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浅井心愛 プラスのストローク

作者: 灰猫

カラカラ・・・

「失礼します・・・」

1人の女生徒が入ってきた。

力ない感じだが体調を崩しているようでもなかった。


すぐに誠史郎が声をかける。

「いらっしゃい。どうしたかな?少し気分がすぐれないのかな?」

「カウンセラーの先生ですよね?」

おずおずと女生徒が聞いてきた。

「うん。そうだよ。桜井誠史郎といいます。何か話したいことがあったら気軽に言って?」

「先生、私・・いじめに遭っているみたいなんです・・」

「いじめ?落ち着いて。相談室へ行こう?」

生徒を促し、相談室に招く。相談室の札が使用中に変わる。

「ええと、君は?」

「1年の浅井心愛ここあです」

「何でいじめに遭っていることがわかるのかなあ?」

「同じクラスの竹内君が時々何も言わずにブスとかいってすれ違ったりするんです」

「その竹内君はグループを作って持ち物を隠したり、大声で悪口を言ったりするかい?」

「いいえ。だいたいすれ違うときとか、掃除のときとか、他の人に聞こえないくらいの距離で言ってきます」

「ふむ」

「小学校ではこんな事なかったから何か怖くて・・・」

「同じ小学校だったんだね?じゃあ1つ反撃をしてみようか?」

「反撃?」

「そう。ブスって言われたら、誰と比べているの?その子よりかわいくなるから言ってよ。って反撃してごらん?」

「ええ?そんなこと言うんですか」

心愛が動揺する。

「多分ね。竹内君は浅井さんと少し仲良くなりたいんだよ。でも上手く行動に移せない。

そして、無視されるって言うのが一番辛い事なんだ。だから、きつく接してしまう。

一言返すだけでも効果は高いと思うよ?」


「は、はい。少し怖いけど・・でもやってみます」

「無理しなくていいからね。少しずつが大事だよ?ブスって言われたら単純バカ

とかね(笑)怖がらずに適当な言葉を返してごらん?」


・・・・・


ずるぺったんずるぺったん教員用サンダルをひきずり

昼休みの1年の校舎の巡回をする。


「あー、暑いわ。廊下はキツイ」


心愛が誠史郎に気づく。

「先生~」

「おや、浅井さん。あれからどうなりました?」

「はい。あれからバカって言われなくなりました。

心愛が笑顔で答える。

あと、たまにあいさつもしてくるようになりましたよ」

「そうか。それはよかったね」

誠史郎が笑顔で返す。


「あー保健室のエアコンもう少し強く~」

アイスコーヒー片手に誠史郎がぼやく。

「だらしないですよ?桜井先生。でも浅井さん落ち着いて良かったですね」

「プラスのストロークが上手く効いたんですよ。男子の方がこの時期女子よりも体も気持ちも成長が遅い。

気になる子にうまく接することができないからこうなるんでしょう。まあ作戦勝ちということで」

「微笑ましいですね」

「さ、もうひと歩きしますかねえ」


誠史郎がまた長い廊下をずるぺったんと歩いていく。





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