没落
設定の一部を訂正いたしました。
「シガルタ王国ラインべッセン国王様の命により、リバーサイド侯爵家の爵位及び、資産と領地を没収する!抵抗する場合は、斬り捨てる!」
屋敷の玄関ホールで、王宮の文官が大きな声で国王陛下からの命令書を読み上げ、武装した騎士団が守りを固めて、周りを牽制している。
そして、私、フィナ・リバーサイド16歳は、不在の両親に代わり、対応しているのですが、何故、こんなことになっているのか理解できません。
「あ、あの、どのような理由でお家お取り潰しなのかお聞きしてもよろしいでしょうか...」
「理由は、王宮の宝物庫に保管されている複数の宝石類を横領した為である!王宮の宝物庫内の財産を横領するなど、本来は連座で死刑だ!しかし、陛下はこれまでの功績を考え、温情として、このような沙汰となった!素直に応じられよ!」
「そ、そんな!横領だなんて.....」
いや、あのお金に目がないお父様の事です。やっていないと言い切れません...お父様!信じてあげられなくてご免なさい!
「わかりました...最低限の服だけでも持ち出しても構わないでしょうか...」
「許可する。流石に裸で通りに放り出す訳にはいかんからな。」
「ありがとうございます。」
そして、自室に戻った私は、集まってきた屋敷の使用人達全てに事の次第を話し、使用人達は絶望する表情の者。信じられないと泣き出す者。呆然として固まってしまう者など、反応はバラバラですが、大きなショックを受けたようです。
でも、皆、落ち着きを取り戻すと私が独り立ち出来るようになるまで助けるといってくれました!こんなに大切にしてもらって、私は、幸福者です!お金なんかよりずっと大切です!
そして、たまにお忍びで町へ出る時の変装用の服を鞄に詰め込み、両親に黙って町で商売をして儲けた少しのお金を持って、屋敷から出た。
その瞬間、頭の中に大量の情報が入ってきました。
それは、異世界で死んだ、前世の私の記憶で、有名な大学の経営学部に通っていた大学生であったこと、そして、事故に遭って死んでしまい、何故かこの世界に転生した事でした。
頭に大量の情報が入ってきた事で、ふらついてしまい倒れそうになると若い執事見習いのセバスが支えてくれました。
「お嬢様、大丈夫ですか?何処か休める所を探して、休みましょう。」
「いえ、それよりも皆は住むところはあるのですか?」
「大丈夫です。いざとなれば、それぞれの実家に帰ることができますから。」
「左様で御座います。このような老いぼれ執事を侯爵様に長く使ってもらえました故、老後のお金には困っておりませぬ。」
「私もいざとなれば、実家に帰って何処かに嫁げば良いので。」
「あっしもいざとなれば、この腕で料理屋でも開きますよ。まあ、お嬢様以外に腕を振るうつもりは全くありはしませんがね!」
「それは儂もですじゃ。お嬢様に見てもらえないのなら、生きてる意味が御座いません。ですが、儂も侯爵様からしっかり給金を頂いておりましたからな。老後の心配はないですじゃ。」
執事見習いのセバスに続いて、老執事のカルロス。若い侍女長のマリア。料理長のオルス。最年長の庭師のトマスが心配ないと言い、それよりもお嬢様が気になると言う始末で。
「私だって、皆に黙っていましたが、お忍びで町に出たときに商売をして、かなり貯金していますのよ?」
「お嬢様!あれほど、貴族の令嬢が商売をしてはいけませんと申し上げたでは御座いませんか!」
侍女長のマリアが迫り寄って叱り。
「まあまあ、お陰でお嬢様にも貯金ができたのですから、良しと致しましょうよ。」
セバスがやんわりとフォローを入れるが、火に油だったようで、マリアの怒りの矛先はセバスへと向かい、噛みつくのではないかと思うくらいの剣幕で。
「それでは、お嬢様はいかがなさいますか?王都に残られるのですか?」
「いえ、一度、お爺様の所へ行って、そこで少し考えたいと思います。」
祖父は父に当主の座を譲ってからは、貴族位を捨て、リバーサイド侯爵領で平民として暮らしている。もちろん、それなりの資産を持っているため、平民とは思えない暮らしぶりだが。
「なるほど。先代様の所なら安心で御座いますね。では、我々もご一緒したいと思います。」
「ですが、カルロス。私に皆を養える程のお金は無いのです。お爺様にお借りして、ちゃんと退職金を払いますから、皆には、自分の人生を歩んでほしいのです。」
「「「「「お断りします!」」」」」
「え!?」