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龍と鑑定士 ~ 絵から出てきた美少女は実はドラゴンで、鑑定士の弟子にしてくれと頼んでくるんだが ~  作者: ふっしー
第一部 第三章 王都ヴェクトルビア編  『セルク・オリジン・ストーリー』
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暗躍

「フン、フフン♪ ……ああ、やっぱりエルフの薄羽は惚れ惚れするほど美しいねぇ……! 舐めちゃいたいくら艶やかだ……!」


 陰湿な雰囲気の漂う都市に浮かぶ、小さな古城。

 そこで一人の男が、自慢のコレクションを眺めながら気分よく鼻歌を歌っていた。


「……フフフ。しかしあの王子様、よく決断したものだねぇ」


 古びた玉座に腰を下ろすその男は、手に持つ杯を口にする。


「久々に愉快だなぁ。過激派の皆が聞けば、僕と同じように鼻歌交じりで小躍りでもしたくなるだろうねぇ」


 心の底から嬉しそうに顔を歪めたその男は、そのまま杯の酒を一気に呷る。


「……美味しいお酒だね。農作都市サクスィルは葡萄酒を作らせたら大陸一だね。素晴らしい」


 男がワインに対し賛辞の言葉を贈ると、その刹那、男の前にフードを被った者が現れた。


「美味しいでしょう? 手に入れるのに結構苦労したんですよ?」

「そうだろうねぇ。しかし最高級のワインがお土産なんて、洒落てるねぇ」

「喜んでもらえて何よりです」


 美味なワインに満足したのか、男はワイングラスを傾けながらフードの者に笑みを送った。


「なんて良い酒なんだ。しかしこれほどまでに美味しく感じるのは、この酒本来の味だけが要因ではないのだろうね。やっぱり酒というのは良いタイミングで、良い知らせを肴にし、最高のコレクションを眺めながら飲むのが一番美味しい」

「そういえば、ルシャブテのバカ。ドジって治安局に捕まっちゃったそうですよ?」

「ルシャブテって、あの眼球性愛(オキュロフィリア)で趣味の悪い男? へぇ、捕まっちゃったんだ」

「いやいや、趣味の悪さなら貴方も負けてませんけど」

「君、ルシャブテと仲良くなかったっけ? 助けなくていいの?」

「別に仲良くはないですねぇ。ぶっちゃけ死んだって構いませんよ?」

「酷いこと言うなぁ。でも彼のおかげなんだよね。僕のコレクションが増える日が近くなったのは」

「ルシャブテの奴、穏健派の連中をいい感じに牽制してくれましたしね。感謝した方がいいんじゃないですか?」

「そうだね。次あった時に彼の好きな『人の眼球』でもプレゼントするよ。これでようやく『ダイヤモンドヘッド』の入手、そして『龍』が手に入るね。目的に一歩前進しそうかな?」

「いよいよ、ですか?」

「うん。もう僕も欲しくて欲しくて我慢ならないからさぁ。そうだ、ダイヤモンドヘッドからくり抜いた目玉は全部ルシャブテにあげよっと。僕は要らないし丁度いいね」

「うわぁ、趣味悪いですねぇ……」


 玉座の男は空になった杯を置いて、ぐっと背伸びをするために立ち上がった。


「準備の方、念入りにお願いね? 龍が相手となると現状では戦力不足だから」

「承知いたしました。私に良いアイデアがありまして」

「アイデア?」

「ええ。龍と戦うための戦力を一気に確保できる、素晴らしいアイデアです。そのためには貴方の持つ神器が必要でして。借りていきますけどいいですか?」

「神器? うん、いいよ。もしかしてこれのことかな?」

「ご明察。これを使えばどうなるか、想像するのは簡単でしょう?」

「なんとなくはね。いいよ、好きに使って。後は任せるから」

「お任せを」


 フードの者は玉座の男からとある神器を受け取ると、この場から姿を消した。


「フフフ、楽しくなってきたね……。さあ、それでは始めようか」


 軽い口調で手を上げ、男は言い放った。


「裏切り者、イレイズの――送別会をね……!!」


 たった一人の笑い声が、寂れた古城にこだましていた。





 ――●○●○●○――





 芸術大陸――『アレクアテナ』。


 そこに住まう人々は、芸術品や美術品を生活の一部として嗜み、豊かで芸術的な文化を築いてきた。

 そしてそれらの芸術品を鑑定する専門家を、鑑定士という。


 鑑定士によってつけられた鑑定結果は、この大陸の市場を形成・流通させる指標となり、経済活動において非常に重要な役割を果たしている。

 

 アレクアテナ大陸にとって、プロ鑑定士の存在は必要不可欠であり、それ故に特別な特権を与えられている。


 その為、プロ鑑定士を志すものは多く、超難関と呼ばれる試験を突破してプロとなった鑑定士は、多くの人から尊敬と信頼を集める職なのである。


 そのプロ鑑定士の一人、ウェイル・フェルタリアは、龍の少女フレスと共に、鑑定依頼をこなしながら大陸中を旅していた。

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