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龍と鑑定士 ~ 絵から出てきた美少女は実はドラゴンで、鑑定士の弟子にしてくれと頼んでくるんだが ~  作者: ふっしー
最終部 最終章 滅亡都市フェルタリア編『龍と鑑定士の、旅の終わり』
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決着

「君はもう指輪を使えない。さあ、投降してくれ」

「そうかな? 確かに指輪はもう駄目みたいだ。だが俺にはまだこいつがある」


 スッと背中から抜いたのは、ひびの入った『相思相愛剣(ペア・ブレイド)』。


「魔力を封じられた以上、こいつはただの壊れかけの双剣だが、お前さんの首元を掻っ切る程度ならば問題なく使えるだろうさ」

「まだやる気!? もう勝負はついた!」


 じゃらりと、ポケットからガラス玉を握りしめる。

 

「勝負はついた? いいや、まだだ。終わってないさ。俺は今回本気だと言っただろう? 俺が死ぬか、お前らが死ぬか、完全に決着がつくまで戦い続けるさ。何せ本気なんだからな」


 そう言うが早いか、ダンケルクは一気にテメレイアへと詰め寄った。

 魔力自体は封じられていても、ダンケルクの戦闘能力は元々高い。

 如何にテメレイアが天才で、三種の神器の使い手であろうと、魔力を用いない通常の戦闘力で言えば、ダンケルクの速さと力強さには手も足も出ない。


「イドゥから、お前さんは利用価値が高いから殺してはならんと念押しされたんだがな。ま、多少怒鳴られちまうかも知れんが、殺しちまってもいいだろう。要は『アテナ』のをコントロールさえ出来ればいいわけだ。その本だけ奪えばいい」

「…………!?」


 『相思相愛剣』の切っ先が、テメレイアに迫る。

 ガラス玉を構えていたのに、あまりにもダンケルクの動きが素早すぎて、投げることすら敵わない。

 さらにこの至近距離で爆発を起こせば、テメレイア自身もただでは済まない。


「お嬢さん、悪いが死んでくれ。愛するウェイルも、すぐに同じ場所へ送ってやる」

「ひっ……」


 圧倒的な殺意に当てられ、身の竦んだテメレイアに、ダンケルクの剣を避ける余裕などない。


「ウェイル……!! 助けて……!!」


 死にゆく間際、とっさに漏れた愛しい人の名前。


「――もちろんだ! レイア!!」


「……ウェイル……!?」


 突然テメレイアの視界に氷の剣が入ったかと思うと、目の前で敵の剣は動きを止めた。


「ウェイルか、もう起きちまったか。お早い目覚めだ! 女をギリギリで助けるなんて、ヒーローみたいだな」

「ウェイル!!」


 テメレイアを庇うため、ウェイルは二人の間に身体を滑り込ませて、ダンケルクの剣を受け止めていた。


「待たせたな、レイア。後は任せてくれ!」

「後は任せろ? そのセリフは違うな。そうだな、先に逝ってる。こう修正すべきだ」

「そうか。なら言い換えよう! 先に逝っててくれ! ダンケルク!!」


 ウェイルは受け止めていた双剣を、全力で薙ぎ払った。


「うぐ……!!」


 のけぞったダンケルクに、ウェイルは氷の剣を大きく振りかぶる。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」

「熱いねぇ、ウェイル!! 剣は氷で出来ている癖にな! こっちだって滾っちまうぜ!! こい、ウェイル!! 最後の勝負だ!!」

「ダンケルクッッ!!」


 ウェイルの『氷龍王の牙(ベルグファング)』と、ダンケルクの『相思相愛剣(ペア・ブレイド)』が激突。


 ――そして決着は一瞬で着いた。


「……卑怯だぞ? 最初は一対一でやるって話だったのにな……!!」

「申し訳ないね。俺もレイアも、鑑定士としてはまだまだ半人前なんだ。二人でようやく一人前というわけさ」

「……そうか? 俺から言わせれば、お前は随分前から立派に一人前だったよ……。一人前の、最高の、後輩だった……!!」


 ――ウェイルの氷の剣が、ダンケルクを肩から腹にかけて切り裂いていた。


「……いい剣だな、その氷の剣は……!! こんなになっても、まだこれだけ話せるんだから……!!」


 氷の剣は切り裂いた傷を凍りつかせ、出血を食い止める。

 だが、それだって時間の問題だ。 

 溢れ出る血を止めることは出来ないし、そもそもこれほどの重傷を負って無事で済むはずもない。


「……こいつ(ペア・ブレイド)も限界だったしな……」


 ダンケルクは、吐血しながら膝をつく。

 傍らに落とした刀身の砕けた愛用の神器を見ながら、力を抜いて重力に従っていった。


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