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龍と鑑定士 ~ 絵から出てきた美少女は実はドラゴンで、鑑定士の弟子にしてくれと頼んでくるんだが ~  作者: ふっしー
最終部 最終章 滅亡都市フェルタリア編『龍と鑑定士の、旅の終わり』
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ミルの頼み

 味方であったティアですらも、メルフィナは容赦なく生贄に差し出した。

 どれだけ仲が良くても、ティアは龍だ。最初から捨て駒だったのだ。

 このままではフレスもミルも、ティアのようにされるのは時間の問題だ。


「イドゥ、そっちの二人の龍もさっさとやってしまおうか。ニーズヘッグは?」

「心配ない。奴もすぐにここへ来るだろう」

「そっか、ならさっさやろう」


 龍殺し(ドラゴン・キラー)は、龍二人を抱えながらメルフィナの元へ歩いている。

 このままだと二人は、ケルキューレによって心を破壊されてしまう。 


「ウェイル、行くよ! もう時間が無い!!」

「ああ!」


 テメレイアはポケットからガラス玉を取り出すと、それを龍殺しに投げつけた。

 神の詩を口ずさむと、途端にガラス玉は爆発。

 ただしミル達の至近距離である為、爆発の威力は少々抑えた。

 

 ――それが甘かった。


「――グオオオオオオオオオオオオッ!!」


 致命傷には至らなかった龍殺しは、目を真っ赤に染めて、怒り心頭で咆哮した。

 爆発の原因をテメレイアと見定めて、大きく飛翔し襲い掛かってくる。


「くっ、威力が足りなかった……!! なら何発だって投げつけてやるだけさ!!」


 龍殺しは先程戦ったゾンビデーモンの比ではないほど強大だ。

 テメレイアは持っているガラス玉のほとんど用いて、龍殺しの息の根を止めるために爆発を起こした。


「ウェイル、そっちは頼む! ミルとフレスちゃんを助けてくれ!」

「ああ」


 テメレイアが龍殺しの相手をしている最中、ウェイルもまたもう一体の龍殺しの相手をするため、氷の剣を精製していた。

 ウェイル側の龍殺しは、フレス達を抱えている。

 奴が二人に酷いことをする前に、素早く決着をつけなければならない。


「――グオオオオオオオオオオオオッ!!」


 ウェイルの姿を見て龍殺しが咆哮した、その刹那。


「――よくも俺の弟子に酷いことをしてくれたな」


 咆哮が終わるまでのわずかな間に、ウェイルは決着をつけていた。

 龍殺しは脳天を氷の剣で貫かれ、絶命していたのだ。


「うおっ!? 瞬殺! かっこいいじゃない!」 

「時間がなかっただけだ」


 今の光景を見たメルフィナが冷やかしを入れてくる。

 そしてテメレイアの方も、龍殺しの頭部を爆発で吹き飛ばしたところだった。


「メルフィナの相手は俺がする。二人のことは頼む」

「判ったよ!」


 任せられたテメレイアは、すぐに二人の元へ駆けつけた。


「二人共、もう大丈夫さ。龍殺しは始末した。早く力を取り戻すんだ」

「……れ、レイア……、ありがとう、なのじゃ……」

「た、助かったよ……!」


 解放されたばかりということで、力が戻るのにはもう少し時間が掛かりそうだ。

 徐々に力が戻っていく二人。

 先にミルが立ち上がろうと、足に力を込めた瞬間である。


(――影!? ……それにまた力が抜けて!?)


 さっと上を向くと、そこには何故か龍殺しの姿が。

 そして龍殺しは、テメレイアをターゲットにしているようだ。

 急降下して、その首をはねようとしている。

 テメレイアはまだそのことに気づいていない。


「――レイア!」


 少しだけ戻った力を振り絞り、ミルは全力でテメレイアの身体を突き飛ばす。


「……ミル? ……――――ッ!?」


 唐突なことに、どうしたのかと振り向いたテメレイアは、目の前の光景に絶句した。


「ぶ、無事か、レイア……!!」

「……――!? ミル!? ミル!! どうして、どうして龍殺しが!?」


 ミルの身体に深々と突き刺さる、龍殺しの腕。

 ずぼっと音を立てて引き抜くと、ミルの身体からドバドバと血が流れ出す。


「ミル!!」


 ドタリと床に突っ伏したミル。

 それを見て、テメレイアの顔は蒼白になっている。


「……ゆ、許さない!! 許さないよおおおおおおおおおおお!!」


 ジャラリと握りしめた最後のガラス玉三つ。

 手が食いちぎられることも覚悟して、拳ごとガラス玉を龍殺しの口の中に突っ込んだ。


「死んで詫びろ!!」


 すぐさま手を引っ込めて、神の詩を詠唱。

 途端に爆発が起き、龍殺しは頭部が吹き飛び崩れ落ちた。


「ミル! しっかりして、ミル! フレスちゃん、ミルを助けてあげて!!」

「う、うん……!! はぁ、はぁ……」 


 息も絶え絶えな状態だが、フレスは癒しの魔力をミルに送る。

 しかし龍殺しの影響で、その力すらも上手く扱うことが出来なかった。


「はぁ、はぁ、ぜ、絶対に、ボクが何とか……!!」

「フレス、も、もう良いのじゃ……!!」


 フレスの手をぐっと握るミル。


「……フレスとて今は満足に力を出せぬはず。限界じゃろう。その力はもっと大切な時に使うのじゃ……」

「今がその大切な時だよ! そうだよね、レイアさん!」

「そうだ! ミル、死なないでよ!!」

「馬鹿なレイアじゃ。わらわ達龍は死にはせん。まあしばらくは動けなくなるじゃろうがな……。フレス、わらわのことはもうよい。それより魔力が回復したらレイアのことを守ってはくれまいか。わらわはしばらく動けんからの……。頼んでよいか……?」

「……うん、うん! ボクが絶対に守るよ! レイアさんも、他のみんなも……!!」

「それでこそフレスじゃ……。レイア、ごめんの。少しだけ眠らせてもらう……」


 それだけを言い残して、ミルは目を閉じた。

 龍は死なない。

 それがたとえ人間であれば即死クラスの怪我であっても。

 龍は無限の生命力を持っている。逆に死ぬことが出来ないと言えるほどに。

 だが、これほどまでの致命傷を受けた場合、死なないにしても回復にはかなりの時間が掛かる。

 とはいえ人間からすれば驚異的なスピードではあるのだが、それでも数時間は掛かるはずだ。


 ――怪我は治る。だがダメージは抜けない。


 今ミルが受けたダメージはあまりにも深刻だ。ましてや龍殺しの攻撃からだ。

 傷が治っても、目覚めがいつになるかは判らない。

 だからこそ、テメレイアは心配なのだ。


 ――ミルが目覚める頃には、もうフェルタクスの生贄になっている可能性だってあるのだから。


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