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龍と鑑定士 ~ 絵から出てきた美少女は実はドラゴンで、鑑定士の弟子にしてくれと頼んでくるんだが ~  作者: ふっしー
最終部 最終章 滅亡都市フェルタリア編『龍と鑑定士の、旅の終わり』
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最終章のプロローグ

 芸術大陸――アレクアテナ。

 魔法と芸術によって豊かな文化と経済が築かれた、美しい大陸である。

 アレクアテナ大陸の住人達は、誰もが芸術や美術に興味関心を持ち、それが日常の一部になっている。


 ――二十年前。


 アレクアテナ大陸を代表する、とある高名な芸術都市が一つ、歴史の闇に消え去った。


 その名も『神器都市フェルタリア』。


 フレスの思い出の舞台であり、そしてウェイルの故郷でもある。


 かのフェルタリアの地で、今まさに決戦が始まろうとしていた。


 ――フェルタリア王家の、光と影。


 その戦いは、アレクアテナ大陸全土の命運を賭けた、壮絶なる戦いとなっていく。



 ―― 龍と鑑定士  最終部 最終章 ――



 ――ウェイルとフレスの旅は、ついに最後を迎える時が来る。





 ――●○●○●○――





「――絶景だな」

「――絶景だねぇ」


 ――汽車の窓から映し出される雄々しき山々、それを映しだす輝く湖、麦を収穫する人々。


 まるで次々と変化する魔法の絵画を見ているような、そんな錯覚すら覚えてしまいそうな景色に、鑑定士であるウェイルとその弟子フレスは、感嘆の息を漏らした。


「ウェイルってば、呑気だねぇ」

「今くらいはのんびりしていてもいいじゃないか。おそらくこれから先は戦いが続くのだろうからな」


 魔法の絵画は、突然ブラックアウトする。

 どうやらトンネルに入ったようだ。


「しかしナムルの奴、流石だな」

「それを言ったらサグマールさんもだけどね。宣言通り許可を取ってきたんだから」

「それに関してはステイリィに感謝だな。何せあいつに俺の名前を出した瞬間、独断で許可を出したらしいからな」


 ウェイル達の目的地は、滅亡都市フェルタリア。 

 ウェイルの故郷であり、仇敵メルフィナとの因縁の地でもある。


 メルフィナ率いる犯罪組織『異端児(イレギュラー)』は、ついに八つのカラーコインと三種の神器『心破剣ケルキューレ』を手に入れ、計画を最終段階へと移行させた。

 彼らの目的は、最後の三種の神器『異次元反響砲フェルタクス』を起動させること。

 その神器は、ウェイルの故郷である『神器都市フェルタリア』を滅亡させた、邪悪なる神器。

 そんな危険すぎる代物を彼らは目覚めさせ、世界を混沌に陥れようとしているのだ。

 ウェイル達は『異端児』の野望を阻止し、攫われたイレイズを救うべく、今こうして汽車に乗りフェルタリアへと向かっている。


「ねぇ、ウェイル。ちょっとした好奇心で一つ訊いてもいいかな? もし気分を害するようなら先に謝っておくよ」

「なんだ? 藪から棒に」


 そんな前置きをして、テメレイアはウェイルへと訊ねた。


「どんな気分なんだい? 二十年ぶりに故郷へ戻るというのは」

「……ああ、そうだな。どんな気分をすればいいのかな……」


 師匠シュラディンと共に神器都市フェルタリアを去って、二十年が経過した。

 あの頃のウェイルはまだ幼く、記憶だって鮮明には残っていない。

 ただ最後のあの光景だけは、今でも強烈に脳裏にこびりついている。


「以前はフェルタリアのことを思い出すだけで、気分を悪くしていたよね」

「ああ」

「……ウェイル……」


 心配そうに、フレスがぎゅっと裾を掴んでくる。

 フレスには少しだけ過去を話したことがある。

 正直ウェイルにとって、あの音の消えたフェルタリアの光景は今でもトラウマだ。

 思い出すだけで吐き気すら催すこともあった。


「……今もまあ、そうだな。やっぱり良い記憶ではないから、故郷へ戻ることを嬉しくは思わない。本音を言えば、辛いし嫌だな」

「……そう」

「でも今はそうは言っていられぬ状況だし、むしろ気分は高揚しているよ。何せ故郷の仇と対峙できるのだからな」


 その名は、フェルタリアの王家の光を意味する、メルフィナ。

 彼は真の王位継承者でありながら、全てを裏切りフェルタリアを滅亡へと導いた。


 メルフィナが光であれば、ウェイルは影であった。

 王家の血を継ぐ者の影武者。ただそれだけの存在であった。

 だが、如何に影であろうと、ウェイルはフェルタリアを愛する一市民であることに変わりはなかった。

 愛するフェルタリアを滅亡させたメルフィナのことだけは、何があっても許すことは出来ない。

 メルフィナがまた同じ過ちを繰り返そうというのであれば、今度は必ず阻止して見せる。


 ――フェルタリア王の希望を背負う者として、メルフィナを必ず止めると、ウェイルは誓っていた。


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