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龍と鑑定士 ~ 絵から出てきた美少女は実はドラゴンで、鑑定士の弟子にしてくれと頼んでくるんだが ~  作者: ふっしー
第一部 第三章 王都ヴェクトルビア編  『セルク・オリジン・ストーリー』
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ヴェクトルビア王、アレス


「どうぞ、こちらへ」

 

 王宮から迎えに来た馬車に乗ること二十分。

 二人はヴェクトルビア王宮へとやってきていた。

 到着してすぐさま、二人は謁見の間に通される。

 少し待っているとアレス公本人が姿を現した。

 

「あれが王様なの?」

「フレス、少し黙ってな」

 

 ヴェクトルビア王――アレス・ヴァン・ヴェクトルビア。

 公共事業として井戸を掘ることで、文字通り民を潤し、水不足で悩んでいたヴェクトルビアを救った名君。『水の王』とも呼ばれている。

 またセルクマニアとしても有名で、あの『セルク・オリジン』を、七枚中四枚も所持しているほどである。


「久しいな、ウェイル」

「ああ、久しぶりだ。こんな仰々しい場所で会うのは初めてだが」

「そういえばそうだな。いつも会うのはオークションハウスだからな! どうだ? たまには王様らしく見えるか?」

「ああ。その大層な髭が、今日ばかりはよく似合ってるよ」


 実のところ、ウェイルとアレスは友人である。

 昔アレスがお忍びで参加していたオークションハウスにて偶然知り合い、そこで意気投合。そのまま二人は夜通し飲み明かしたことがある。

 それ以降、ウェイルとアレスはちょくちょくオークションハウスで会い、親交を深めていた。

 

「どうだ? セルクのコレクションの方は」

「おかげさまで順調に集まってるよ。『セルク・オリジン』の最後まで見つかったからな」

「シルグルのとこにあった奴だな」

「そうだ。シルグルに鑑定を依頼していてな」

「……なるほどな」

「それにしてもウェイル。今日は随分と可愛い娘を連れているじゃないか?」

「こいつか? こいつは俺の弟子だよ」

「おお、ついに弟子をとったのか! 珍しいこともあるもんだ! 名を何という?」

「ボク、フレスって言います! よろしくね、王様!」

 

 王相手にも物怖じしない二人の態度に、周囲の者からはコソコソと批判の声が上がる。

 

「なんだ? あの鑑定士は……。陛下に向かってなんて口の聞き方だ」

「それになんだあの恰好は。陛下にお会いになるというのに、ドレスコードひとつ守れぬか。品のないことだ」

「連れ立っているのは幼女ではないか……。ロリコンか?」

「誰が幼女じゃーー!!」


 周囲の囁きにウガーッと憤怒するフレス。

 今にも誰かに噛みつきそうだった。


「おい、お前たち、客人に失礼であろうが! すまぬな、お嬢さん」

「全くだよ! ボクは幼女じゃないもん!」


 事情を知らぬ者からしたら立派な幼女だよ、とウェイルは心の中で呟き、苦笑した。


「アレス。俺は世間話をするためにここへ来たわけじゃない。シルグルに頼まれて来たんだ」

「……うむ。なるほどな」


 アレスは利口な王だ。

 ウェイルのそれだけの台詞で、話の内容は大方理解したらしい。


「よし、なら我がコレクションルームに来るがよい。フロリア!」

「はっ!」


 アレスが呼ぶと、一人のメイドが機敏な動きでウェイルの前に現れた。


「フロリアよ。客人をコレクションルームまで案内しなさい」

「かしこまりました」

「ではウェイル、また後でな」

「ああ」


 そう言うとアレスは謁見の間を去って行った。

 残った大臣達の鋭い視線が二人に突き刺さる。


「……ねぇ、ウェイル。ボク達、睨まれてる?」

「睨まれてるな。ま、気にするなよ」


 フロリアは王が去った方へ、今一度深々と頭を下げると、二人に向き直った。


「御二方のことは、私メイド長のフロリアがお世話させていただきます。早速ですがコレクションルームへと案内いたしますので、ついてきてください」


 フロリアは二人を一瞥後、言うが早いかそそくさと――風のようなスピードで謁見の間から去って行った。


「ウェイル! あのメイドさん、速攻で出て行っちゃったよ!?」

「あのメイド、案内する気あるのか?」

「ウェイル、置いて行かれちゃうよ! 急ごう!」


 二人は急いでフロリアの後について行ったのだった。

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