カルチャーギャップで日本滅亡
初めてのホームステイ先はココドコヤネン公国というヨーロッパの小さな国だった。
硬い印象の名前とは裏腹に陽気で気さくな人が多かった。
「ハ~イ、マサーシ、朝御飯できました~ヨ」
ホームステイ先のホストマザーに呼ばれ、僕は階下に降りて行った。
そこにはいかにもヨーロッパ然とした朝食が並べられている。
ホストファミリーに囲まれながら僕は卓についた。全員で主への御祈りをすましてから朝食を取り始める。
「オーゥ、マサーシ、ノーノー」
ホストマザーに呼び止められた。
「パンは自分の左隣のものを食べるんでーす」
「ア、 ソーリー」
テーブルが楕円で僕は自分から向かって右のパンを取ってしまったのだ。
僕はホストマザーに頭を下げた。
「ノー、マサーシ、この国では頭を下げるのは『頭突きかますぞ』という意味で無礼なことでーす」
「そ、そうなんですか?」
僕は首をかしげた。
「ノー、ノーマサーシ。首をかしげるのは『お前の言葉なんて聞いてられるか、アァン?』という意味で使ってはなりませーん」
そうなの? この国の人は日常的に首をかしげないの?
「本当にソーリー、悪気があったわけじゃないんです」
僕は顔の前で両手をつけて、ごめんなさいのポーズを――
「オー、マサーシ、朝食の席でそんな……」
ホストマザーが顔を赤くした。ホストファザーが怒りの形相。
「マサーシ。ここでは男が女をホテルに誘うときだけそのポーズを使うんだ」
「えええぇ!」
めっちゃかっこ悪い誘い方してんな、この国は。嫌がる女性に食い下がってるよね、絶対。
「マサーシ、あんまり私たちをからかうようだと、日本に帰ってもらうぞ」
ホストファザーが立ち上がった。身長二メートル程ある。
「マジすいませんでした、反省しております」
僕はホストファザーの迫力に思わず土下座。
「ノオオオオォオオオオオ―――――――」
ホストファミリーが全員立ち上がった。
「土下座なんて、最低の行為をしたな日本人。『一族郎党根絶やしにするなんて土下座してても余裕だぜ』とは良い度胸だ! 我々はココドコヤネン人としての誇りを傷つけられた、戦争だ!」
こうしてココドコヤネン公国は日本に侵攻を開始した。ココドコヤネン公国はとても強く、自衛隊は所々で敗戦を喫した。
「くっ、最早、抵抗は出来ない。降参だ」
そう言って自衛隊は手を挙げたが――
数秒後、撃ち殺された。
ココドコヤネン人は言う。
「へっ、両手を上げて『抹殺してくれ』とは狂ってやがるぜ」
日本は壊滅した。
ちゃんちゃん。