計画頓挫!
早速、軽油エンジンを起動して、出力を上げた。しかし、問題が起きた。この軽油エンジンだとエンジンの回転数は高いが、船は大きくなると回転数ではなく、スクリューの羽の大きさによって、速度が変わるため、この軽油エンジンでは大型の貨物船を動かすことはできなかった。結果、軽油エンジンでの貨物を載せた船の航行は不可能と判明し、根本的に改良が必要とわかった。
「はぁ...まさか、軽油エンジンだと小型の船程度しか動かせないなんて。」
「まあ、そう言うこともあるじゃろ。」
力を入れてやっていただけあって、目に見えて落ち込んでいたため、お爺様が励ましにやって来た。
「原因はなんじゃった?出力が足りぬならば大きくする。それでもダメなら発想を変える。まだフィナはスタートラインにたったばかりじゃよ。少なくとも、小さな船は動いたのじゃからな。」
「そうですね。ですが、そのためにはエンジンの設計以前に、燃料から考え直さないと。」
せめて、原油があれば重油を精製して、低速のエンジンと大きなスクリューで大型の船でも動かせるようになるのですが...
これは、本格的に原油を探すべきでしょうか。
その後も軽油エンジンの開発者達は大型の船でも動かせるよう改良を続けると言い、そちらは開発者達に任せることにして、新たに原油探索を行うことにした。
具体的には、私や社員を通じて、油田とおぼしきものを見たことある者か、聞いたことがある者を探すのだが、通常業務もあるので、探索専門に冒険者を冒険者ギルドを通して、調査や聞き込みを依頼した。
そして、商会ビルに戻ると、離宮の管理のために商会から離れた秘書役のマリアの代わりに、セバスを呼んだ。
「いかがなさいましたか?お嬢様。」
「今からワックナー公爵様に今回の軽油エンジンの件を報告したいから、軽油エンジンと従来の蒸気エンジンとの性能比較を分かりやすく纏めて、ワックナー公爵様宛に送っておいてちょうだい。あと、私からもワックナー公爵様に軽油エンジンの別の使い道についての計画書を送るから、準備ができたら教えてちょうだい。」
「畏まりました。資料を用意するよう伝えておきます。」
セバスは優雅にお辞儀をすると、資料の作成を開発者達に伝えるため、執務室をあとにした。
「はぁ...軽油エンジンでいけると思ったのに.....」
前世で知り合いのお金持ちの子が自家用クルーザーに乗せてくれたときに、給油してるところを見て、軽油を給油して、かなりの速度が出てたため、軽油エンジンで大型船も動かせると思っていたのだが、船は大きくなるほど、スクリューの回転数よりスクリューの羽の大きさや枚数で速度に影響を与えるという根本的なところを失念していた。
「変速機とか使えば軽油エンジンでも十分、動くのかしら。でも、それだとコストもメンテナンスの手間も多いし...だめだ。軽油エンジンだと絶対に無理だ。」
軽油エンジンの限界を感じたところで、思考を切り替え、ワックナー公爵宛に軽油エンジンを使って大きな船を動かすことは出来ないことと、出来てもコストがかかることを報告書に書き込み、別の使い道を計画書に書き込んでいった。
「お嬢様。性能の比較書が出来ましたので、お嬢様の計画書を受け取りに参りました。」
「もう出来たの?私はまだ計画書が出来てないから、私が出しておくわ。だから、そこに置いておいて。」
「畏まりました...お嬢様。『油田』の件ですが、どういう場所なら見つけやすいか教えてほしいと冒険者ギルドから連絡が来ています。」
「油田の場所?ん~.....わかりません!」
「では、そのように伝えておきます。」
この後、わからないとの回答を受けた冒険者ギルドの担当者はしばらく唖然として立ち尽くしたという。