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龍と鑑定士 ~ 絵から出てきた美少女は実はドラゴンで、鑑定士の弟子にしてくれと頼んでくるんだが ~  作者: ふっしー
最終部 最終章 滅亡都市フェルタリア編『龍と鑑定士の、旅の終わり』
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不機嫌な二人


「私ね、今少しだけ不機嫌なのよ」

「そうなのですか? 奇遇ですね。私も不機嫌なのです。そちらはどうして?」


 龍殺し(ドラゴン・キラー)を前にしたアムステリアとイレイズの二人は、そんなことを話し始めた。


「この手で可愛い後輩をぶち殺してしまったから。私って、殺しは比較的慣れているけど、それはあくまでも慣れているだけで、決して好きではないのよ。それも結構気に入っていた後輩相手だったから、尚更ね。それで貴方の方の理由は?」

「故郷の仇の一端である女を、助けてしまったからですね」

「別に助ける必要はなかったのよ? 目の前で魔獣に惨殺される様を見物していれば良かったじゃない」

「……それはそれで後味が悪そうでしてね。だからアムステリアさん、貴方に強要されて彼女を助けた、ということにして、自分を納得させることにします」

「私を出汁に使うってことね? 別に構わないわ。おかげでまた少し不機嫌さが増したけど」


 襲い来る龍殺しの爪をジャンプで回避し――そして。


「――こいつら全員ぶち殺して憂さ晴らしすることにするわ!!」

「――そのアイデア、いただきです」


 アムステリアのかかとが龍殺しの脳天に炸裂し、イレイズの硬質化した拳が龍殺しの顔面に叩き込まれた。

 呑気な会話を続けながらも、二人は一体一体着実に龍殺しを屠っていく。


「残りは三体。全部私に任せてもらってもいい?」

「ダメです。龍殺しという存在は、私にとって許せない存在なんです。以前、私の大切なサラーをボコボコにしてくれたわけですから。こいつらにはこの拳をブチかまさないと気が済まないのですよ」

「なら一緒にボコボコにしましょうか。構わないでしょ?」

「ええ。一緒なら全然」


 一番近くにいた龍殺しの目の前にアムステリアが一瞬で移動すると、その顎を蹴り上げた。

 それにより空いた腹に数十発もの蹴りを浴びせてやる。

 顔を浮かせた龍殺しが見えたのは、高速で突っ込んでくるダイヤモンドの拳。

 イレイズが全力のパンチで、龍殺しの頭は吹き飛ばされた。

 一瞬で絶命した龍殺しが、ドタリと床に崩れ落ち、黒く濁った血液をまき散らす。

 二人の背後には、そうした死体で溢れていた。

 

 残った龍殺し二体は、敵わないと悟ったのか翼を広げて天窓から逃走を試みる。

 だが、アムステリアに蹴り上げられたイレイズが飛翔する彼らに追いつき、拳を顔面に浴びせて、床に叩き落としていた。

 床で待っていたのは、目を爛々と輝かせたアムステリア。

 アムステリアが蹴りを十五発ぶち込んだところで龍殺しは絶命した。


「こいつで最後」


 かかと落としで最後の龍殺しの頭を潰す。

 その瞬間、龍殺しの『龍の魔力を奪う能力』が消え去り、ニーズヘッグは元の状態に戻ったのだった。


「す、すげー」


 二人のキャストで繰り広げられた龍殺し惨殺ショー。

 なまじどちらが悪魔か判らぬ表情と返り血を浴びた二人が、此方へ戻ってきた。


「終わったわよ。ちょっと厄介だったわね」

「ですがさっきの連中に比べればゴミみたいなもんでしたけどね」


 イレイズは硬質化した腕についた黒い血を、ハンカチで拭った。


「ウェイルは書斎にある隠し扉の奥に向かったのよね。困ったわね、私達は書斎の場所も隠し扉の場所も知らないもの」


 書斎の隠し扉の場所を知っているのは、シュラディンとそしてフレスだけ。

 この場にはそのどちらもいない。

 つまり隠し扉を知っている者は誰一人いない。


「どうしよう、早くウェイルにぃを助けにいかないといけないのに」

「多分サラーもそこにいるのですよね……! 何とかして場所を突き止めないと」

「私が全て蹴り壊してもいいのだけど……。そんなに簡単にはいかないでしょうしね」

「私の察覚や魅覚が届く範囲にも限界がありますからね……」


 皆がどうしたものかと考えを巡らせる中、ニーズヘッグがぽつりと呟いた。


「知ってるの。隠し扉の場所」

「ニーちゃん、知ってるの!?」

「……うん。二十年前に、そこに行ったから」


 ニーズヘッグは全てを知っている。

 二十年前、このフェルタリアで何があったのか、その全てを。

 当然、あの部屋の存在だって知っているし、実際に入った。


「ついてくるの。案内するの」

「ニーちゃん……?」


 ニーズヘッグの虚ろな目の奥に、確固たる決意がある様にフロリアは見えた。


「急ぐの。早くフレス達を助けにいくの!!」


 ニーズヘッグが走り始める。

 それを見て、皆顔を一度見合わせ頷き合うと、彼女の後を追っていった。


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