが、もっと小型化できたら、貴族の皆様が使われている馬車より早く領地と王都、それ以外にも各地へ簡単に行来できるように専用の自動車も作れます。そうすれば、有効に使える時間は今までより格段に増えると思います。」
「「「おおー!!!」」」
貴族達も商売に続き反応し、将来、馬車より扱いやすく時間を今より有効に使えるようになると言う自分専用の自動車に夢を馳せた。
「さらに、トラックや将来、作る予定の小型の自動車を使えば兵員を戦地に迅速に派遣でき、戦場をより早く動けるようになります。武器や食糧もそれだけ早く大量に運べるのです。」
「フィナ嬢。あなたはどこまで先を見据えているのだ。これでは皇国は負け無しの最強無敵国家になってしまいますぞ!ハッハッは!」
騎士団長も自動車の有用性に気づいたのか大声で豪快に笑い始め、集まったもの全員の興味を惹き付けられたようだ。
「それでは、早速、今回はバスに皆さんに乗っていただいて、乗り心地を試してもらいたいと思います。」
乗れると聞いて、我先にと前に出てきて、バスへ順番に乗せていった。
今回はバスの内装を貴族向けの馬車を作ってる工房に協力を依頼し、かなり豪華で、貴族でも十分、満足できる仕上がりとなっている。
「では、エンジンを起動させます。まだ試作機の為、少し振動が大きかったり、音が気になられるかと思いますが、それも今後、少しずつ改良していく予定で御座いますので、本日は世界初の自動車の産声と思い、ご理解くださいますようお願い致します。」
ドレスの裾を摘み美しいカーテシーで締めくくると、自分も席に座り、運転手に合図を送ると、大きな音を立ててエンジンが始動し、バスはゆっくりと動き始めた。
動き始めたバスは広大な敷地内を周回し、速度を上げて、その速さを乗っている者と外で見ている者に示した。
そして、元の位置に戻り、停車したバスから降りてきた者の顔には、白昼夢を見たかのような呆けた顔をしており、馬車と比較した性能の差が信じられないようだった。
しばらくして立ち直った者から多くの自動車の発注依頼を受けることとなった。
そして、これが結果的に運河の輸送力不足を少しながら補うこととなった。
続きがまだ書けてないので、次話まで間が空きます!すみません!