お爺様襲来!
「フィナ!待ちきれず来たぞ!!!」
執務室で仕事をしていると、突然、シガルタ王国にいる筈の祖父が突入してきた。
「あ、そう言えばお爺様にお手紙をお出しするのを忘れていましたわ。」
「あべしっ!...忘れられてしまっていたとは...お爺様は悲しいぞ!」
めんどくさい...もはやその一言しか思い浮かばない。祖父はその場で泣き真似を始めて、チラチラとこちらの様子を伺っており、『慰めておくれ!』と言わんばかりに視線を送ってくる。
「それで、マリア。午後からの予定は?」
「ワックナー公爵様のお屋敷にて、軽油エンジン試作型のお披露目です。」
「では、お昼は行く途中で食べましょうか。」
そう。私はお爺様を無視することにしたのです!
「..........」
そして、真っ白になり固まるお爺様だった。
「それで、お爺様?今後、どうなさるおつもりですか?」
「そうじゃなぁ~まあ、フィナが動きやすいよう現役時代の人脈を使って掃除でもするかのう。」
「お爺様。貴族を掃除してはいけませんよ?それは皇国の皇帝陛下のお仕事です。」
「いや、皇帝の仕事ではないと思うが。ん?皇帝の仕事か?」
一人考え込んでしまったお爺様を放置して、一人、紅茶を楽しみつつ、マリアにおかわりをお願いしていた。
「それで、フィナ。何故、家がないのだ。」
ワックナー公爵の屋敷で軽油エンジンの実演会を行い、蒸気エンジンよりコンパクトで扱いやすい所が注目され、早速、軽油エンジンを使った船の作成や、工業用の動力として作成を依頼された。それからオフィスに戻るとお爺様の「そろそろ帰るのか?お爺様も泊めてくれんかのう。」という一言で、家がない事がバレて、お爺様に「仕事場で寝ては体が休まらん!」と言われ、理由を問い詰められる結果となった。
「あ、あの、正直にいうと忘れていました...最近は寝る時間も惜しかったので、ここで寝る事に違和感を感じなくなっていました。」
「それに、服も忙しいのかわからんが、ちゃんとしたものを着なさい。ドレスくらい買えるであろう?」
「は、はい。買おうと思えば買えるんですけど、今の服の方が動きやすくて...」
「実用性重視なのはわかったが、商人なら、印象も大切じゃ、ちゃんとした格好をしないとなめられてしまうぞ。」
「はい...わかりました。」
その後もお爺様からの説教や商人としてのアドバイスを受けたりして、翌日に家の購入とドレスを仕立てることとなった。