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龍と鑑定士 ~ 絵から出てきた美少女は実はドラゴンで、鑑定士の弟子にしてくれと頼んでくるんだが ~  作者: ふっしー
最終部 最終章 滅亡都市フェルタリア編『龍と鑑定士の、旅の終わり』
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場違い

「……そういえば初めてかもな。お前の拳を食らったのは……!!」


 イレイズの拳によって地面に叩きつけられたルシャブテは、ムクリと起き上がって、しみじみと感想を述べながら口元の血を拭った。


「余裕ですね。そんな感想をべらべらと述べるだなんて。もしかして私をバカにしていますか?」


 ルシャブテの傍に降り立ったイレイズは、追撃とばかりに拳を振り上げる。


「俺はお前の事を侮ったことなど一度もない。イレイズ、一つ忠告だ。その拳を振り下ろす時は、もっと注意した方がいい。お仲間は大切にな」

「顔に似合わないこと言わないでください。背中がムズムズしてきますから!!」


 またも転移して逃げるつもりなのか、はたまた訳の分からないことを言って混乱を誘う気なのか。

 どちらにしたって、拳を顔面にぶち込むことが正答に違いない。

 時空の歪みが消え去ろうとする前に、イレイズは拳を振り下ろした。


 ――だが次の瞬間、その忠告の意味を理解する。


「……――なっ!?」

「――え、ええ!? どうして!?」

「……くっ!!」


 ドゴンという破砕音。ダイヤの拳が床に突き刺さる。


「あ、危なかったです……ッ!!」

「な、なんでこんなことにぃ!?」


 ダイヤの拳が突き刺さっている場所から、ほんの数センチほどずれたところ。

 そこには本来ルシャブテの顔があったはずだが、どうしてかギルパーニャの顔があったのだった。

 時空が歪んだと思った瞬間、気づいたらその場所にギルパーニャが現れた。

 反応してすぐさま拳の軌道をずらしたおかげで、ギルパーニャの可愛らしい顔を無事であった。

 ルシャブテだって消えたわけじゃない。

 奴は今もギルパーニャの隣に倒れている。


「自分以外の者も転移させることができる……!?」

「そういうこった」


 いつまでも寝てはいられないと、再び転移を行ったルシャブテ。

 今度は瓦礫と化した階段へ転移すると、休憩とばかりに腰を掛けた。


「だから言っただろ? 仲間は大切にってな」

「この子を盾にするつもりですか……!! なんて卑怯な……!!」

「卑怯? は、馬鹿だなお前。俺は神器を有効活用しているだけだ。それによ、場違いだとは思わないか? お前」

「わ、私?」

「ああ、お前だよ」


 突如指差され、戸惑うギルパーニャ。恐怖に少し声が震えていた。


「お前みたいなチンチクリンの雑魚が、この場にいるというのがおかしい話だ。自分でもそう思ってんだろ?」

「………………!」


 確かに、ルシャブテの言うとおり、ギルパーニャはこの場で一番弱い。

 特別な能力を持つわけでも、強靭な肉体を持っているわけでもない。

 ギルパーニャがここにいる理由。それは単に自分のワガママだ。

 師匠や兄弟子に置いていかれたくない、一人になりたくないという、ただの願望。

 ウェイルやフレス、他の皆や(異端児)でさえ、ここへは何か大きな目的を持ってやって来ているというのに、自分は本当に小さすぎるワガママでここにいる。


「イレイズ、お前も大変だよなぁ。赤い龍の面倒だけでなく、あの糞鑑定士からそんなゴミの面倒まで押し付けられてよ!」

「……ルシャブテ。ウェイルさん達や、ましてやサラーを侮辱するような言葉は、絶対に許しませんよ……!!」

「馬鹿か、最初から許す許さねぇの問題じゃないだろう!? 殺す殺されるの問題だろうがよ!!」


 ルシャブテの背後が歪む。

 そしてその転移先は――ギルパーニャの背後だった。


「私を狙って……!?」


 後ろを振り向いた時には、すでにルシャブテは現れていた。


「こうしたらイレイズよ。お前も肩の荷が下りるってもんだろ?」


 十数本の爪が、避ける隙間も無いほど一斉に襲い掛かってくる。


「死ね、ゴミクズ!!」

「ギルパーニャさん!! 逃げてください!!」

「こいつは逃げることすら無理だろうよ!! 死ね!!」


 イレイズも間に合わない位置で、ギルパーニャの身体を神器の爪が襲い掛かった。


「――キャアッ!!」


 ――吹きだす鮮血に、衝撃に吹き飛ぶ身体。


 ギルパーニャの身体は空しく床に叩きつけられ、そして彼女の身体はゆっくりと動かなくなった。


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