表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍と鑑定士 ~ 絵から出てきた美少女は実はドラゴンで、鑑定士の弟子にしてくれと頼んでくるんだが ~  作者: ふっしー
最終部 最終章 滅亡都市フェルタリア編『龍と鑑定士の、旅の終わり』
724/763

アムステリアとアノエ、再び

 ――溶けゆくルシャブテの身体を、アノエの剣が貫いた、その少し前。 


 イレイズとルシャブテが死闘を繰り広げていたその一方で、アムステリアとアノエの死闘も、これから始まろうとしていた。


「時計塔での借りは、返させてもらう!!」

「あのね、借りを返すべきは恨みではなく恩ではなくって? 命を助けてあげたこと、忘れたの?」

「…………殺す!!」


 軽口並べるアムステリアの態度に苛立つアノエは、巨大な剣を惜しみなく振り回していた。

 その一振りは凄まじく高速で、油断して少しでも当たったならば、吹き飛ばされかねないほどの威力。

 以前戦った時とは比べ物にならないほど、アノエの魔力は充実していた。


「『死神半月(ルナ・スペクター)』! たらふく魔力を食べさせてあげたんだから、きっちり奴を殺してもらう!!」


 アノエの持つ剣――神器『死神半月(ルナ・スペクター)』。

 所有者の魔力、または切り裂いた敵の魔力を喰らい尽くすことで、所有者にだけ重さを軽減させ、威力を増強させる大剣だ。

 刀身が輝くほど、隆々とした魔力が剣に帯びている。


「……これは相当食べさせたわね……!!」


 二、三人の命では、ここまではっきりとした威圧感のある光は放てないはず。

 少なくとも十数人、そしてアノエ自信の寿命を相当な年数削っているはずだ。

 アノエは本気で、己が全てを賭けてアムステリアを殺そうとしているのだろう。


「……なら、こっちもちょっと無理しないといけないわね……!! また倒れるのも困るんだけど……!」


 心臓部分にある神器『無限龍心(ドラゴン・ハート)』に魔力を集中させる。

 その効果は即座に身体に現れた。

 身体が羽毛のように軽く、しなやかになっていく感覚。


「死ねええ!!」

「死にたくても死ねないのよ、私は」


 高速の大振りを寸前で避け、隙を見てはアノエの身体に蹴りを打ち込む。


「あら、ガードはしないの?」

「心臓の所だけガードすればいい。他の攻撃は全部心臓をを狙うための布石だから。以前貴方から教えてもらったこと!!」


 心臓に蹴りを撃ち込まれたならば、身体はたちまち動かなくなる。

 時計塔で身を持って体験したアノエは、身体の中心に来る攻撃だけにカードを集中させていた。

 その他の部分への攻撃は、全て心臓への攻撃の為のジャブだと知っているから。


「賢くなったわね。なら、こいつはどうかしら!!」


 アムステリアは近くに置いてあった大きめの瓦礫を拾い、それをアノエの心臓目がけてぶん投げた。


「…………ふん!」


 剣の柄でそれをガード。

 だが、アムステリアの狙いはそこにある。


「背中がガラ空きよ!!」

「……えっ……、……あがっ!?」


 アムステリアの蹴りが、背中から心臓目がけて直撃した。

 アノエの纏う鋼の甲冑に巨大なくぼみができ、そのくぼみはアノエの身体を圧迫する。


「ぐほ、げほ……!!」

「剣の柄でガードって、あまりいい防ぎ方じゃないわよ。だってその剣、ちょっと大きすぎるんですもの」


 ガードの為に大剣の刀身を盾の様に構えるということは、当然その部分は死角となる。

 ましてやアノエの剣は巨大だ。見えなくなるところが大きすぎる。

 アムステリアはその死角を利用して高速でアノエの背後に回ると、強力な蹴りをお見舞いしてやったのだった。


「甲冑がなければ死んでたわね」

「……くっ……! またやられた……!! くそ、くそ!! はぁ、はぁ……!」


 剣を床に刺して杖代わりにし、アノエは猫背となって息を整える。


「この隙を、私が見逃すはずないでしょ?」


 今度は地面に刺した剣が死角となって、再び背中に蹴りを浴びせてやる。

 だが、今の行動はある意味アノエの罠であった。

 間髪入れず剣を握り直し、振り回すことで反撃してきたのだ。

 とはいえ、それすらもアムステリアの活性化した動体視力には及ばず、簡単に避けられ、追撃の蹴りを入れられた。


「……グッ……!! くそ……!!」


 胃液が込み上げてきて、耐えきれずに吐きだす。

 その様子を見下してくるアムステリアの顔が、腹立たしくて堪らない。


「アノエちゃんだったかしら? もう止めなさい。折角あの時助けてあげたんだもの。別に死に急がなくてもいいじゃない?」

「だ、黙れ……!! 別に死に急いでいるつもりはない……!! 私がお前を殺せばいいだけなんだから!!」

「それが無理だって言っているのよ。このまま続けると貴方、死ぬわよ? 私だって、あまりにもしつこいと容赦しないわ」

「黙れと言っている!! 私はお前を殺す! 別に死んだっていい! お前を道連れに出来るのなら!! リーダーの為なら、私は何だって出来る!!」

「リーダーって、メルフィナの事よね。……一体何があったの?」

「教える義理はない!!」

「でしょうねぇ。実は私もあまり興味もないの」

「死ねぇえええええええ!!」

「かかってきなさい。判るまでやってあげるわ!!」

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 アノエは咆哮したのと同時に剣を握りしめ、アムステリアへ向かって振り下ろしていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ