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龍と鑑定士 ~ 絵から出てきた美少女は実はドラゴンで、鑑定士の弟子にしてくれと頼んでくるんだが ~  作者: ふっしー
第一部 第三章 王都ヴェクトルビア編  『セルク・オリジン・ストーリー』
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王都『ヴェクトルビア』


 ――次の日の朝。


「おい、フレス、起きろ! そろそろ到着するぞ!!」

「ふみゃぁぁぁああああ、う、う~ん、もう朝なの……?」


 あれから朝まですっかり熟睡していたフレスは、重い瞼をこすりながら大きな欠伸を一つして目を覚ました。


「後小一時間ほどで目的地だ。外を見てみろ」

「う~ん、お外?」

「ああ。丁度今が絶景だぞ」

「ボク、もう景色は見飽きちゃったんだけど……――う、うわあああ!? す、凄い景色! これだよ! ボクはこんな景色が見たかったんだよ!!」


 寝起きだというのにフレスが歓声をあげてしまったほど、窓からは幻想的な王都の景色が映し出されていた。

 夜の帳が空気を清め、朝日は優しく王都を照らし、白と橙が王都を色づけて幻想的な雰囲気を醸し出している。

 さらに一際目立つのは都市中央部にそびえる巨大王宮。

 日の光を反射して、王宮は一際輝きを放っていた。

 そんな光り輝く王宮以上に目を輝かせて、フレスははしゃぎながら窓から身を乗り出していた。


「あの建物、眩過ぎるよ!? なんで!? どうして!?」

「あれはヴェクトルビア宮殿という建物でな。外装は全面ガラス張りで出来ている。朝日によって輝く王宮の姿は、この都市の名物の一つにもなっているほどだ」


 王都ヴェクトルビアの象徴ともいえる王宮『ヴェクトルビア宮殿』。

 汽車の窓から見るそれは、まさにダイヤモンドのように輝いており、誰もが心を奪われる美しい建造物である。


「フレス。少し落ち着け。あまり興奮すると翼が出るだろ」

「むぅ、大丈夫だもん! それにこのワンピースには穴が空いているでしょ? 破れないから平気だもん!」

「お前、その穴は恥ずかしいんじゃなかったのかよ」

「恥ずかしいよ! ボクは嫌だって言ったのに、ウェイルがこれでいいって言ったんじゃない! もう開き直るしかないんだもん!」

「開き直っていたのかよ……」

「そんな服のことよりも、あの光る建物を見に行こうよ!」

「なーに言ってんだ。あれは王宮って言っただろ。王族とその家臣しか入れない場所なんだよ」

「えーー!! そんなーー!! 王様ってズルい!」


 ブーブー文句を垂れるフレスを尻目に、下車の準備を進めるウェイル。

 そこに別車両にいたステイリィが姿を見せた。


「おはようございます、ウェイルさん」

「ああ、おはよう」

「私が添い寝しなくてもちゃんと眠れました?」

「お前といる方が眠れないだろうよ」

「そ、それは私が近くにいると――性的に興奮するということですか!?」

「うるさくて、うっとうしくて、うざったらしくて眠れんだけだ」

「またまた、照れちゃって可愛いですねぇ!」

「えっと、もしかしてステイリィさん? どうしてここに?」


 朝から騒がしいステイリィを見て、昨日のことを知らないフレスが驚いている。


「そういえばフレスは知らなかったな。昨日この汽車にステイリィが乗ってきたんだよ」

「おはよう、フレスさん」

「う、うん。おはよう……」


 ステイリィが求めた握手に、おずおずと答えるフレス。

 実のところ、フレスはステイリィに対して苦手意識を持っている。

 彼女のウェイルへ対する過剰な行動に、少し不快な気持ちを抱いているからだ。

 しかし好ましく思っていないのはステイリィも同様らしく、ステイリィはフレスの耳元にこっそり近づくと、


「フレスさん? 抜け駆けしたら――潰すよ?」

「ひぃやあ!! 何を潰すの!?」


 などと、とんでもないことを耳打ちしてきたのだった。


「うう……最近怖い女の人ばっかり出会うよ……」

「何か言った? フレスさん?」

「な、なんでもないよ!!」

「何やってんだ、二人とも。もう駅に着くぞ」


 そんなやり取りがあったなんて、これっぽっちも知らないウェイルであった。





 ―●○●○●○―





 ウェイル達を乗せた汽車は、ようやく無事にヴェクトルビア駅へと到着した。

 王都に座する駅ということで、ヴェクトルビア駅は経済の中心を担うマリアステル駅ほどではないにしても、数多くの人達で混み合い、賑わっていた。


「それではウェイルさん。私は治安局に向かいますので、ここでお別れです。またお会いしましょう」

「ああ」


 別れの握手を済ますと、ステイリィは部下を引き連れて駅のホームから出て行った。


「ウェイルさん。くれぐれも気を付けてくださいね」


 ステイリィは別れ際にそう残していった。

 ウェイルも無言で頷き、手を挙げて答えたのだった。


「さあ、フレス。俺達も行くとするぞ」

「そういえばボク、行先を聞いていないんだけど、どこにいくの?」

「ああ、伝えてなかったっけな。今回の出張先は『ルミエール美術館』だ」


 ――ルミエール美術館。

 アレクアテナ大陸最大の美術館であり、大陸中から集められた芸術品・美術品が展示されている。

 特に有名なのが『セルク・ラグナロク』と呼ばれる、巨匠セルク・マルセーラの生涯最後の作品が展示されていることだ。

 この絵画を一目見るために、大陸中からセルクファンが集まる。

 ゆえにルミエール美術館は、ヴェクトルビア有数の観光名所になっている。

 今回の依頼は、そのルミエール美術館の館長、シルグル氏からのものであった。

 だがウェイル自身、これから何を鑑定するのか、大まかにしか知らされていない。

 手紙には「セルクの作品を鑑定して欲しい」と、それだけしか書かれていなかったからだ。

 それでもセルクという名前があるだけで、並大抵の鑑定品とは違うということは判る。


「どんな美術館なの?」

「大陸最高と評価していい美術館だ。アレクアテナ大陸に存在する数多くの美術品の中でも、最高傑作のみを展示している美術館だからな。珍しい神器の所蔵量も大陸一だし、鑑定士を目指す者としては、一度は足を運ぶべき場所だ。いい勉強になるはず」

「そんなに凄いの!? よ~し! ボク、頑張って勉強するよ! 早く行こうよ、ウェイル!!」

「お、おい!?」


 言うが早いかウェイルの手をとって走りだしたフレス。

 凄まじい龍の力に引っ張られ、ウェイルは半分宙に浮いたような形で引きずられていく。


「フレス! 止まれ!」

「止まれないよ! 早く芸術品を見たいもん!」

「だからちょっと待てって!」

「待てないよ!」

「いや、だからルミエール美術館はこっちとは反対の方向だ!!」

「――……え?」


 猪突猛進状態のフレスが足を止めたのは、駅から一キロほど離れた場所であった。

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