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龍と鑑定士 ~ 絵から出てきた美少女は実はドラゴンで、鑑定士の弟子にしてくれと頼んでくるんだが ~  作者: ふっしー
最終部 最終章 滅亡都市フェルタリア編『龍と鑑定士の、旅の終わり』
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二十年の時を越えて


「……あら? ……貴方は……!!」


 演奏を続けながら、アイリーンはフレスに気づき、視線を送ってきた。


「私……また意識が飛んで……?」


 メルフィナと話したところまでは覚えていたが、鍵盤を一つ叩いた瞬間から、アイリーンの記憶は飛んでいる。

 どうして記憶がないのかわからず、少々混乱したものの、自分のすべきことだけは理解していた。

 だからこそとでも言うべきか、身体も無意識にこうして鍵盤を叩き続けている。

 アイリーンが自我を取り戻した理由。

 それは目の前に現れたフレスという存在に、アイリーンの感情が異常なまでに揺さぶられたからだ。


「……貴方は氷の龍……!? また私の邪魔をしに来たというの!? ほんと、嫉妬深い娘!」

「何言ってんだ! ボクはずっと、ずっとずっと、お前に復讐することだけを考えていたんだ!!」

「ずっと? さっき会っていたばかりじゃありませんこと?」


 アイリーンは、外の世界は二十年という時が経過したことを知らない。

 フレスとは今の今まで交戦していたという記憶しかない。


「意外に冷静ですのね? さっきは凄まじく怒っていらっしゃいましたよ? 自我を失うほどにね」

「今だって、狂ってしまいたいくらい怒ってるよ……!! あの時は結局逃げられた。今回はそうは行かない!」

「平民の女一人殺したくらいで何だって言うんでしょうね? 私は誇り高きラグリーゼ家の娘! あの小娘はこの私に恥をかかせたのです。貴族として罰を与えるのは当然の事! もし貴方も私の演奏を邪魔するというのであれば容赦しませんわよ?」

「容赦しない? それはこっちの台詞だ!! ボクはもう、我慢の限界だ!!」

「――――!?」


 超至近距離から放つ、フレスの氷の弾丸連射。

 氷の砕ける音と冷気が充満し、周囲を白く染めていく。


「……くそ、結界が固い……!! ゼロ距離から撃ったのに……!!」


 だがフレスの弾丸は一発もアイリーンにヒットしない。

 全て結界によって弾かれてしまっていた。

 判っていたことではあるが、この結界の強度は凄まじいものがある。


(今のボクの魔力じゃ、フェルタクスの魔力には太刀打ちできない……!!)


 人の娘の姿で出せる魔力には限界がある。

 だがフレスの半身は、もうこの世にはいない。

 自分の力だけでこの結界を壊すことは、不可能かも知れない。


「……あらあら、少し驚きましたけど、結局この様ですのね? 貴方の力は私には届かない。さっきと全く一緒ですこと。私も気兼ねなく演奏に集中できますわ?」

「演奏を止めろ! さもないと大変なことになる!」

「止めるわけがないでしょう? メルフィナが用意したくれた、私だけの演奏会ですのよ? この曲も、もう私の曲みたいにしっくりと馴染みますわ」

「その曲を作り直したのはライラだ! お前のなんかじゃ決してない!!」

「ふん、死んだ人間には何も言う権利はないのです。ま、あの子がもし生き返って(・・・・・)私に文句を言ったところで、また同じことをしてあげるだけですけどね? 貴方も不満があるなら直接私を止めたらよろしいだけですわよ? 貴方にそれが出来たら、ですけど」

「く……!! ――――あれ……? ……生き返って……?」


 そう言えば、どうしてアイリーンは蘇っているのだろう。

 肉体はフェルタクスの魔力で保存されていたと考えれば納得いくが、どうして魂までがここにあるのか。


「そうか……!!」


 答えは本当に簡単だった。

 さっきメルフィナが使った神器『無限地獄の風穴コキュートス・ホールゲート』。


「あの神器があれば……!!」


 フレスは閃く。

 この結界を破壊する、ただ一つの方法を。

 ならばやることはこれしかない。


「早くウェイルの所に行かなくちゃ……!!」

「あら、諦めちゃいますの? 賢い選択です。負け犬は負け犬らしく、逃げ帰るのがお似合いよ」

「アイリーン! ボクは君を許さない。必ず、ライラの仇は取る。待ってろ!」


 もしかしたら最初から、この方法しかなかったのかも知れない。

 そう、フレスは心の中にもう一人の存在がいて、初めて一人前であるのだ。

 フレスは翼をはためかせ飛翔する。


 目指すはウェイルの元。


 その目的は――フレスベルグの復活。



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