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龍と鑑定士 ~ 絵から出てきた美少女は実はドラゴンで、鑑定士の弟子にしてくれと頼んでくるんだが ~  作者: ふっしー
最終部 最終章 滅亡都市フェルタリア編『龍と鑑定士の、旅の終わり』
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ニーズヘッグの謝罪

「あはははは! さらに一体追加! さて、残るはフレスだけだね! ウェイル、邪魔しないでね?」


 剣での戦いは終わりだと言わんばかりに、メルフィナは暴風を操り、ウェイルの身体を吹き飛ばした。

 その暴風はウェイルだけでなく、テメレイアにも襲い掛かる。


「うっ……!? うわああっ!?」


 体重の軽いテメレイアの身体は、思いっきり吹き飛ばされてしまう。


「レイア!!」

「あ、ありがとう」


 さっきとは違い、しっかりと着地したウェイルは、走り込んで吹き飛ばされたテメレイアをキャッチ。

 激しい暴風が吹き荒び、暴風は壁となって二人を閉じ込めた。

 その間に、メルフィナは白い刀身を煌めかせ、未だ力が戻らないフレスへと歩み寄る。


「さて、フレスが回復する前に、やっかおうかなぁ!」

「うう……!! 力が入らない……!!」


 ずりずりと後ずさりするも、メルフィナに追い付かれる。


「さあ、フレスも皆に続こうか」

「ひっ!?」


 ケルキューレの白い刃が、フレスの首筋に当てられた。

 フレスにとってこの剣は、半身(フレスベルグ)を奪ったトラウマの神器。

 そんな刃を突き付けられたのだ。身体の自由云々関係なく、ショックで身体が震え動けないでいた。


「フレス、逃げろ! フレス!!」

「龍は死なない。だからフレスは死なないけど……でもあの剣は心を壊す! それは龍も同じ……!! フレスちゃん、お願いだから逃げて!!」

「ぼ、ボクだって逃げたいけど……!! 身体が言うことを聞かないんだ……!!」

「さ、そろそろやっちゃうよ! お別れは済んだよね?」


 メルフィナは剣を高らかに振り上げた。


「さよなら、フレスちゃん。ライラにもよろしくね」


 フレスの心を食いちぎらんと、ケルキューレを振り下ろされた。



「――フレスは殺させないの……!!」



「――え……?」



 自身最後の悲劇を前に、思わず目を瞑ってしまったフレスだが、いつまで経っても刃は降ってこない。

 どうしたのかと目を開けると、そこには信じられない光景があった。


「ど、どうして……? どうして――ニーズヘッグが……?」

「……よ、良かったの……、フレス、無事なの……」


 フレスを庇うようにして目の前に立つのは、フレスが憎しみを向ける相手、闇の龍ニーズヘッグであった。

 ニーズヘッグはその身体で、白い刀身を受け止めていたのだ。

 口から血を流しながらも、ニーズヘッグは笑っていた。


「フレス、無事……?」

「……う、うん……!!」

「よ、よかったの……!!」

「どうして君がボクを!? 自分を盾にしてまで助けたの!?」

「……ずっと、フレスに謝りたかったの……。あの時のことを……」


 ――あの時。


 それは二十年前の、あの瞬間のことだろう。


「……フレスの親友を死に追いやってしまった。あの時、まだ判っていなかったの。人間の親友っていうのが、どんなものか。でも今は判るの。フロリアが教えてくれたの。……だからずっと、ずっと謝りたかった。……ずっと、ずっと後悔してた。でも……最後にようやく言えそうなの」


 ニーズヘッグの目から光が消えていく。

 ケルキューレの力で心が消えかかっているのだろう。

 それでもニーズヘッグは、最後の最後までフレスの方へ笑顔を向け続けた。


「……フレス、ごめんなさい……。許して欲しいの……。そして、次会えた時は……また、友達になって欲しいの……!!」

「に、()()()()()……!!」


 フレスは、自然とその懐かしい呼称を使っていた。

 あの事件からずっと、封印し続けてきた()()()()()という二人称。

 ニーズヘッグの動きが止まる。

 剣に貫かれ、立ったまま、意識を失ったのだ。


「ニーちゃん……!! ボクは……ボクは……!!」


 皮肉にも、今ようやくフレスの身体に力が戻った。

 ケルキューレから離れるべく、すぐさま体勢を整えて距離を取る。

 メルフィナが剣を引き抜くと、ニーズヘッグは意識なく倒れたのだった。


「やれやれ、臭い三文芝居だったね」

「三文芝居、だって……!?」


 その言葉に、フレスの堪忍袋の緒が切れた。


「今のニーちゃんの言葉が、三文芝居だって!? バカ言うな! ニーちゃんは、拙いながらも全力で、ボクに気持ちを伝えてくれたんだ! そりゃニーちゃんの事はまだ許せないところもあるよ! でも、それでもニーちゃんの気持ちだけは痛いほど理解出来た! これほど心に響く言葉はなかった! それのどこが三文芝居なんだ!!」


 フレスの周囲で魔力が逆巻き、空気を凍りつかせていく。

 その様子を見て「いやぁ、困ったなぁ」と、メルフィナは頭を掻いた。


「余計な連中まで来ちゃったようだしねぇ」


「――ニーちゃん!! いやあああああ、ニーちゃあああああああああああん!!」


 部屋に入ってきたのは、フロリアを先頭にしたアムステリア達。

 フロリアは、ニーズヘッグが力なく倒れる瞬間を目撃していた。


「馬鹿ニーちゃん!! 嫌な予感がするから先に行くとか言って、本当嫌なことになってるじゃない!! 馬鹿だよ、ニーちゃんは!! うわああああああああああああ!!」


 あのフロリアが涙している。

 今までのフロリアを考えれば、それは驚愕に値することであるが、フロリアとニーズヘッグの関係を知った今なら、彼女の気持ちに同情できた。


「……リ、リーダーがやったの……?」

「そうだよ? 龍が必要だって言ったよね? あれ? フロリアには言わなかったっけ? まあ裏切り者に教える必要もないかな?」

「許さない……!!」


 フロリアは手に斧を展開し、メルフィナに斬りかかる。

 だがメルフィナはそれを軽々と避けて、半ばカウンター気味にフロリアの鳩尾に強烈な蹴りをブチ込んだ。


「ぐほっ……!?」


 鳩尾に入ったのがきつく、足で踏ん張れない。

 そのまま蹴り飛ばされて、部屋の壁に激突した。


「許さない? うん、別にいいよ、それで。最初から許してもらうつもりもないし、逆にこっちも君の裏切りを許すつもりはないからさ。それより皆さん、揃ったみたいだね。こっちも残りの龍はフレスだけだし、多分四体分の龍の魔力だけでもフェルタクスの制御は問題ないだろうしさ。折角だから見ていきなよ。アレクアテナ大陸最後の演奏会が始まるよ!」


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