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オフライン最強の第六闘神 <伝説の格ゲーマー、VRMMOで再び最強を目指す>  作者: 紙城境介
《RISE》激戦編――最強こそが試される

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第76話 プロゲーマー見習い VS MAO最強の男:孤高なる咆哮Ⅱ


 二たび、闘技場に轟音と閃光が迸る。

 二度目にしてようやく目に捉えた《メテオ・ファラゾーガ》は、あたかも太陽のごとき巨大な炎球だった。


 地面を焼き焦がしながら太陽が飛翔する。

 破滅的とすら感じるその炎球に比すると、ジンケの姿はひどく小さく見えた。

 だが、彼は逃げない。

 目前に迫った炎球に、ジンケが敢然と拳を振りかぶったのを、プラムは目撃した。


「うわああっ!?」

「ええええええ―――――っ!!?」


 観客席から悲鳴が上がる。

 彼らの目の前で、炎球が大爆発を起こしたのだ。

 それは、まっすぐに突き進んでいたはずの炎球が、ジンケの目前で不自然に浮き上がった、その結果。

 拳を天に突きあげたジンケを見れば、軌道が変わった理由は瞭然だった。


『はっ、弾いたああああ――――っ!? ジンケ選手、《メテオ・ファラゾーガ》を殴り飛ばしましたあああああっ!!!』


『《魔力武装》か! 絶妙なタイミングと打撃位置! この二つが揃えば、奥義級魔法さえも最小限のダメージで乗り切れる!!』


 弾けた悲鳴が歓声へと変わる中、ジンケが凄まじいスピードで駆け出した。

《手負いの獣》がすでに発動している。

 地面のクレーターを一瞬で駆け抜けた彼は、ケージに対して神速の拳を繰り出した。


 ケージは反応する。

 魔法剣の胸で受け止め、あまつさえ返す刀で反撃してみせる。

 しかしジンケもまた織り込み済みだった。

 鋼の糸を編み込んだ手袋で、反撃の斬撃を弾き返す!


 そこから先は、プラムの目では追いつけなかった。

 ただ、ジンケとケージの間で、色とりどりの火花が星のように瞬いているように見えた。

 どちらも守勢に入ろうとはしない。

 二匹の猛獣が互いの喉笛を噛み切ろうとしているような、真っ向からの打ち合いだった。


『あっ!?』


 二人にしかわからない無数の読み合い、駆け引き、化かし合い。

 その果てに、ケージのほうが後ろにたたらを踏む。


『ケージ選手、打ち負けたあっ!! これは!?』


『いくら魔法が強くても剣そのものは安物だ! 近接戦ではジンケ君に分があるっ!!』


 ケージが間合いを取った。

 ジンケがそれを追った。


 いつしかプラムは、二人の闘いに目を釘付けにされていた。

 他の観客も、もはや誰もブーイングなどしていない。

 悲鳴が上がる。

 歓声が上がる。

 どちらかがダメージを受けるたび、まるで自分が闘っているかのように声を上げる。


『ケージ選手ぅっ! 離れながら《メテオ・ファラゾーガ》あああああっ!! なんて贅沢な牽制だあああ――――っ!!!』


『が、弾いた! ジンケ君も読んでいるぞ! 人読みが利いてきたか!?』


 数千人に渡るすべての観客の意識が、たった二人の少年に乗り移っていた。

 拳が貫く先を、剣が斬り裂く先を――次の一瞬を、その次の一瞬を――飢え乾いた獣のように、今、ここにある闘いを貪らんとしていた。


 どちらが勝つか。

 どちらが負けるか。

 最も重要なはずの勝敗すら、いつの間にか意識から消えている。


 今はただ、目の前にあるこの闘いを―――!!


『ジンケ選手! 自分の間合いからケージ選手を逃がしません!!』


『武器の質の分、貼りついている限りはジンケ君が有利だ! このまま行けば逆転できる!! 行けぇえええッ!!!』


 行ける。

 誰ともなく、観客の気持ちが一致した――

 ――その瞬間のことだった。


 ジンケの眼前に、ケージの左手の指が突きつけられた。


 そこから小さな火球が射出される。

 ジンケの顔面で爆発し、彼は後ろに仰け反った。


『ふぁ、《ファラ》ぁ!? ここに来て自前の魔法! そして―――!?』


 そこからの数秒間を、プラムは陶然とした気持ちで過ごした。


 剣と炎の乱舞。

 ケージの身体がジンケの周りをくるくると舞いながら、剣技と魔法を間断なく繋げていったのだ。


 ジンケが力なく倒れたとき、その周囲には、炎の残滓が舞っていた。

 ライスシャワーのように降り注ぐそれの中で、ケージが軽やかな音を立てて、背中の鞘に剣を納める。

 その寸前に、プラムは見た。

 剣の刀身が、辺りに舞い散る火の粉を映して、赤く輝いていたのを。


 そして思い出す。

 MAO最強のPvEプレイヤー・ケージ。

 彼の異名のひとつには、確かこんなものがあった。


「……《緋剣乱舞》……」




◆◆◆―――――――◆◆◆―――――――◆◆◆




 見事……と、言わざるを得なかった。

 第1ラウンドの敗北をシステムに宣告されながら、オレは心から感服させられていた。


 先人曰く、弘法筆を選ばず。

 ケージはまさにそれだ。

 剣の強さのハンデを補って余りあるコンボ力――剣と魔法が絡み合った、芸術的とすら言える連撃。


 こんな人間が存在するのか、と思わずにはいられなかった。

 あいつ、マジでファンタジー世界の出身なんじゃねーの?

 そう思ってしまうくらい、剣と魔法を手足のように使いやがる。

 ……そういえば、ケージにはこんな異名もあったっけな。

 ――《生まれる世界を間違えた男》。


 だが。

 オレは、闘技場の反対側にいるケージを見据えた。

 脳裏に過ぎるのは、光の射さない絶望じゃない。

 記憶だった。

 経験だった。

 これまでに積み上げてきた努力であり、捧げてきた時間だった。


 追い詰められて初めて、明確に意識する。

 シンプルな論理が、オレの土台をしっかりと支えていた。


 あんたより、オレのほうが鍛錬を積んだ。

 だから――あんたじゃなくて、オレが勝つ。




◆◆◆―――――――◆◆◆―――――――◆◆◆




『さあ、第2ラウンドが開始されます! ジンケ選手はこれを落とすと敗北! 惜しくも3回戦脱落となってしまいますが――』


『……不思議だね。心配にはならないよ』


『ええ! 見てください、ジンケ選手の顔を! 果たしてこれが、崖っぷちに追い詰められた人間の表情なのでしょうか!?』


 ジンケの表情に必要以上のシリアスさはなかった。

 この状況を楽しむかのように、不敵な笑みすら口に刻んでいる。


 ああ――と、プラムは感じ入った。

 これだ。

 これが、今まで自分が見てきた、ジンケというプレイヤーだ。


 どんなときでも、どこかに余裕を残しているような……奥の手を隠し持っているような。

 だが、それは違ったのだと、今ならばわかる。

 彼はいつだってギリギリだった。

 余裕だったことなんて、きっと一度もなかった。


 それでも、そう見せる。

 そう見えるようにする。

 己の弱さと向き合い、打ち勝つことができるからこそ、彼はそれを表には出さないのだ。


「……ジンケさん……!」


 プラムは胸をぎゅっと押さえて、心の底から祈った。


 ――勝って。

 ――お願いだから、勝って!

 ――あなたこそ、勝者にいちばん相応しい……!


 その隣で、リリィが上空に現れたカウントダウンの数字を見上げている。


『3! 2! 1―――』


 闘技場の上空で、0のホログラムが燃え上がった。


『―――第2ラウンド、開始!!』


 開幕直後、ジンケは《ビースト拳闘士》のセオリー通り《虎に翼》を発動させる。

 しかし一方で、ケージは動きを見せなかった。


『ケージ選手、《メテオ・ファラゾーガ》を撃ちません! どういう意図でしょうか!?』


『ボーナスタイムは終わったってことさ。もう《メテオ・ファラゾーガ》は撃てば撃つほど有利になる技じゃない。ジンケ選手の対応力が上がっているのを、ケージ選手も感じているんだ……!』


 剣技と通常の魔法を織り交ぜて闘いながら、ケージは隙を見て《メテオ・ファラゾーガ》を撃ち込んでくる。

 しかしジンケは、それをことごとく、《魔力武装》の加護を得た拳で弾いていた。


 最初は、ほんの少し軌道を逸らすのがやっとだったはずだ。

 しかし、観客の目からも明らかだった。

 数を重ねるごとに、弾かれた炎球の軌道が、鋭角になっている!


 より完璧なタイミング。

 より効果的な打撃位置。

 ジンケの拳は、振るわれるたびに唯一絶対の解答へと近づいてゆく。


 観客の空気が興奮を帯び始めた。

 彼らにも、未来が見えかけているのだ。


 理不尽で圧倒的に見えた《メテオ・ファラゾーガ》――

 それが、闘いの中で洗練されていく技術によって、完全攻略される未来が。




◆◆◆―――――――◆◆◆―――――――◆◆◆




 オレは2回目の《虎に翼》を発動した。

 これでステータスでは優位に立ったが、こっちのHPもそこそこ削られている。

 それも《手負いの獣》が発動しない程度に――かつ、《メテオ・ファラゾーガ》一発で消し飛ばされるラインまで!


 闘技場を縦横無尽に駆け巡りながら、高速で交わされる拳と剣。

 1秒を60分の1に細切れにした世界で、オレたちはより自分に有利な状況を奪い合う。

 そうした当たり前の攻防の裏に、居合いの機を測るかのような緊張が張り詰めていた。


 無数の攻撃を交わしていながら――しかし、勝負は一撃で決まるだろう。

 ケージが抜き放つ必殺の一撃を、オレが見切れるか、否か。

 西部劇の決闘めいて、オレはその瞬間を待ち構える……!


 オレのアッパーを、ケージが剣の腹で受けた。

 いや――アッパーにジャンプを合わせられた!


 オレの攻撃を利用して高く舞い上がったケージは、魔法剣を両手で握って頭上に振りかぶる。

 ――来る!


「《メテオ》―――!」


 ()()()()()()()()()()


「―――《ファラゾーガ》ッ!!」


 時間にして、5フレームにも満たない。

 しかし明確に、《メテオ・ファラゾーガ》は普段よりもワンテンポ前倒しにして放たれた。


 それだけで、充分。

 命を削りながら合わせてきたタイミングを、完全に外される。

 不意打ちだった。

 この瞬間のために、ケージはあえてオレにタイミングを測らせる機会を与えていたのだ。


 太陽のような炎球が、轟然と迫る。




「―――読んでたぜ」




 オレは笑った。

 途中から、わかってたんだ。


 わかりやすい魔法名詠唱は、実は《メテオ・ファラゾーガ》の発動とは何の関係もない。

 真の発動トリガーから目を逸らすためのスケープゴートだ。


 真のトリガーは、手である。

 ケージは《メテオ・ファラゾーガ》を放つとき、()()()()()()()()()()()()

 ――柄を両手で握り、ほんの1センチほど、捻る。

 その仕草こそが、真の発動トリガーだ―――!!


 詠唱に惑わされず、そこに注目してさえいれば、タイミングを間違えることはない。

 体勢、タイミング――何もかも完璧だった。


《魔力武装》スキルの加護を得た拳が、太陽のような炎球に突き刺さる。




◆◆◆―――――――◆◆◆―――――――◆◆◆




 炎球が。

 曲がった。


 いちいち記憶と照合する必要もない。

 90度を超える鋭角で、炎球の軌道が屈折する。

 それは闘技場と観客席を隔てる透明な壁に激突し、花火のように光と轟音を撒き散らした。


『完っ璧ィいぃいいいいいいい――――っっ!!! 《メテオ・ファラゾーガ》破れたりいいいい――――っっっ!!!!』


 歓声でアリーナが揺れる。

 プラムも腰を浮かして叫んでいた。


 いつしか、頬を涙が伝っている。

 今のジンケは、まるで光のようだった。

 一人のゲーマーとして、彼の姿は希望に満ちていた。


 その姿で、闘いで、彼は語っている。

 自分たちは、こんな風にもなれるのだと。

 たとえ才能が底を突いても。

 センスの差を突きつけられても。

 ゲーマーは、こんな風に闘うことができるのだと―――


 プラムの網膜と心に、強烈に焼きついた。

 肩書きじゃない。

 称号じゃない。



 絶望すらも糧にして強くなる―――()()()()()()()の在り方が。



《メテオ・ファラゾーガ》を打ち破られたケージに、反撃の手段は残されていなかった。

 第2ラウンドが終了する。

 1対1で、ついにこのときがやってくる。


 最終セット、最終ラウンド。

 最後に立っていられるのは、たったひとり。


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