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龍と鑑定士 ~ 絵から出てきた美少女は実はドラゴンで、鑑定士の弟子にしてくれと頼んでくるんだが ~  作者: ふっしー
最終部 第十四章 司法都市ファランクシア編『ステイリィ英雄譚』
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脅迫状

 ――二十分後。


 このプロ鑑定士協会本部『第十二会議室』に、アレクアテナ大陸きっての天才鑑定士達が集結した。

 サグマールとナムルには、テメレイアが大方の事情を伝えてくれている。

 ここではウェイル主導で、更なる詳細を二人に説明した。


「……ふぅ、よもや三種の神器絡みとは……」

「アルクエティアマインの教会戦争やラインレピアの事件といい、お前は本当に三種の神器に縁があるな。また巻き込まれたのか。狙っているとしか思えん」

「誰が狙うか。好きで巻き込まれているわけじゃない」

「しかし、まさかそのためにエリクまで解放していたとはな」


 サグマールの視線は、先程からずっとエリクの方ばかりに向いている。

 エリクの方も少し気まずいのか、視線を逸らしたままだ。


「話は理解した。それで、お前達は一体これからどうするつもりだ?」

「…………」


 サグマールは、単刀直入にウェイルに尋ねた。

 その問いに対し、ウェイルは目を閉じて少しだけ間を置いた。

 固唾を呑んで周囲が見守る中、ウェイルはゆっくり口を開く。


「――フェルタリアへ向かう。そこで『異端児』の野望を食い止める」

「フェルタクスの起動を防ぐ方法は、完璧に理解しているのか?」

「完璧とは言えない。だがシュラディンが直接的な起動方法を知っているし、俺達もそのヒントを掴んでいる。テメレイアの推測が正しければ、すでに起動を阻止する方法は判明していると言っていい」


 フェルタクスに必要なパーツは、全て出揃っている。

 ケルキューレやアテナ、カラーコインとピアノ奏者に――そして龍。

 だが、これらはまだウェイル達と『異端児』が、互いに持ち合っている状況だ。

 逆に言えばこれら全てが揃わぬ限り、完全なる起動は出来ない。

 とはいえこのまま手を打たなければ、『異端児』連中は、テメレイアやフレス達を直接奪いに来ることは明らかである。


「フェルタクスは絶対に俺達が封印する。……もう二度とあの光景は見たくないからな」


 それに中途半端な起動でも非常に危険なフェルタクスを、このまま野放しにする選択肢など、フェルタリア王の意思を引き継ぐウェイルには到底考えられない。

 今回は敵側にカラーコインがある以上、二十年前のような悲劇だけでは済まないだろう。

 下手をすればアレクアテナ大陸全土とは言わないまでも、半分は音が消え去る可能性もある。


 ウェイルの顔には、はっきりとその懸念が浮かんでおり、サグマールも頷いていた。


「実はな。先日プロ鑑定士協会にこんなものが届いたのだ。ただの悪戯だと思っていたが、今の話を聞けばこれは真実なのかも知れん」


 サグマールが机の上に置いたのは、電信ではなく封書であった。

 すでに開けられており、そこには紙が一枚だけ入っている。

 ウェイル達は、恐る恐るその紙を覗き込んだ。


 ――そこには次のように書かれていた。


『一週間後、アレクアテナ大陸は死者達の楽園になるだろう。我が()が、この()の元へ来なければ。全ての鍵を持ち、因縁にけりをつけるべく、直ちに凱旋せよ』


「……脅迫状だな。しかも完全に俺に対してのものだ」

「死者の楽園って、多分ゾンビ達が大量に出てくるってことだよね。敵が『無限地獄の風穴コキュートス・ホールゲート』を手に入れたと考えれば、それしかないよ」

「影が光の元に、か。……ますます急がないといけないな……!!」


 「一週間後」とあるが、この封書が届いたのは先日であるから、猶予は残り六日。

 それまでにウェイル達がフェルタリアに行かなければ、このアレクアテナ大陸はゾンビ達で溢れ、大混乱に陥るだろう。

 敵はそれが出来るだけの神器も魔力源(ティア)を揃えている。決してただの脅しではない。


「サグマール、すぐにフェルタリアに向かいたい。手配してくれないか」

「……今、フェルタリアは治安局の管轄内にある。いくらプロ鑑定士といえど、そう簡単に入ることは出来ん。あそこは特別管理都市に指定されているからな。許可だって早々下りんだろう。それはお前も知っているはずだ」


 以前ウェイルは、己のトラウマを克服するためにフェルタリア行きの許可を得たことがある。

 結局、精神的な抵抗感から行くことは出来なかったが、許可を得るのに随分と時間が掛かった覚えがある。


「無論、知っているさ。だが今回はその点について一切心配していないんだ。治安局には心強い仲間がいるからな」


 そう、最近最高幹部へと出世したと噂される、心強い仲間(ステイリィ)が。


「フェルタリアは二十年以上も放置された廃墟都市だ。どこがいつ崩壊するかも判らない。常に危険が伴うぞ」

「承知の上だ。三種の神器の驚異の前では、その危険すらも軽く感じているほどだ」

「確かにそうだな……」


 サグマールの口調は、決してウェイル達の行動に肯定的ではなかった。

 勿論、ウェイル達のことを嫌ってではない。

 彼は本当にウェイル達のことが心配なのだ。


「心配しないでください、サグマールさん。ウェイルの面倒は僕が見ますから」


 任せてくれと、胸を叩くテメレイア。


「そうだな。テメレイア氏がいれば、幾許か心配も和らぐというもの」

「その通りです。それにこれだけの天才鑑定士がついているんですから、どんな問題が起ころうと即解決ですよ」


 ウェイルの後ろに佇む皆も、一様に頷いた。


「判った。お前達に全て託す。頼んだぞ」

「ああ、任せてくれ」


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